あぁ……ドイツのクリスマスマーケット」と、幼き頃より何度つぶやき夢にみたことか。よく調べるとクリスマスマーケットは他の国でも大々的に開催されているようなのだが、「ドイツは別格」という憧れを抱く日本人は私以外にも多いはずである。

本番よりも準備が楽しいのは遠足に限った話ではない。ヨーロッパ各地ではクリスマスの約1カ月前(11月の最終週末スタートが多い)からマーケットが開かれ賑わう模様。狙いに狙った11月25日、私は首都ベルリン行きの飛行機に乗った。

私が持つ様々な夢の中でも「ドイツのクリスマスマーケット訪問」は特別である。夜が近づけばカタカタと手が震えてきた。長年の夢が叶う喜び、「思ったよりショボかったらどうしよう」という不安……あとは単純にヤベェ寒さによるものだろう。

・マーケット多すぎ問題

ところでクリスマスマーケットが各国で開催されているとはいえ、私は「せいぜい1都市1カ所」だと思い込んでいた。ところが実際には、ベルリン中心部から徒歩圏内だけでも10カ所近くのマーケットがあるようなのだ。

ホテルのフロントで「一番ビッグなマーケットはどこか」ときくと、地図に印をつけてくれた。

中心部から電車で20分ほどの場所にある『カイザー・ヴィルヘルム記念教会』付近のマーケットらしい。あてもないのでひとまずそこへ行ってみることにした。これはあくまでもフロントのお兄さんの主観なので、行く予定の人は事前に情報収集しておいたほうがいいだろう。

夕暮れ前に到着してみると……マーケット内へ入る前からすでに、夢の始まる予感しかしない……!


・ジャーマンドリーム

クリスマスマーケットは想像以上に夢のワンダーランドであった。教会を囲む広場に小さな露天がどこまでも軒を連ね、巨大な迷路を形成している。ドリーム! 夢の迷路!

どの店もこの店も「どうやったらそんなにカワイクなれるのっ!?」という感じだ。

ローソクの炎のような照明がまた……イイんだァ……。

プレッツェル、バームクーヘン、シュトーレン……ドイツ語の響きって素敵だァ……。

マンガでしか見ないようなビジュアル重視のお菓子が並んでいる。

「ツリーに飾る用のお菓子」というのもあるようだ。

さらには移動式の観覧車や遊具も設置されている……乗りたい……!

私の夢リストに「来世はドイツの子供になりたい」という新たな項目が追加された。

できればここに住みたい。


・想像よりだいぶオシャン

「ドイツのクリスマスマーケット」といって私がイメージする光景というのは、幼い頃にNHKの旅番組で観たものがベースになっている。それはもっとガヤガヤとした狭い通路にテントのような簡易的な屋台が並び、地元のオバチャンやオジイちゃんが店番をしている光景だ。

しかし今回実際に訪れたマーケットでは屋台というより「小屋」と呼ぶべき立派な店が、ゆったりと軒を連ねていた。またマーケットのメインは「クリスマスの飾りを売り買いすること」だと思っていたのに対し、屋台のほとんどが飲食店である。

買った食べ物も食べ歩きではなく、飲食スペースが多く設けられていた。

アルコールを扱う店には “雪だるまのカップ” が並べられている。テンションが上がっている私は「それにビールついでよ」と話しかけてみたが、答えは「ノー」!

どうやらそれは『ホットワイン(グリューワイン)専用』のカップらしく、そういう融通はきかないらしい。せっかくなので人生初のホットワインを注文してみる。価格は6.5ユーロ(約784円)。カップ代込みとはなかなか良心的だ。

ドイツ名物のソーセージも買い込んで……

マーケットを眺めながら味わう時間は夢! マジで夢!

ウインナーはパリッパリ!

ホットワインはなぜ日本で普及しないのか理解に苦しむほどおいしい。


・マーケットはしご

翌日はもちろん別のマーケットへ出向いた。『ジャンダルメンマルクト』はドイツ大聖堂、フランス大聖堂、コンサートハウスという、三つ巴の豪華建造物に囲まれた広場である。

驚くべきことに広場の入り口で入場料を徴収された!

