いつも傍らには『ドラゴンクエスト』があった。1982年生まれの私(中澤)の世代は、小学校高学年でⅤが発売され、中学校でⅥ、高校でⅦ、大学の時Ⅷと、ドラクエと共に育ってきたと言っても過言ではない。離れてしまったとしても、レベルアップの音を聞くとやっぱりテンションが上がる人は多いだろう。

しかしながら、私は『ドラゴンクエストⅠ(以下、ドラクエⅠ)』をやったことがない。RPGに興味を持ち出す頃にはすでにⅢが発売されていたのである。そこで発売から35年越しにドラクエⅠを買ってみたところ、プレイする前に泣いた

・発売35年

まず、なぜ突然買おうと思い立ったかと言うと、何を隠そう2021年5月27日が『ドラゴンクエストⅠ』発売35年の節目なのである。そこでレトロゲームの販売で知られる秋葉原のゲーム店『スーパーポテト』を覗いてみたところ、箱説つきが1740円で売られていた

スーパーファミコンを買って以来、初めてファミコンソフトを買う私。想像していたよりずっと安い。別に箱説はなくても良かったが1740円なら買っとくか。と、それくらいの気持ちで購入したわけだが……

箱がすでに懐かしい。そうそう、ファミコンのカセットってこういう箱だったよな。厚紙の質感と片手に収まるサイズ感に、子供の頃見上げたおもちゃ屋のガラスケースがフラッシュバックする。ガラスの中は夢の国だった。

・ああ!

と、いけないいけない目的が変わるところであった。買ったのはあくまでプレイするためである。そこで箱から中身を出してみると……ああ


このプラケース懐かしすぎだろ。

カセットがぴったりハマってるフィット感が好きだった。子供のころは、物の扱いが雑だったため、すぐ箱をボコボコにしてしまっていた私。プラケースからカセットを「スフォッ!」と外す度に新品を実感したものである。

・これは……!!

おっと、また脱線してしまった。買ったのはあくまでプレイするためである。そこでプラケースからカセットを抜き出す。スフォッ! 中古ではあるが、前述のフィット感は健在である。ん? こ、これは……!!


説明書こんなんだったなあ……!

今ほどグラフィックが優れていなかった時代。我々はRPGの世界感を箱の絵と説明書のストーリーなどで補完していた。この説明書で言うと、ベギラマの説明とかワクワクするじゃないか。

「(中略)この呪文をとなえた者は、自分の頭上に雷を呼びよせ、敵を攻撃するといわれています。この呪文をとなえた瞬間、あなたの指先から刃のような雷がほとばしり、おそらく、ほとんどの怪物は、もはや生きていないでしょう」(『ドラゴンクエストⅠ』説明書より引用)

──これだけでただ画面が光るだけのエフェクトが電撃の刃に見えたものだ。「早くベギラマ使いたいなあ」と思いながらレベルを上げた日々が昨日のことのように思い出される。

・泣いた

おっと、また脱線してしまった。買ったのはあくまでプレイするため……って、ん? 説明書の下に何か入ってるぞ? こ、これは……!!


アンケートハガキ……!


しかも……


オリジナルグッズのプレゼントあり……!!

そう言えばこんなのも入っていた気が……いや、ここまでくると全てのファミコンカセットに入っていたかは記憶がおぼろげだが。

それにしても、宛先が『(株)エニックス ファミリーコンピュータゲーム企画室「ドラゴンクエスト」係行』というのが趣深い。今となってはスクウェア・エニックスだし場所も変わっている。一体どんなグッズが当たったのだろうか? 熱い時代を想い少し泣いた。ちなみに……


ドラクエⅠは今プレイしても普通に面白かったぞ。

・名作とは

思い出って思いもよらないところに詰まっているものだ。そして、普段忘れているものだからこそ、見つけた時に光り輝いて見えるのかもしれない。私がゲームをプレイする前に感極まってしまったように。

今回『ドラゴンクエストⅠ』を購入したことにより、レトロゲームの名作とはそういうタイムカプセルであることを知った。何よりも輝く自分だけの宝がそこにある。ありがとう『ドラゴンクエスト』。おめでとう35周年。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.