ジャンボ! あけましておめでとう。今年もケニアの「カンバ族」であるオレ・チャオスがお送りする『カンバ通信』をよろしくおねがいします。
ということで年が明けた2024年。ヒマだったオレは、アフリカ最大のスラム街こと「キベラスラム」に行って草野球ならぬ草サッカーを観戦していた。
スラム街のサッカー試合といえど、ちゃんとユニフォームも着ているし、すぐそこに警察署もある広場なので非常に安全なのだ。
そんな時、ひとりの男が近寄ってきた。
男「サッカーが好きなんかい」
俺「うん。サッカー好きだけど」
聞けば彼はキベラスラム出身であり、今現在もキベラの住人だった。
そこからオレたちは、ケニアのサッカー話はもちろん、欧州サッカーの話題で盛り上がった。サッカー好き同士、すぐに打ち解けられる。
あまりにも夢中になって話しすぎて、気づけば夕方になっていた。そしてオレは彼に聞いてみた。
「キベラスラムの夜はどんな感じなんだい?」と。
ここは警察署も近くて安全だし、なにより彼はイイ奴だし、もしも安全ならメシでもどうかなと思ったのだ。
ところが。
「そりゃキベラの夜は危険さ。住んでいるオレですら危険と思うくらいに危険さ。夜は立ち去ったほうがいい」
「どう危険なんだい?」
「いろいろあるけど……。そうだね、もっとも危険なのは午後22時から23時までの1時間。スラム街の泥棒・強盗が活動を始めるのはこの時間帯だ」
「なぜ午後22時から23時までの間なんだい?」
「なぜならその時間、ほとんどの人は家にいて、外を出歩いている人はごくまれ。もしもその時間帯にスラム街を歩いていて、誰かに会ったら、そいつは泥棒か強盗だ」
「もしもスラム街で泥棒や強盗に会ってしまったら、どうなるんだい?」
「彼らが求めてくるのは、当然お金だ。あとは電話(スマホ)だね。この2つをよこせ、とくる。そしてそれに対峙した人は、断ることはできない」
「なぜだい?」
「彼らは100パーセントの確率で武器を持っているから。たとえば銃。次にナイフ。あと意外と多いのがハンマーだね。断ったら、これらの武器が火を吹くことになる」
「怖いね。夜は外に出られないね」
「うん。出られないし、出なくても同じかも。泥棒の中には善良な人間のふりをする人もいる。日中、仲良くなる。そして彼らは、夜に君の家のドアをノックする」
「ふむふむ、それで?」
「知っている人だから君はドアを開けるだろう。そしたらハンマーで頭や顔面をブン殴り、気を失ったり死んだあと、彼らは落ち着いて家の中のすべてのものを持っていく」
「死ぬ時もあるのかい」
「あるよ。ある。あたりまえだろ。もしも、いきなり殴ってこなくても、家に来られたら彼らの言うことには従ったほうがいい。抵抗は絶対にしちゃだめだ」
「抵抗したらどうなるんだい?」
「さっきも言っただろ。必ず殺される。だからもしも家に来られたら絶対に抵抗しちゃだめだ。もしも道で強盗にあっても絶対に抵抗しちゃだめだ。命が欲しければ従うことだ」
「そうなんだね。もう暗くなったから、オレは帰ることにするよ。もしもまた会うことになったら、また話そう」
「ああ、それがいい。ここは危険だから。では気をつけて。また会おう」
「クワヘリ」
執筆:チャオス(カンバ族)
超訳:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
▼また会おう!
▼リクエストボックスに質問などを送ってもらえるとチャオス喜びます。よろしくお願いします!