見ようと思ってたのに見逃した2021年の『M-1グランプリ』。まあ、NetflixにM-1のチャンネルもあるし、配信されたら見たらいいかー。せいぜい、2~3カ月後だろう。
……と思っていたら、配信開始になったのは2022年7月8日だった。まさかこんなに配信が遅いとは。NetflixでM-1を待ったことがなかったので知らんかった。
ちなみに、錦鯉が優勝したことは知ってる。テレビも見てないというのにM-1の影響力恐るべし。そのため、さらに1カ月寝かせてしまったわけだが、今完全に冷静な頭で2021年のM-1を見てみたらどう感じるのだろうか。
・去年のM-1に対する今の気持ち
M-1を見る時は切り取られた断片じゃなく、各組の漫才をちゃんと見たいと思っていた私(中澤)。優勝者は知っているが、ここ8カ月の情報断ちの成果もあって、誰がどんな内容の漫才をしたかは一切知らない。
その上で、8カ月が経過しているので、年末に見る時のあのワクワク感はもはやない。例えるなら、大阪の昼帯でやってる漫才番組を見る時くらいの温度感。土日にゴロゴロしながらチャンネルをザッピングしてたらたまたま始まった的な。要するに、とてもフラットなのである。
・Netflixの利点
フラットな私は誰が勝とうがどうでもいい。良い漫才さえ見れたら満足。というわけで、Netflixの機能を最大限に生かし、煽りVとか途中の繋ぎは全てスキップした。漫才と上沼恵美子評だけあれば十分である。
そんな感じで、「漫才 → 審査員評 → 漫才 → 審査員評 → 漫才」と飛ばしまくって見ていると、この見方だからこその利点が2つあることに気づいた。
まず1つ目は、差が分かりやすいということ。ほぼ漫才間の休みがなく数珠繋ぎなだけに、リアルタイムで見るよりダイレクトに比較することができるのである。
2つ目は、視聴時間。M-1グランプリ2021は3時間くらいあるが、上記の見方だと1時間ちょっとで終わった。ゆえに、集中力を保ったまま一気に走りきることができたのである。
・今見て面白かったコンビ
ここまで冷静にフラットにM-1を見れたのは初めてかもしれない。で、その結果、私がガチで笑えたのは以下のコンビ。
ゆにばーす
真空ジェシカ
オズワルド1本目
ロングコートダディ
インディアンス1本目
1番面白かったのはオズワルドの1本目。インディアンスも最終決戦に残って納得の出来だ。一方、もう一歩に感じたのはなんと優勝した錦鯉。別に特別誰かを応援していたわけではないが、個人的にはゆにばーすやロングコートダディが残れなかったことに悔しさを感じた。
しかし、逆に言うと、それでも優勝しているんだから一番 “持っていた” のは錦鯉ということでもある。シンプルな面白さだけじゃなく、味方をしたくなる生きざまを見せるのもまた漫才師だ。きっと、その瞬間、その場で、そんなサムシングが最も輝いていたんだろう。
もはや冷めているからこそ、そこに熱があったことを強烈に感じる。8カ月経って初めて見た2021年のM-1グランプリは、ある意味リアルタイムで見るよりも祭りを感じたのであった。
・今だから感じる審査員の目線
ちなみに、3組の最終決戦で、オール巨人と上沼恵美子の2人だけは錦鯉を選んでいないこともさすがだと思う。オール巨人はオズワルドで、上沼恵美子はインディアンスであった。
オズワルドは関西出身ではないが、どちらも掛け合いの巧みさで笑いを取る上方的な漫才スタイル。今回はコメントこそ優しかったが、その審査には上方漫才師の矜持が感じられる。
と、色々述べてきたが、結局、最後の錦鯉・長谷川さんの涙が全てだった。見終わってみると、これ以上座りの良い優勝者はいない気がするから、まさしく “持っている” と言えるだろう。
勢いも熱も生きざまも矜持も。舞台上で全てがぶつかるM-1グランプリ。8カ月経っても、いや、8カ月経ってから見たからこそリアルタイムにはない発見があったように思う。
なお、そんなM-1グランプリは2022年も8月1日の東京会場を皮切りに1回戦が始まっている。ちなみに、エントリーは8月31日まで可能とのこと。今年は誰が生きざまを見せるのだろうか? 年末が楽しみである。
参考リンク:M-1グランプリ、Netflix「M-1グランプリ」
執筆:中澤星児
イラスト:マミヤ狂四郎
▼2022年も熱き戦いの幕が上がる