人の記憶とは曖昧(あいまい)なもので、年々衰えていくものだ。私(耕平)もアラフィフの歳で当編集部も40代が多い。そして私は編集部には所属しない、業務委託契約を交わしている外部ライター。コロナ禍の影響もあったことから、編集部には久しく顔を出していなかった。

そろそろお邪魔させてもらおうと考えていた頃、とある情報が飛び込んできた。それは8月26日に高円寺パンディット2号店で開催される「ハトちゃんサトちゃん『ごきげんBAR』」というもの。「ハトちゃんサトちゃん」とはGO羽鳥編集長佐藤記者のことで、2人が1日店長を務めて食事も楽しめる少人数限定の読者さん参加型イベントだ。

そこで、ある考えが浮かんだ。「3年半以上会っていない外部ライターである、私の顔を覚えているのか?」。それを検証すべく、チケットを購入! 実際にドッキリを仕掛けてみたら、意外な結果が待っていた……というわけで、その一部始終をご覧いただこう!

・気づかれる確率は超低い?

今回の検証にあたり、私の中でかなり高い確率で気づかれないであろう根拠があった。それは決して、2人が薄情だとかそういうわけではない。その理由は4つある。

まず1つ目は「時間が経ち過ぎている」ということ。私が最後に2人に会ったのは2019年12月に開催された、ロケットニュース24の忘年会だ。今は編集部のメンバーだけで開催されているが、コロナ禍前は外部ライターも参加していた。


過去に定期的に顔を合わせて仕事していたならまだしも、私が編集部に訪問したのはわずか3回。しかも最後に会ってから3年半以上経っている。そんな環境では自分が逆の立場でも気づく可能性は低いと思う。


2つ目は「私服での参加」ということ。実は私、編集部の記者たちとはハゲアタックで捕獲された時と同様、会社帰りにしか会ったことがないため、忘年会も含めて全てスーツ姿だった。



ゆえに2人は私の私服姿を見たことがない。よって2人の中では「耕平=スーツ」のイメージが強いはず。これも気づかない可能性の要素になると考えている。


3つ目は「人生でMAXに太った」こと。ここ最近、総重量2.5kgのカレーにチャレンジしたり、約500gのモンスターバーガーを食べたりなどの大食いジャンルや食レポの記事ネタが大半を占めていたこともあり、過去イチに太ってしまった。

前述のスリムタイプのスーツ姿から、私服姿の小太りなオッサンに成り下がったこともあり、外見も変わってしまっている。それが、さらに気づかない要素にプラスされたであろうと推測した。


最後に4つ目は、「トレードマークの薄毛を極力加工してわからないようにした」こと。


編集部に訪問していた時期は特に頭髪を加工せず、頭頂部のツンドラ地帯をさらけ出していた。しかし、ここ1年で薄毛専門美容室に通い始めたこともあり、薄毛に見せないヘアセットスキルが爆上がりした。これでバレる確率は格段に減るだろう。

この4点が私が考える「気づかれないであろう根拠」だ。


・イベントに潜入

そして、来たる8月26日。イベントに潜入すべく、会場の「高円寺パンディット2号店」に足を運んだ。


前述の外見に加えて、少しずつ気づいてもらう要素を出していこうと考えた。まずは今まで見せたことがない、メガネ姿で会場に潜入。



それから佐藤記者に気づいてもらおうと、ハゲアタックの謝罪の時に編集部に訪問した際に渡してくれた、アップルストアのラッキーバックを装備した。


イベントは18:00〜22:00で、各2時間ずつの2部制。私は1部の参加だった……が、なぜか2部からと勘違いしていて、入場すら危ういと思われた。しかし高円寺パンディットのスタッフさんのご好意で何とか入場させてもらうことができた。一瞬、凡ミスで企画倒れだと思われたが、マジで感謝だ。

そして、2部から参加の数名の読者さんに紛れて一緒に入場。席に着くと佐藤記者が、今回のイベントに配布する自身のチラシを配りながら話しかけてくれた。


ロケットニュースのイベントに来たのは初めてだが、マジでサービス精神がすごいな……と感心した。ただ当然ながら、私が耕平だということは、この時点では気づいていない。

そして参加した読者さんも、すごくフレンドリーな人たちばかりだった。読者さん同士の会話に入り「好きな記者は誰ですか?」という質問を受けて、私はこう回答した。


「羽鳥さんも佐藤さんも、めっちゃファンです。あと耕平さんっているじゃないですか? あの人の記事も最近好きなんですよねー」


と、あくまでいち読者のフリを決め込む。そこで参加者さんの反応を見たところ、「あぁ、あの薄毛の人ですよね」、「へぇー、なるほど」といった反応だった。何より読者さんが私を知ってくれていたことが嬉しい。そして佐藤記者も「最近、結構記事書いてますよね」と、コメントをくれた。もちろん、この時点では気づかれていない。


その後、イベントの目玉の一つでもある、羽鳥編集長が作る「羽鳥みそうどん」が運ばれてきた。


味噌ベースの豚汁風うどんということで、見た目からして美味そうだ。さっそく口に運んでみる。

激うま!


