つい先日、およそ20年ぶりに『木下大サーカス』を観てきました。きっかけはひょんなことだったんですが、自分でもビックリするくらい『木下大サーカス』は最高でした。

正直に言ってしまうと、当初は「娘が楽しめればいいや」と思っていたのですが、とんでもない! 上手く言葉に出来ないんですが、なんか本当に感動してしまったのです。

・2005年以来2度目

今からさかのぼること19年前の2005年。当時、千葉県柏市に住んでいた私は木下大サーカスの柏公演を観に行っています。

というのも、当時学生だった妹が木下大サーカスで短期間のアルバイトをすることになり「じゃあちょっと行ってみっか」と軽い気持ちで出かけたのです。

ただし、当時の記憶はほとんどありません。というか、2005年に「木下大サーカスを観に行った」という事実も今回出かけたサーカスの会場で思い出したくらいです。

おぼろげに「球体の中でバイクが回ってたなぁ」と覚えていますがそれ以外の記憶は無く、ましてや「感動した記憶」はありませんでした。

・元サーカス団員

そんな私が十数年後、木下大サーカス出身の砂子間記者と同じ職場で働くことになろうとは。運命とは何とも数奇なものです。

聞けば砂子間記者は「僕は入社2年目で柏公演にいました!」と言っていたので、会場のどこかですれ違っていたのかもしれません。人生って意外とクロスロードしてますよね。

さて、砂子間記者と知り合って以来、多少は「サーカスの裏事情」を知るようになって迎えた木下大サーカス。それでも当初は「ただサーカスを観に行く」という感覚でした。ところが……。

満員御礼の幕張公演で目にした「木下大サーカス」はただただ最高だったのです。まず印象的だったのは「テンポの良さ」でしょうか。

・観客を飲み込むスピード感

この日は途中で20分の休憩を挟み、前後半でおよそ20のショーが行われていました。その1つ1つがとても小気味よく、サクサクと進んでいくのです。

ジャグリング、動物のショー、イリュージョン、バイク、そしてフィナーレの空中ブランコ。巨大なホイールが回転する「決死の空中大車輪」なんてのもありました。

それらのショーが次々と展開していくため、飽きるタイミングがありません。あの日会場にいたほとんどの観客は、そのスピード感に圧倒されていたと思います。

・やってる感ゼロ

もちろん、1つ1つのショーも素晴らしいものでした。動きを予測できるものあれば、予測できないものもあるんですが、予測できたとしても必ず想像を超えてくるのです。

またどの演者にも「俺が見せてやるからお前ら見てろ」的な気配がなく、誰もがお客さんと真剣に向き合っていることがヒシヒシと伝わってきました。

故意かどうかは謎ですが技を失敗することもあり、再挑戦の際は会場全体が「頑張れ!」的な雰囲気に包まれます。感情移入させる演者も流石ですが、何とも言えない温かい空気が非常に印象的でした。

・この公演のために

さらに「団員の一致団結感」には深く感動しました。これは砂子間記者から聞いていたのですが、サーカス団員は基本的に1人でいくつもの役をこなすそうです。

違う演目に出演する団員もいましたが、私が感動したのは演者をしつつ裏方をこなす団員さんたちの姿。例えばバイクのスターだった男性が、気付けばライオンの檻を設営していたりするのです。

先ほどまでダンスを披露していた女性が休憩時間中はポップコーンの売り子になり、空中に吊られていた女性は終演後に交通整理をしていました。

本人たちにとっては仕事なのでしょうが、1人1人の力を結集して「みんなでこのショーを成功させるんだ!」という想いが伝わって来たようで、記事を書いている今でも目頭が熱くならざるを得ません。

会場に入った瞬間の、あの怪しい独特の雰囲気。そしてテンポよく展開される曲芸の数々。団員全員が観客と向き合いながら人間離れした技を繰り出す「木下大サーカス」は、控えめに言って最高でした。

・本当に生で観て欲しい

帰り道、私は「多くの人にサーカスを観て欲しいな」と思いましたが、それには明確な理由があります。きっと団員さんたちもガラガラの会場と満員の会場ではやり甲斐が違うと思うのです。

ガラガラの会場だからと言って手を抜くことはないでしょうが、1人でも多くの声援や拍手が団員さんたちの力になるに違いありません。

本当に素晴らしいショーだったため、純粋に「いつも満員のお客さんの前でショーをして欲しいな」と思ったのです。そして満員のお客さんに迎えられる資格が「木下大サーカス」にはあると思いました。

なお、私が足を運んだ幕張公演はすでに終了し、2024年2月24日からは大阪で「森ノ宮公演」が始まるとのこと。お近くの方はお誘いあわせの上、ぜひお出かけになってみてはいかがでしょうか?

お子さまはもちろん、老若男女が楽しめる木下大サーカス。きっと団員たちの想いを込めた “その時しか過ごせない時間” を過ごせるハズです。およそ20年ぶりの木下大サーカス、本当に最高でした。

参考リンク:木下大サーカス
執筆:P.K.サンジュン
Photo:Rocketnews24.