夏休みのド真ん中に誕生日を迎える私は、 “誰かに祝われたい欲” を満たせぬまま大人になった。今年の誕生日こそ盛大に祝われたい……そのために、まず自分が誰かを祝わねばならぬ

わりと仲がいいことで知られる当サイトメンバー。中でも私は「チームポケモンGO」として活動するP.K.サンジュンならびに原田たかしと、休日も一緒にポケモンGOをプレイするなど特に親しくさせてもらっている。

当サイトで新年最初に誕生日を迎える人物は、我らがアニキことサンジュンだ。来るべき1月10日に向けて、正月休み返上でサプライズの準備を進めていた私と原田。最後に待ち受ける運命を知るよしもなく……。

・石橋を叩いて!「プレゼント選び」

42歳の男性へ贈るプレゼント選びは困難を極める。欲しいものは自力で入手できる程度の経済力があるうえ、好みに柔軟性がなくなってきている場合もあるからだ。そんな時は本人の持ち物からヒントを探ることをオススメしたい。

当のサンジュンは特定のブランドの靴しか履かないという、凝り固まったセンスを遺憾なく発揮している様子。

幸いにも当編集部内は土足厳禁である。無造作に脱がれた本人の靴から、難なくサイズを盗み見ることに成功!

コソコソと会社を抜け出した私と原田はショップへ直行し、本人が愛用している靴の “色違い” を購入した。同タイプの靴なら好みと大きく外れることはあるまい。42歳男性へ贈るプレゼントに冒険は不要なのである。


・定番だからこそ嬉しい!「寄せ書き」

社内の他メンバーにも当然、サプライズに協力してもらう。「絶対にバラさないように」と念を押し、事前に寄せ書きメッセージを集めておいたのだ。

パソコンで文字を打つことを生業にしているメンバーたちが、手書きだとなぜか文章がヘタになっているのが味わい深い。

自分のものでもないのに、なぜだか見ていると胸が熱くなってくる。寄せ書きってそういうものだ。


・一緒に歌おう!「バースデーソング」

私と原田は会社帰りにコソコソとカラオケへ通ってもいた。「突然バースデーソングを歌う」という演出に向け、ハモりの練習をするために。

選曲したのはドリカムの『HAPPY HAPPY BIRTHDAY』。

歌詞中の「あなた」を「サンジュン」に変えて歌うのが昭和生まれの鉄則である。

ちなみに「ポケモンを捕まえに行ってくる」と言えば、不自然に2人で出かけても社内で怪しまれることはない。普段から同僚と趣味を共有しておくことが大切だ。


・あの日を覚えてる?「魂のレター」

我々はダメ押しに手紙もしたためた。普段はなかなか言えないことを、改まって伝える機会も大切だと思うんだ!

私と原田が書いた手紙を読み比べてみると……「初めて編集部を訪れた際、静かすぎて引いたが、サンジュンが話しかけてきてくれて救われた」という、同じエピソードを互いに書いていることが判明。

そうなんだよ……そういう人なんだよなぁ……先輩はっ…………!


・準備段階で号泣

自分たちの書いた手紙を読んで感動し、早くも号泣しちゃった私と原田。しかし目的は先輩本人を泣かせること。1月10日の誕生日当日をあえてスルーすることで、本人を油断させるのも作戦のうちだ。

当日は家族でパーティーなどの予定があるかもしれない。「お疲れ様でした」とあっさり見送るのが正しい後輩のあり方というもの……。先輩が帰宅するのを見届けた後、私と原田は再びカラオケ店へ向かうのであった。


・決戦は金曜日と見せかけて土曜日

誕生日の翌日(1月11日)は、3人でポケモンGOのイベントへ取材に行くことが決まっていた。イベント終了後に勝負をかける段取りである。

1日がかりのイベントが終了したところで「誕生日祝いに夕飯行きましょう」と、ジャブ程度のネタばらし。

向かった先はもちろん……



カキ小屋!


先輩の好物がカキであることは事前にリサーチ済み。嬉しそうにカキを焼いている様子だが……この段階でショーはまだ始まってもいないのだ。

無心でカキを食べ、1時間ほどが経過したころ……

原田「(そろそろ例のヤツ……)」


仕込みに仕込んだサプライズショーの開幕だ!


・ん?

余談だがサプライズの意外な弊害として「グッズ持ち運び問題」があった。10キロ はあろうかというプレゼントは重く、大きく……さらには途中でバレるリスクをはらんでいる。計画はくれぐれも入念に!

それはさておき……ジャン! お誕生日プレゼントです!


