そのグミは、ひときわ異彩を放っていた。異彩というか、もはや別物にすら感じられた。グミ売り場に並んでいなければグミとわからなかっただろう。仮にどこかの美術館の現代アートのゾーンに展示されて「生命の営み」とか深遠なタイトルがつけられていても全く違和感がなかった。
というのも、そのグミのパッケージには商品名や味に関する情報が一切載っておらず、その代わりに丸、三角、四角の幾何学模様が前面に描かれているという、あまりに芸術的かつシンプルすぎるデザインだったのだ。大いなる謎を内包したグミを前に、筆者の心が震えたことは言うまでもなかった。