サーカスには、赤ちゃんからお年寄りまで毎日大勢のお客様が来場してくる。見終わった直後の感想も、ピエロが怖くて泣いてしまった子供や、サーカスに夢を抱く若者、去りし日の思い出を懐かしむ人……と、実に様々だ。
そんな夢の世界に暮らす団員には、いつも多くの質問が寄せられる。子供たちは「シマウマさんのシマシマ模様はみんな同じなの?」と疑問を持ち、大人は「もし彼女ができたら遠距離になっちゃいますね?」と聞いてくる。というわけで今回は、元サーカス団員である筆者が、より大人向けな質問に真っ向から答えていきたい!
・質問1:「もし彼女ができたら遠距離になりますね?」
その通り! 団員同士で恋愛をすれば超近距離恋愛だが、そうじゃない場合は確実に遠距離恋愛になる。 筆者を含め、多くの団員は深夜バスや格安航空券を使いこなしていた。しかし、その恋愛が成就するかどうかは全く別の話で、間違いなく「恋愛は曲芸よりも難しい」のである。
・質問2:「動物も一緒に暮らしているんですよね?」
もちろんである。朝、顔を洗いに行こうと思って部屋を出たら目の前にキリンがいる……全く珍しくないぞ。それが当たり前の生活だったのだ。入団した頃は珍しくていつも携帯で動物たちの写真を撮っていたが、2週間で飽きた。動物がいるのが当たり前だからである。
ちなみに筆者は動物学校を出たわけではないが、「あれ? 今日、ポニーの顔色が悪いな」と微妙な異変を感じて調教師に教えたら、やはり病気だったということがあった。動物たちも家族なのだ。
・質問3:「みんな体操部出身なんですか?」
確かにサーカスに入団するなら、体操を経験しておくのはいいかもしれない。しかし、体操部どころか運動未経験だった団員も、立派に空中ブランコや綱渡りショーに出演している。ちなみに筆者は大学時代に落語研究会に所属していたから、運動が苦手という人も安心してほしい。
大切なのは練習を続けることと、自分の目標に夢中になること。当たり前だが、あきらめない限り誰でも必ずデビューできるということである。
・質問4:「どんな仕事が大変でしたか?」
ゾウさん(サーカスでは何故か、ゾウだけ “さん付け” で呼ばれる)や、シマウマの餌をトラックから降ろして倉庫に運ぶ仕事は大変だった。1つ約40キロの牧草を男性団員が次々と運ぶ。運び終わった後は全身草まみれが当たり前である。でも、運び終わった後にみんなで水浴びをするのは最高!
もう1つ、自分たちの生活エリアが大雨などで浸水してしまった時に、水中ポンプを設置して水を抜く作業も大変。水はけの悪い土地で生活をするときは常に長靴で生活をしていたぞ。
・質問5:「どんな部屋で生活しているんですか?」
団員はテントの裏にあるコンテナで暮らしている。1台のコンテナの中には3つの部屋があって、1部屋の広さはだいたい5畳ぐらいだ。隣の部屋の目覚まし時計の音やテレビの音も聞こえてくるから、音量調整には細心の注意が欠かせない。
入団当時、筆者は自分の部屋で「スピッツ」を控えめな音量で聞いていたが、隣の部屋から「うるせー!!」と言われたことがある。まあまあ静かな音楽のジャンルだと思っていたが、決して油断はできないということだ。
──以上である。サーカス団員を少しでも身近な存在と感じてもらえたなら幸いだ。この記事を読んだ後に、実際に生のサーカスを観に行ってみてはいかがだろうか? また新しい感想や質問が浮かぶに違いない。
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
▼機会があったら、ぜひサーカスに行ってみてくれよな!