亀沢「2人で選びました!」



サンジュン「え……?」



サンジュン「なんか気を使わせちゃって……」



原田「……」


サンジュン「あっ、こういうときは開けてみたほうがいいよね……あら、靴じゃん」



サンジュン「サイズ、盗み見たんでしょ?」



サンジュン「2人ともありがとね〜」


原田「……」


亀沢「……」



サンジュン「ん?」


・思ってたんと違う

先輩の反応が想像よりも「サプライズしていない」ことに、若干不安を感じる私と原田。うまく言えないけれど……もっとこう「ビックリ!」とか「泣いちゃう!」とか、そういうリアクションがあると信じて疑いもしていなかったのだ。

だがしかし……ここはまだまだ序盤戦。あまりにもビックリしてどう反応していいか分からなくなっている可能性だって十分にある。そういう意味では「サプライズさせすぎた」ということなのかもしれない。


さあ、お次は30分ほど時間を空けて……ジャン! みんなからの寄せ書きデス!


亀沢「いつもありがとう!」



サンジュン「うわぁ……」



サンジュン「コレさぁ……」



サンジュン「俺、会社辞めるみたいで悲しくなるじゃん」



亀沢「……!」



原田「……!」



サンジュン「まぁ、2人ともありがとね〜」


・思てたんと全然ちゃう

先輩のあまりの「サプライズしてなさ」でショック状態に陥った私と原田。人前でこれ以上の演出を行う勇気がなくなり、外に出て手紙を読み上げることにした。

日頃の感謝、尊敬の念、あの時の裏話など、心を込めて語りかける。静かに聞く先輩。


さぁ……時は満ちた。



泣けっ…………!



サンジュン「コレさぁ……」



サンジュン「どっかに羽鳥さん(編集長)が隠れて動画撮ってんでしょ!?」



亀沢「……」



原田「……」


・ダメだこりゃ

夜も更けた銀座の街角。この期に及んで路上で歌をハモる勇気など、私と原田に残されていなかったことは言うまでもない。

思い出せば自他ともに認める “エリートB型” であったサンジュン。これまでの悪行の数々。あえて先輩であることを抜きにして言わせていただくならば……彼の辞書に感動なんていう言葉はないのだろう。きっとそういうヤツなのだ。


もういい。サプライズを仕掛ける相手を間違えた。「この後2人で飲み直そう」と目くばせする私と原田。すると……夜道を歩く先輩が、ボソリと語り始めたではないか。


サンジュン「前に佐藤さんが誕生日プレゼントをくれたんだけどさ」


・意外な胸の内

サンジュンによると数年前の誕生日、さらに先輩の佐藤記者から5000円分の『肉ギフトカード』をもらったのだそうだ。誕生日プレゼントを購入するにあたり、私と原田も今回「予算は1人5000円くらい」としていたから、同僚へのプレゼントとしては一般的な金額なのだろう。

プレゼントは嬉しかったが、そうなると佐藤記者の誕生日をスルーするわけにもいかない。悩んだ彼は、もらったのと同じ『肉ギフトカード5000円分』を贈った。そして「こういうのって、キリがねぇな」と感じたのだという。

「今後もずっと付き合っていくメンバーなのに、気を使わせるの嫌じゃん」と語る先輩の言葉には、42年間生きてきた彼なりの哲学があった。総勢20人を超えるメンバーで成り立つ当編集部。確かに全員の誕生日を毎回祝っていたのじゃ身も心も持たない。

自分が誕生日を祝われたいからといって、むやみに他人を祝うことは、会社全体にプレッシャーを与えていることになる。先輩の言葉は少ないながらも、そのことを諭しているように私には感じ取れた。

「原田さんと亀沢さんの誕生日、覚えたからね!」と言い残し、さっそうと帰路につくサンジュン。彼は決して感動していなかったわけではない。ただ年長者として周囲に負担がかからぬよう、あえて心を鬼にしてくれたに違いないのだ。


先輩、かたじけないっ……!


・今日から私にできること

主役であるはずの先輩に、とんでもない気を使わせてしまったことを反省した私。せめて「社内プレゼント贈り合い地獄」を終わらせる役目は、責任を持って私が引き受けねばならぬ。

幸運なことに本日1月18日は、今回ともにサプライズを企画した原田の誕生日だ。私は責任を持って今日という日を全力でスルーし、 “負の連鎖” を断ち切ることにしたいと思う。騒ぎが大きくなる前に完結できて本当によかった。


ただし、大切な気づきを得ることができたという点においては、今回のサプライズを計画してよかったと感じている。準備するのもとっても楽しかったしネ! 毎回は疲れるけどたまにだと嬉しいもの……それがサプライズ。

みんなも大切な先輩に、1度は仕掛けてみてほしい!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼プレゼントした靴は履いてくれている模様

▼先輩……

▼これからも……

▼よろしくお願いしま〜〜〜〜

▼〜〜〜〜〜〜す!