「野球しようぜ!」を合言葉に、大谷翔平選手が全国の小学校にグローブを6万個寄贈したことは記憶に新しい。どうやらそのグローブが娘の通う小学校にも届いたようだ。

将来娘にプロ野球選手になって欲しい! ……とは思っていないものの、娘が大谷選手から贈られたグローブをきっかけに “野球の楽しさ” を知ってくれるならこれはありがたい。ところがどっこい、話はそう単純ではないようだ。

・2万校に合計6万個を寄贈

大谷選手のグローブ寄贈が話題になったのは昨年の11月のこと。自身のインスタグラムで、約2万の全小学校に合計約6万個のグローブを寄贈することを発表したのである。

野球人口の減少が叫ばれる中、今をときめくスーパースター「大谷翔平のグローブ」はどれほど効果があることだろう? 大谷選手自身も「このグローブを使っていた子どもたちと将来一緒に野球ができることを楽しみにしています!」とコメントしている。

さて、つい先日のこと。娘と歩いていると不意に「お父ちゃん、学校に大谷選手のグローブが届いたって」と報告があった。おお、マジで来るんだな……なんて思いつつ、娘に「いいじゃない。キャッチボールでもしてごらんよ」と返した。


すると……


あれは使う用じゃなくて見る用だって」と娘。そうか……うーむ、そうか。まあそうなのかな? ……と、やや複雑な感情になってしまった。



・鑑賞用のグローブ

大谷選手が全国の小学校に送ったとされるグローブは左利き用なども含めて3つ。その3つのグローブを数百名で使い回すことは現実的ではないのかもしれない。現場で熾烈なグローブ争奪戦が勃発することは目に見えている。

さらに言えば今から35年ほど前、私が通っていた千葉県の小学校は「野球禁止」であった。ましてや娘は大都会東京のシティーガールである。そもそも野球及びにキャッチボールが禁止されている可能性も低くあるまい。

そして最大の障害になっていると思われるのは「平等の精神」だ。娘が入学してまだ1年足らずだが、ちょっとしたことでも先生方はとても迅速な対応をして下さっている。その折、平等の精神を感じることが多々あった。



・平等ゆえに

例えば何かしらの諍い(いさかい)があっても、先生方が一方だけの話を聞くことは絶対にない。授業参観などを見学していても偏りはなく、すみずみまで「平等の精神」が根付いている印象だ。

だからこそ大谷選手のグローブを「観賞用」とする判断は十分に理解できる。3つのグローブを全校生徒が平等に使うことは実質的に不可能。平等の精神にのっとれば致し方ない決断なのだろう。

一方で大谷選手が願いを込めた「野球しようぜ!」の想いとは、ややかけ離れてしまっていることも事実。美味しいところを両取りできればいいが、そうもいかないのが難しいところである。結果、私は娘に「そうか……」としか言えなかった。

ただ、今はドラえもんにしか興味がない娘すら知っているほど「大谷翔平」はビッグネームである。大谷選手から寄贈されたグローブを見て、娘が少しでも野球に興味を持ってくれれば幸いだ。娘よ、お父ちゃんと一緒に千葉ロッテを応援しよう。

参照元:Instagram@shoheiohtani
執筆:P.K.サンジュン
イラスト:稲葉翔子
Photo:Rocketnews24.