楽曲制作AIの「SUNO」は2026年9月10日のバージョンアップで、今までにない楽曲生成の方法を実装した。そのひとつが、画像から音楽を生成するというものだ。同様にビデオからも音楽を作ることができるようになっている。

この機能の実装により、これまで以上にさまざまな方法で曲を作れるようになった。音楽知識がなく、また歌詞が書けないという人でも、画像やビデオがあれば誰でも曲を生成することができてしまうのだ。

以前の記事で画像を試したので、今回はビデオで曲を作ってみた。そうしたところ、ある理由で生成AIの楽曲はまだまだだなと気づかされた。

・ビデオから曲を生成

今回のバージョンアップ(v6)の大きなポイントのひとつが、音楽業界のパートナーと共同で開発されたことだ。これまでAIと音楽をめぐっては権利面が問題視されてきたが、ワーナー・ミュージック・グループやBMG、Believeなどと開発を進め、セーフガードも強化している。これまでのモデル(v5.5以前)は終了し、現在はv6世代へ移行している。

それだけでなく、新しい楽曲制作体験の提供も開始した。それが詳しい指示がなくても曲を生成できるシンプルモードの進化だ。先に挙げたように画像やビデオから曲を生成できるのである。


やり方はカンタンだ「CREATE(クリエイト)」のページで入力欄端の「+」を押して、曲にしたい動画(video)をアップロードするだけ


スマホアプリでも同じく、画面下の音符マーク(クリエイト)を押して生成機能を呼び出し、同じく「+」を押して動画(ビデオ)をアップするだけである。


今回私(佐藤)はこの機能を使って、過去に制作した動画をSUNOに読み込ませて、どんな曲を作るかを確認したかった。その動画というのは、2016年に当時外部ライターだったK.ナガハシが作ってくれた『随園のテーマ』である。

これは当編集部メンバーが長年通い詰める、新宿御苑の中華料理の老舗「随園別館」に感謝と敬意を込めて、勝手にお店のCMとして作ったものだ。


平日昼には毎日、日替わり弁当を販売している。2016年当時の販売価格は税込500円。安くてボリュームのある弁当を、たった500円で販売している。


驚くべきは、10年経った現在も500円のままだ。この10年、飲食業界はまさに激動。コロナがあり、昨年の令和米騒動があり、物価は上がり続けている。近頃は毎月のようにスーパー・コンビニに並ぶ商品が値上がりし続けているのは周知の事実。

にもかかわらず! 500円を貫いている。あの頃にも増して、我々は敬意を表し、もう足を向けては絶対に眠れない。お店の前を通る時には一礼しても良いくらいである。


そんな随園を称えて、勝手に作ったのが10年前のCMソングである。図らずもその記事を公開したのが2016年9月7日なので、ちょうど10年前に当たる。いっそのことこの日を記念日にして国民の祝日にしたいくらいだ。


ふざけているように見えるかもしれないけど、制作は真剣に行い、楽曲制作全体をとり仕切ったナガハシの指示の元、私・中澤、そして現在は当編集部を離れた砂子間りょうも、ガチンコでレコーディングしたのである。

まさかあれから10年を経て、楽曲制作をAIに任せる未来が来ようとは、想像もできなかったなあ。そして再びこの映像を目にすることになるとは。みんな若い……


・名曲「随園のテーマ」をAIでリメイク

そんなわけで、SUNOにビデオを読み込ませて、以下のような指示を出した。


「「随園(ずいえん)」という中華料理屋のローカルCM風のテーマソングを生成。「ドリフ大爆笑のテーマ」のような楽曲」


今までのバージョンでも日本語での指示は伝わっていたのだが、今回のバージョンアップでより自然な言葉で伝わるようになったとのこと。はたしてSUNOは要求を理解して、ふさわしい曲を作ってくれるのか? 都合3回の生成から3曲を選び、原曲との比較をしてみた。


まずバージョン1の「随園へいらっしゃいませ」(タイトルはAIが勝手につける)は、早いテンポのコミカルなブラスサウンドで、オリジナルには登場しない「焼き餃子」や「酢豚」などの中華料理の定番メニューの名前が登場する。

バージョン2「随園!」はビッグバンドのスウィングジャズで、バージョン1よりも一層ポップな印象。ただ、なぜかこの曲だけ短く、他の2つ(原曲38秒、他の2つは38秒と40秒)に対して、30秒と極端に短かった。曲の長さも指定すれば、ちょうど良くなるのかも。

そしてバージョン3「随園へいらっしゃい」は三味線を思わせる弦楽器の入ったマーチング調。これだけ女性ボーカルで、驚いたことに元動画に含まれる要素を歌詞に折り込んできた。オリジナルにはない「500円(ワンコイン)」や「日替わり弁当」といった言葉が入っている。

総じて、曲の完成度は高いものの、「随園(ずいえん)」とフリガナを振ったにも関わらず、「さいえん」と歌ってしまっていた。平易な漢字であれば読み間違うことはないと思うのだが。


・まだまだAI臭さは抜けない、それでも……

それなりに形にはなったが、しっかり構成してレコーディングしたオリジナルとは、埋められない溝があると感じた。聞いたら1発でAIとわかる。音の質感というか、聞こえ方というか、いかにも作られた印象は拭えない。レコーディングの音に感じる温もりが、AI生成の音にはない。

それはまるで、AIで画像を作るとどれだけキレイに見えていても「あ、これAIだ」と気づく感覚に似ている。人の手で作られたものとは思えない、ある意味ウソ臭さが漂う。

いずれはそれもなくなっていくだろうか? どれだけAIが進化したとしても、物理的に奏でられた音には敵わない気もするが……


それでも私はこれからもAIで楽曲制作を続ける。なぜなら、1(いち)から楽器やDTMソフトをマスターするよりも早いからだ。今から自由に作曲できるほどの腕前や知識を習得するには、時間がなさすぎる。また、ビッグバンド編成の曲を録ろうにも、メンバーを集められるとは思えないし、それを手配するだけの資本もない。

それならAIに頼っている方が効率的だし、出来上がったものを聞きながら、また新しい発想を閃いたり、挑戦する意欲が湧くのもまた醍醐味なのである。

人間の作り出す曲や音には、まだまだAIは勝てはしないだろう。それでも創造力を刺激してくれるAIを、これからも使って行こう。


参考リンク:SUNO
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
Screenshot:SUNO

▼随園のテーマ、ドリフ大爆笑風バージョンもあるぞ!