……といっても1ユーロ(約121円)なので大した額ではない。むしろ入場してみると「1ユーロは安い」と感じるほど素晴らしかったので、支払う価値アリだと個人的には思う。

昨夜の教会のマーケットは大通りに面しているため車の音が少しうるさかったり、食事していると物乞いの人が寄りついて離れないといったこともあった。そういったことが気になる人は最初から1ユーロ払ってこちらに来るのが正解かもしれない。

ライトアップされた大聖堂と屋台のコントラストは圧巻の一言である。

ショーも開催されていた。有料だというのに昨夜の5倍くらいの人混みだ。どれくらいかというと “歩くのが若干困難” なレベル。

ウワーーーッ! こちらのマーケットには私の憧れ「ツリーの飾りを売る店」がいっぱいだァ!

これぞ夢! 乙女の夢!

並べ方が「さすが欧米」といった感じ。

キラキラすぎて目が潰れそう!

陶器の飾りも多数。家にツリーはないけれど……できれば一式買って帰りたい……。

プラスチック製の飾りをいっこだけ買いました。

ドイツ名物の焼きアーモンドを売る屋台で……

あえてアーモンドではなくカシューナッツを購入。ドイツの夢の味がした。

こちらのマーケットの屋台では、昨夜以上にしっかりとした飲食スペースが設けられており、こうなっては小屋というよりもはや「店舗」である。リッチな気分でマーケットを味わいたいならココで間違いないだろう。


・マーケット総評

ベルリン市内で2カ所のマーケットをめぐってみると、それぞれが顕著な特徴を持っていた。どちらがいいかというと……これはもう好みの問題である。

カイザー・ヴィルヘルム記念教会はのどかな雰囲気で、敷地が広くゆったりしていた。店舗数がかなり多く、そのほとんどは飲食店。飲み食いするには最高だが、クリスマスグッズを求めて来るとやや物足りないかも。お店の人たちが友好的。

ジャンダルメンマルクトのほうはとにかく綺麗。まるで六本木ヒルズにいるかのような錯覚をおぼえる。人混みのため “のんびり散策” とはならないが、お金を払えばバーのVIP席のようなものもある。飲食店も雑貨店もレベルが高い。


どちらも最高のマーケットであったが、「何かひとつケチをつけろ」と脅されたなら……個人的には “どちらもやや近代的すぎる” という点であろうか。

それは私の最終目標が「子供のころにイメージしたクリスマスマーケットと同じ場所へ行きたい」というものだからである。あの場所がもし今も存在しているとすれば、どこかもっと田舎のほうだろう……ということが今回の調べでなんとなく分かった。

シャンパンを飲んで騒ぎたい、子供連れで行きたい、サンタに会いたい等々、クリスマスマーケットに求めるものはそれぞれで異なるはず。自分の夢と最も近いマーケットを探して旅することも、クリスマスのひとつの楽しみ方に違いない。

・クリスマスは夢である

記念日をひとりぼっちで過ごすのは寂しいものだ。特に誕生日はキツい。「彼氏がほしい」と心の底から思う。しかし……クリスマスは断じて違うぞ! クリスマスは楽しいものだ。「クリスマスなくなれ」とか言ってるみんな、どうか目を覚ましてほしい。

日本におけるクリスマスを「恋人と過ごす行事」のように定義したのが誰かは知らないが、罪深いヤツである。それは間違いだ。むしろ逆だ。クリスマスは1年に1度「恋人がいないことを忘れさせてくれる日」となりえるポテンシャルを秘めている。今回ドイツへ来てそのことがよ〜く分かった。

クリスマスはいい。何がって雰囲気がいい。ツリー、サンタ、プレゼント、ホットワイン……とにかく最高じゃないか。クリスマスは夢だ。みんなが子供のころの気持ちを思い出せば、きっと日本でも当たり前にマーケットが開かれるようになる。宗教がどうとかそういうナンセンスな話はナシにして、みんなでクリスマスを楽しもう! 今年から!!!!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.