郷土料理店か? と思うほど、食べた瞬間にのどかな田舎の風景が浮かぶような優しい味。とても、いちメディアの編集長が作ったとは思えないくらいの完成度だ。美味すぎて、アッという間に平らげてしまった。


絶品料理を堪能して腹ごしらえもできたところで、いよいよ2人に対して距離を詰めていく……。


・ドッキリ開始!

場も和んできたところで、まずは佐藤記者に仕掛けることにした。「写真撮らせてください!」とお願いしてみると、普通にOKしてくれた。


恐るべきファンサービス精神! まさか私が耕平と知るよしもなく、ピースで対応してくれる。ただし後述するが、この時の佐藤記者は「ヤベェ奴来たな……」と思っていたらしい。なのでピースしながらも、その顔は無表情に近いものだった。

その後、他の参加者さんも交えたトークの中で、前述のリュックの話題に触れていく。


「佐藤さん、このリュックに見覚えないですか?」


するとパイセンが、首を傾げながらリュックに触れていく。


「これ、佐藤さんに頂いたリュックなんですよ」と伝えたところ、パイセンはますます混乱しはじめた。そこで私は「実はこういう者です」とロケットニュースの名刺を差し出す。すると名刺を見ながらニヤリとして、私の顔をジッと見つめる。


その後「やられた〜! なんか怪しいと思ったんだよなー」と一言。「ご無沙汰してます」と改めて挨拶した。ただしこのやり取りは、向かいに座っていた参加者さん以外、誰も気づいていない。

そこで向かいの参加者さんに口外しないようお願いして、パイセンにも協力してもらい、今度は羽鳥編集長へドッキリを仕掛けていく。

まずは先ほどの佐藤記者同様、「写真撮らせてください作戦」を切り出す。すると、ノリノリで引き受けてくれた。


こんな怪しいオヤジが頼んでいるにもかかわらず、何という神対応! その後イベントも後半を迎え、プレゼント配布のジャンケン大会が始まる。


私は1番前の席に座っていたので、それなりに目立つようにアピールしたが、ここでも気づいてもらえず……。


そして、勝ち残った参加者の方にプレゼントする書籍にサインをする編集長。


その後、佐藤記者のポールダンスイベント動画が流れ、店内はますます盛り上がる。


動画が終了し、イベントも終盤に差し掛かる。このままでは終わってしまうかもしれない……ということもあり、改めて羽鳥編集長に話しかけてみた。


すると話の途中で、羽鳥編集長から思いもよらない言葉が飛び出す!

「あの……耕平さんに似てるって言われません?」


……いや、私はそもそも顔出ししていない。すなわち当サイトの読者さんに対して「耕平に似てる」という言葉は成立しないのだ。

この時点で「バレた」と確信。改めて挨拶して、羽鳥編集長は私が耕平だということをアナウンスする。その瞬間、店内は思わぬサプライズに大盛り上がりとなった。


その後、22:00までのイベントは盛り上がりすぎて1時間延長。最後は読者さんと羽鳥編集長、佐藤記者のスリーショットで写真を撮るサービスで締めくくる。私も久々に加工してフサフサとなった頭頂部をさらけ出す「耕平ポーズ」で2人とパチリ!


のちに聞いた話で羽鳥編集長は、うすうす気づいていたらしい。ただ確信が無かったので、切り出すのに躊躇(ちゅうちょ)していたとのことだった。


──というわけで、検証結果をお伝えすると、私の予想を良い意味で大きく裏切り「気づいてもらった」というのが結論だ。改めて編集部サイドのライター愛が感じた瞬間だった。そして何よりも読者さんと直接触れ合えたというのも、これから記事を書いていくうえでの貴重な体験となった。

ちなみに私がロケットニュースの読者さん参加型イベントに行ったのは初めてだったが、皆さん本当に良い人ばかりだった。そして共通の話題が美味しい食事とお酒を飲みながら語り尽くせる場も、そうは無いだろう。

私は当サイトのライターなのでポジショントークになってしまうかもしれないが、ぜひ一度イベントに参加してみることをオススメしたい。当サイトの読者さんなら絶対に後悔は無いはずだ!

執筆:耕平 
Photo:RocketNews24.

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