日本ではオシャレイメージがあるフランスの冷凍食品専門店『Picard(ピカール)』。パリ店で売られている寿司が「マズいんだけど冷凍食品にしては頑張った……かなぁ?」といった具合の仕上がりだった件については、以前の記事でお伝えした。

その一件により「冷凍の日本食に手を出すのはヤメよう」と固く誓った私であるが、非常に物価が高いパリのことだ。安価なパスタとクロワッサン漬けの日々により、またもコメが懐かしくなった私は再び……ピカールに手を染めてしまったのである。

・スープミソ?

世界各地の日本食クオリティは年々高まっているものの、やはり各国ともに苦戦しているのは「米」だと感じる。

今回購入したのはそんな米料理の中でも基本中の基本、「Onigiri(おにぎり)」(2.99ユーロ/約356円)と……

「Soupe Miso(スープミソ)」(2.2ユーロ / 約262円)! 「ミソスープ」じゃないことに違和感をおぼえるが、果たして世界基準はどっちなのだろうか。

日本で「冷凍焼きおにぎり」などは見かけても、「冷凍真っ白おにぎり」は見たことがない気がする。三角にぎりにピタッと海苔が巻かれた解凍前の様子は、まるで食品サンプルのようだ。

ともかくパッケージの指示通り、おにぎりは750ワットで1分30秒、みそ汁は900ワットで5分30秒加熱。日本の電子レンジはそこまでの高温設定がないものも多い。

ちなみにパリ滞在先に置かれていた電子レンジのどこを見ても、イラストがあるのみでワット数表記はなかった。国によってレンジ事情も違うようである。


・かなりいいセン

規定の時間が経過してレンジを開けると……


コメとミソの匂い!!!


日本人なら瞬時に分かる懐かしい匂いが、一瞬にしてパリの片隅に漂った。この時点ではなかなかいいセンいってるかも……?

おにぎりの食品サンプル感はかなり消え、不揃いな形が逆にあたたかみを醸し出している気も……?


さっそく食べてみると……?


ウマい!!!!!



……けど具が不思議!!!!!


パッケージに記載がなかったため「塩おにぎり」だと勝手に解釈していたのだが、実は8個入りの小さなおにぎりには全て同じ具が詰められていた。その正体を簡単に説明すると「にんじんや葉っぱなど数種類の野菜をほのかに甘くクタクタに炊いたん」といったところだろうか。

日本で「野菜の炊いたん」をおにぎりの具にすることはあまりない。仮にあるとすればそれなりに濃い目の味付けをするのがセオリーだと思うが……ピカールのおにぎりに詰められた具は非常に薄味。全くもって得体知れずだ。

この具に関して個人的には「あってもなくてもいいが、どちらかといえばない方がいい」という評価である。しかし外国人にとっては好みの味付けなのかもしれないし、なにより栄養が取れる。ピカールの企業努力には違いないだろう。


続くみそ汁は正直、涙が出そうなくらい「みそ汁」であった。マジでウマい。具材のエノキが切らずに1本づつそのままの姿で投入されていたあたり、ひょっとすると若干ラーメンっぽい感覚なのかもしれない。


・なぜ寿司はマズかったか

こうなってくると不思議なのは、ピカールが作る寿司のマズさだ。おにぎりをこれほど美味しく再現する技術を持つピカールならば、同じ白米である寿司をもう少し上手に作れてもよさそうなもの。

しかし繰り返すがピカールの寿司は決して「ウマい」の部類ではなかった。この矛盾について考察の結果、私はひとつの仮説に行き着くことになる。


「冷凍米って、加熱することでおいしくなるんじゃないか?」


考えてみれば寿司は生のネタが乗っているという特性上、時間をかけ自然解凍を行ったのだ。同じ冷凍米でもこれは大きな違いである。


・プロにきいてみた

と、いうわけでこの仮説に関し、おなじみ当サイト所属の冷凍食品研究家・レンチン原田の見解をきいてみることにした。


原田「まさにその通りです。ご飯は温度によって美味しさが変わると聞いたことがあります。だからこそ菌が増殖しやすい温度帯を避けるため、冷凍する場合はこの温度を避けて急速冷凍するんですね。

逆に解凍する場合も同様かと思われます。特に5度から10度の温度帯では劣化現象がより進むとも言いますので、自然解凍すると結果として劣化は避けられず。また、余計な水分も出てしまうから加熱の方が美味しくなる──のでしょう。たぶん。

えっ? 白米の冷凍食品が日本でほとんど見当たらない理由ですか? う〜ん……どうしてなんだろう? ……調べておきますネ☆」


・ってことはつまり……

やはり「冷凍白米は加熱することでおいしくなる」というのは、かなり信憑性の高い説であることが裏付けられた。

さらに検証のため、私は加熱した冷凍おにぎりを再び常温で冷ましてみることに。すると若干おいしさが落ちた気はするものの、件の寿司のシャリと比較すれば全然おいしいという結果になった。つまり冷えた白米を食べるにせよ、一度高温加熱するのが有効といえるのではないか?

ってことは……


「冷凍寿司、シャリとネタを別にしてシャリだけ加熱すれば最強なんじゃないか説」が浮上っ……!


そうすれば若干面倒ではあるものの解凍時間は大幅に短縮される。おまけにいつでもおいしい寿司が食べられるとくれば……これはとんでもないビッグビジネスチャンスを発見してしまったかもしれぬ……!

早急に再びパリへ出向き、検証せねばなるまいて。

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼残ったおにぎりはスープミソに混ぜて……

▼パリで「ねこまんま」とシャレこんだ