このゴールデンウイーク期間中、皆さんはどう過ごされただろうか? 私(佐藤)は休みに入る直前に楽曲制作AI「SUNO」をイジり始めたために、連休中は曲イジり没頭。ただでさえ出かけることがあまりないのに、SUNOのおかげでこもり切りになってしまった。

だが、そのおかげで過去の楽曲を上手く作り直すことに成功。大変有意義な休みを過ごすことができた

クセのある1曲を作り直すのに大変苦労したのだが、おかげでSUNOの扱い方のコツのようなものがわかった。同じように昔の曲を蘇らせたいとお考えの方のために、そのプロセスをできるだけ難しい言葉抜きでわかりやすくお伝えしよう。

・曲解を許さない曲は問題ない

まず前提として、私はすでに何曲かSUNOに作り直させることをやっている。大抵の曲は問題なくスムーズに作り直すことができた。しかし今回題材にしている「セメント工場」という曲だけは、どうしても原曲の進行を踏まえてくれず、曲の進行が変わってしまう。

曲調やコード進行が多少変わるのは仕方がないと思っていたが、1番気になったのは8小節の進行を16小節に伸ばしてしまう点だ。何度も何度もやり直しても自分の思うタイミングで歌詞を読まない。これを何とかしたくて悪戦苦闘した。

それで気づいたのは、曲解を許さない曲はスムーズに仕上げてくれる。曲解を許さないというのは、シンプルなメロディーとコード進行で構成された曲。たとえば、当編集部のYoshioの作った「カラオケねこちゃん」という曲がある。

Yoshioが娘さんたちに向けて作った曲で、誰が聞いても1度で覚えられる素朴な歌なのだが、これをSUNOにかけると、何度やっても勝手にアレンジせず上手く作ってくれる。曲の基礎がしっかりしているからAIも誤解しない、とても優れた曲なのだ。

つまり裏を返すと、私の「セメント工場」は曲解を許す未熟な曲とも言える。だからSUNOは勝手なアレンジをするのだ。


・SUNO STUDIOで進行を固定

そこで私はいろいろ考えて、SUNOに用意されている最上位プランの「プレミアム」に入った。このプランは「SUNO STUDIO」という機能が使える。これは出来上がった曲をバラバラにして再構成できる「DAW(デジタルオーディオワークステーション)」だ。

STUDO機能を使えば楽器ごとに演奏をイチから生成できる。これで1個ずつ演奏を足して曲を順当に導くことにした。

その下準備として、SUNOに備えられたもう1つのすごい機能を使っている。SUNOは読み込ませた曲を「ステム分離」できるのだ。ステム分離とは曲に用いられているボーカル・ドラム・ベース・ギターなどをバラバラに抽出する機能だ。これで私は、自作曲のパートを1つずつAIの演奏に書き換えさせた

それでも思うようなアレンジにならなかったが、ここまではまだ準備段階。料理でいえば、材料を切って下ゆでしたような状態。ここからが本番である。


・土台の曲を再カバー

STUDIOで粗くできあがった土台の曲を、可能な限りその曲の進行に忠実になるように設定して、今一度、曲をカバーする機能の「COVERS」にかけるのである。プロセスは以下のような図になる。


原曲 → SUNO STUDIOで1パートずつ作り替える → できあがった土台曲をCOVERSにかける

こうしてようやく、私のオリジナルに近い新曲が完成したのだ。ところどころ歌いまわしやコード進行が変わってしまったけど、まあこれまでの勝手アレンジに比べれば許容範囲。よくできたといっていいだろう。


・AI楽曲制作の将来

なぜ私がこの曲にこだわったのかというと、若い頃に買える限りの機材で、できる限りの時間と手間をかけて作った曲をちゃんとよみがえらせたかった。それがまず1点。

もう1点、あの時に曲を聞かせた先輩の評価がイマイチだった。あの時できることをやって下された評価は正当なものだったと思う。でも、自分の演奏や歌唱力が足りなかったのも事実としてある。

そこでまた生まれ変わったこの曲を聞いてもらって、改めて評価して欲しいのである。「本当はこうしたかったんですよ」って。30年越しのリベンジを果たしたい。その想いで作り直しにこだわったのだ。

あの先輩、どんな評価をしてくれるかな? いずれメッセージを送って聞いてもらうつもりだ。


少し大げさな話だが、AIを使った楽曲制作は将来的にこういう形になるのかもしれない。つまり単純にAIにプロンプトを渡して出て来る曲の良し悪しを見るのではなく、ある程度のアウトラインを制作して、曲の統合プロセスでAIを用いる。「作曲家」「編曲家」としてのAIよりも、「ミュージシャン付きのスタジオ」としてAIを活用することになるのかも。

料理でいえば、AIに「何か作って」と言ってできるものを待つのではなく、レシピも材料も完全に指定して「これを美味しく作って」と指示するみたいなものかも。それも最高のキッチンで。

まあ、いずれにしても、昔の曲のリメイクに苦戦している人は参考にして欲しい。一旦バラシて組み直し、さらにCOVERSをかけると上手く行くぞ。


執筆:佐藤英典
イラスト:Gemini
Screenshot:SUNO

▼原曲とSUNOのアレンジ。できる限り原曲を踏襲するように仕上げている


▼Yoshioの名曲「カラオケねこちゃん」。これはSUNOが勝手アレンジしない優れた曲