それはある晴れた日のことだった。冬も明けきらぬ肌寒い風が吹き抜けるなか、私(佐藤)はポケットに手を突っ込んで伏し目がちに街を歩いていた。アーケード街は、ランチの慌ただしい時間をすぎて落ち着きを見せている。飲食店は一度暖簾をしまうようなタイミングだった。
いつものように何気なく放屁しようとしたその瞬間! 音だけして “気体” が抜けていくはずが、抜けていかない。いや、出たのは気体ではなかったようだ。まさか44歳にして、歩きながら便を出すとは、夢にも思わなかった……。しかしながら、その瞬間に私は新しい境地に到達した気がした。もしも漏らしてしまったら、最初にこの一手を打つべきだ!