トンネルにはロマンがあると私(佐藤)は考える。たかが山に開けた穴かもしれないけど、入口と出口で景色が一変することがあるからだ。かつて川端康成が「トンネルを抜けると、そこは雪国」だったと、名作『雪国』の中で記している通りに、こちらとあちらをつなぐ、いわば「異世界への道」。それがトンネルなのである。
そんなトンネルがたくさんある場所が、千葉県茂原市にある。押日(おしび)という地域には素掘りのトンネル(隧道 / ずいどう)が集中して点在する「押日素掘り隧道群」と言われるところがある。実際に行き、いくつかの隧道を通ってみたら、まるで冒険している気分。異世界に到達した感覚を味わえた。