宅配ピザが好きである。ピザという食べ物は、人に作ってもらったものを人に届けてもらい、それを心身ともにだらけきった極限堕落状態で食べるのが最も美味しい。宅配ピザはその暗く淀んだ欲望を満たす上で最善手である。

そういうわけで、日頃からドミノピザ・ピザーラ・ピザハットの3大宅配ピザには非常にお世話になっているのだが、しかしこの世にはそれら以外にも多くの宅配ピザチェーンが存在している。例えばピザダーノだ。


ピザダーノは東京・埼玉エリアにおいて10数店舗を展開しているローカル宅配チェーンである。ゆえに知名度の面では3大チェーンに劣ると言わざるを得ない。ここで初めて名前を聞いたという方もいるのではなかろうか。

かく言う筆者も、その存在を知ってはいても利用するまでには至っていなかった。しかし最近になって、このままではいけない、もっと色んなピザを自分は全く動くことなく享受したいという思いが強くなってきたので、今回初めて注文してみることにした。

ピザダーノの注文システムも、他のチェーン店と大体似ている。味を1種類・2種類・4種類の構成から選べ、サイズはSS(直径15cm)・S(20cm)・M(25cm)・L(35cm)の4パターンが用意されている。

特筆すべきは生地だろうか。タピオカ粉入りでモチモチとした食感のロイヤルクラスト、それとは反対にサクサクとしたイタリアンクラストの2つがある。今回筆者はピザダーノで1番人気だという「もち明太」味の、Sサイズ・ロイヤルクラストを注文した。ちなみに価格は1298円だった。

そう、振り返ってみれば、「もち明太」を選んだのは本当に「1番人気らしいから」というだけだった。その機械的な選択が、奇しくも結果として、筆者に大いなる衝撃をもたらした。

今、筆者はこれでもだいぶ理性を働かせて記事を書いている。もし読みやすさや収益性といったものを全く無視して書いていいと言われれば、記事の一面を「もち明太」の文字の羅列だけで埋め尽くすだろう。それくらい、「もち明太」のことばかり考えてしまうようになった。

要するに、美味しすぎた。人生で食べた「もち明太」ピザの中で、間違いなく図抜けて最高位に君臨する味だった。さらに臆せず書くなら、この「もち明太」だけで3大チェーンと戦えるのではないかと感じるほど、凶悪なまでの破壊力があった。

何がそこまで他と違うのか。正直、個人的に今まで食べた「もち明太」は、もちの食感がやや硬めだったり、明太子の風味が少し物足りなかったりと、それらの要素を完璧にピザという形に落とし込めている印象を受けるものではなかった。

だが、ピザダーノの「もち明太」は違った。何と言うか、とろけるのだ。ほどよく弾力あるピザ生地に、もちは柔らかにふんわりと溶けており、明太子の風味は香ばしくも出しゃばりすぎず、濃厚なチーズがまろやかに淑やかに、もちと明太子のつなぎ役を務める。

それらが、口の中でとろける。絶妙に渾然一体となって、しかしそのどれもが確かに存在していることを各々の旨味で訴えてきながら、噛むほどに広がり、喉を通り過ぎていく。

たまらない味わいに、心身が弛緩していく。だらだらと幸せ心地で食べながら、ふと思う。ああ、自分はようやく真の「もち明太」に出会えたのだと。

1番人気のメニューだというのにも頷ける。というより、これが1番人気でなかったらピザダーノの層の厚さに押し潰されて人格が破壊されていたところだったので危なかった。虚ろな目で「ピザダーノ」としか発話できない人間になるところだった。

とはいえ、きっと「もち明太」以外のメニューも相当なクオリティを誇っているはずなので、いずれは食べてみたい所存である。ローカルチェーンだからと侮っていたわけではないが、ここまで刺激を受ける絶品が潜んでいるとは思いもしなかった。

つくづく「もち明太」を選んでよかった。機械的な選択であっても、過去の自分を褒めてやりたい。

人に作ってもらったものを、人に届けてもらう。人に「良い」と言われたから。たまにはそんな堕落した出会いがあってもいい。やはり私は、宅配ピザが好きである。

参考リンク:ピザダーノ 公式HP
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.