今年、というよりライターになってからというもの、たびたび反省していることがある。何の話かと言えば、グルメ記事についてだ。何を隠そう、筆者は「美味しい」という言葉を安易に使いすぎなのである。

美味しいものに対して「美味しい」と書くことは罪ではない。しかしそれも回数が重なると話は別だ。ざっと数えてみたところ、筆者は今年書いた18のグルメ記事のうち、実に16もの記事において「美味しい」と感嘆していたのである。

これでは「美味しい」の信ぴょう性も何もあったものではないし、「美味しい村」出身のライターと疑われてもおかしくない。そこで今回は自戒も込めて、「美味しい」中でも特に印象に残った2022年の記事を3つほど挙げることで、「私的ベスト」に代えさせて頂こうと思う。

あなたはローカル宅配チェーン「ピザダーノ」の “もち明太” を知っているか / 初「ピザダーノ」で出会った絶品について

1つ目は、東京・埼玉エリアに展開しているローカルピザチェーン「ピザダーノ」の「もち明太」味について書いた記事だ。筆者はこの時初めてピザダーノを利用し、同店の1番人気ということで「もち明太」をチョイスしたのだが、そのクオリティが衝撃的だった。

とろけるような食感、明太子の香ばしい風味。人生で食べた「もち明太」の中でも、間違いなく頂点の味だった。食べてしばらくはこのピザのことしか考えられなくなるほど理性を侵されるし、何なら思い出すだけで脳細胞が暴れ出し、脳内で「もち明太」を求めるストが始まる。

地球最後の日にはまずピザダーノに乗り込んで全ての「もち明太」の解放を嘆願するだろうし、そのために徒党を組みたいので皆さんにもぜひ食べてみてほしい。辛抱ならないので書いてしまうと、つまり要するに、とても美味しかった。


新発売された「ウニのような豆腐」を食べてみたら、あまりにウニすぎた / しかし同時に豆腐でもあった

次に紹介するのは、食品メーカーの相模屋が、自社ブランド「ビヨンドとうふ」の新商品として発売した「うにのようなビヨンドとうふ」についての記事だ。商品名の通り、ウニのような味がする豆腐である。筆者も最初はまさかと思ったが、食べてみると本当にウニなのだ。

豆腐のようにそのまま食べても良し、ウニのようにご飯に乗せてワサビ醤油で食べても良し。いずれにせよ、豆腐ならざる深いコクとクリーミーさが、こちらを幸福の境地へと誘う。そこにジェネリック感は皆無で、ウニを模倣しつつ独自の新次元を切り拓いている。

一体どんな魔法を使っているのか。正直、2022年最大の発明はこれだと思っている。ノーベル賞モノである。どの部門に該当するかわからないので、もう総なめでいいと思う。史上初のノーベル完全制覇である。辛抱ならないので書いてしまうと、とても美味しかった。


【脱帽】ローソンストア100の新シンプル商品「さけ茶づけ」が、一周回って美味しすぎた / 永谷園との “ありえない” コラボ

最後に挙げるのは、たびたび奇抜なアイデアで世間を騒がす「ローソンストア100」の商品「さけ茶づけ」についての記事だ。「印象に残った」の意味合いが違うのではないかと言われそうだが、そうだと言えるし、そうでないとも言える。

ご覧頂ければわかる通り、鮭フレークなどの具材が乗ったご飯に、永谷園のお茶漬け海苔が添えてある。今、筆者はインターネットメディアというものに最大限に感謝している。まかり間違って画像のない文庫本などで読まれるとしたら、この衝撃は低減してしまうだろう。

しかし当然と言うべきか、何ら不思議ではないことにと言うべきか、さすがのクオリティであった。記事にも書いたが「永谷園の鮭茶漬けのややグレードアップ版」といった味わいで、文句が出ない。色々言いたいことはあっても、強大な味の力を前に飲み込まざるを得ない。

「あれこれ工夫を凝らすよりも、一見手抜きに見えようがシンプルな手法が結局は最良」という意味で、「100円ローソンの鮭茶漬け」ということわざを作ってほしい。前段落で「飲み込まざるを得ない」と書いたものの、全て吐き出してしまった気がする。とても美味しかった。


さて、以上3選についてつらつらと書いてきたが、いかがだっただろうか。いかがも何も自戒を込めた「私的ベスト」だったにもかかわらず全く反省の色の見えない結果に終わってしまった感が否めない。筆者は自分に甘いのかもしれない。

とはいえ、こんな筆者の言葉を信じて下さる方が少しでもいらっしゃるなら、その方たちのために、あるいはもっと広く信じてもらうために、来年も文章を綴っていきたいと思う。そうしていられる喜びが、何よりも一番「美味しい」。それでは皆さん、良いお年を。

執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.