・YOUは何故にホルモンを?

と、その前に。本ライブの感動的ハイライトは、終盤のMCでドラムのナヲさんが現地ファンに対し「私たちを見つけてくれてありがとう」とおっしゃったシーンである。ホルモンとは “同じ日本人” という以外に共通点を持たぬ私だが、あえて失礼を承知でこう言いたい。


「いや、マジでよく見つけたな」と…………。


そもそもマキシマム ザ ホルモンは日本国内においても、ロックファンなら誰もが知っているが一般的には “それなりのツウ” が好むバンド。それを約1万キロ離れたロンドンの人たちは、一体どうやって知り得たというのだろう? 考えても分かりっこないので本人たちに聞くしかない。

ライブ終了は23時ごろ。ひとしきり会場前で盛り上がっていたロンドン腹ペコたちも、足早に駅へ向かっていく。うち何人かをつかまえて「Why do you know Maximum the Hormone?(どうしてマキシマム ザ ホルモンを知っているの?)」と質問をぶつけてみたぞ。教えてプリーズ!

まずこちらのカワイらしいカップル。「『デスノート』で知ったわ」との答えだ。デスノートって、あの「名前を書いたら人が死ぬ」という例の……?

このドラマー顔の男性も答えはデスノート。実はホルモン、かつてアニメ『デスノート』のテーマ曲を担当していたらしい。そう……先ほど私が死にかけた「始まったら気をつけたほうがいい曲」とは、アニメ『デスノート』の主題歌だったのである。そういうことでしたか!

こちらの男性もデスノート。海外のアニメファンってライブハウスに来てダイブとかモッシュとかやっちゃうんだね〜。部外者の分際であえて言うけど、ありがたいね!

ポーランドから来たというカップルは以前、ホルモンのライブへ行くつもりで来日したのだという。しかし残念ながらチケットが入手できず、今日が10年越しのリベンジらしい。「そのとき日本で『KUSOBAN』を買ったのさ」とのことだ。リベンジ成功おめでとう!

(※ 『糞盤』……ホルモンの2枚目のアルバム)

家族でご参戦のこちらは娘さんがファン。仲良しでいいですね〜。

ミーグリでもお見かけした英国紳士風の男性は「学生時代の友達に誘われて来たんだ」とのこと。その好奇心に敬服!

どことなくシャイニングみが漂う4人組は『Meshuggah』というスウェーデンのメタルバンドのファン仲間らしい。「そういうワケだからホルモンも好きなのさ!」と言われた気がしたが……え? どういうワケだから?? 英語力を鍛えて出直してきます。

最後はイギリス在住の日本人女性とハーフ男性(イギリスと日本)カップル。念願かなって今日が初・生ホルモンなのだそうな。腹ペコたちにも色んな人生があるよね……ってことで調査の結果、当たり前だけど各自様々なきっかけでホルモンを知ったことが判明しました〜! ロンドン腹ペコの皆さんありがとうございました!


・いきなり! 楽屋訪問

さて……ついにこの時がきてしまった。当サイトでは以前、ホルモン好きで知られるサンジュン記者がマキシマムザ亮君の単独インタビューに成功した経緯がある。私は今回そのコネクションをフルに活用し、 “楽屋ご挨拶” へ伺う約束を取り付けていたのだ。

が……! ほんの数時間前まで「タダで有名人に会えたらラッキー!」ってなノリだった私も、今は違う。ホルモンたちのこと、メチャクチャ大好きになっちゃってる。こうなると逆に緊張しちゃって会いたくない。むしろ逃げ出したい自分がいる。

しかし約束を忘れるような人たちであるハズもなく、約束の時は訪れた。震えながら楽屋へ続く階段を登る私。


そして10分後……私は死んだ。


あっ、うそです死んでないです。正確に言うと “今までダラダラと自堕落に人生を浪費していた自分” が死んだ……ような気がした。ホルモンの皆さんの並大抵じゃない人間力に触れ、自分がチッポケで情けなく思えてきたのである。

もっと綺麗な格好で来るべきだったし、もっと著名なライターとして出会いたかった。そうすればもっとマトモな受け答えができたかもしれないものを……私、明日からメッチャ頑張って芥川賞狙うわ。そんでまた取材させてもらうんだ……って思えた。この気持ち、まさにエコ!

なお頭の中が真っ白になりつつも、私は1つだけホルモンの皆さんに質問をぶつけてみた。実は会場で出会ったジャパニーズ腹ペコたちの話を聞くうち、彼らが共通して “ある心配ごと” を抱えていることが判明したのである。

それは「私たちが海外まで追っかけて来ていることに対して、メンバーはどう思っているのだろう?」というものだ。ホルモンのこと何も知らない身の上でホルモンと喋らせて頂いた手前、ここは彼らの気持ちを代弁するのが武士というもの。ってことでホルモンの皆さん、そこんとこ一体どうお考えなんでしょうか!?


亮君「プライベートな旅行を見られてるような気持ち(笑)」


おおっとォ!!! けっこう解釈に困る返答をいただいてしまった!!!! この “プライベートな旅行を見られてる発言” をジャパニーズ腹ペコはどう受け取るのか? 私をロンドンへ誘った腹ペコ・江藤さんに意見を求めてみよう。


江藤さん「なるほどね〜。いつもライブとかDVDとかで完璧なものを見せてもらってるからね。海外ファンとの交流の場を、うちらに邪魔して欲しくないのかも知れないね。分かるよ。日本人が海外へ来て、あまり出しゃばっちゃいけないよね……」


江藤さん「でも…………もしまた海外公演があったら絶対行くけどね」


・その意気や

さすがは俺たちの江藤さんである。ならば何も言うまい。今回、国内外の腹ペコたちと交流して強く感じたことは「あえて規模を縮小してでも、ファン全員に目が届くように活動されているのだな」という点だ。メジャーアーティストがなかなかできることではなく、ファンとしても非常に愛しやすいのだろう。

実は本ライブのMCでダイスケはんさん「日本では今、モッシュも、ダイブも、声出しも禁止されているんだ」ということをおっしゃった。かなり流暢な英語であるからして、海外腹ペコたちからは即座に大ブーイングが起こる。「そんなのライブじゃねぇよ!」といった感じか。

すかさず「でも、ここは日本じゃない。ロンドンだ」とダイスケはんさん。客席は「その通りや!」とばかりに拍手喝采。おそらく海外腹ペコたちにとっては「マジ日本ってルール厳しいのな(笑)」ってなもんだったろう。

だがしかし……私を含む会場の日本人客には、ハッと胸に突き刺さるものがあった。ノーマスクで客同士がモミクチャになるこの空間は、今の日本ではアウト中のアウト。もはや “コロナ後” のヨーロッパじゃ当たり前でも、日本国内では意見が割れている問題なのだ。

だから先ほどの「プライベートな旅行を見られてる気持ち」発言は、日本人ファンが海外ライブへ来て何かあったら心配だよ、という複雑な思いも含まれている……のではないかというのが個人的な解釈である。違ったらすみません。

あくまで個人的な見解としては「そろそろ日本、もうちょっと規制緩めてもいいんじゃない?」と思うんスけど……どうでしょ、日本の皆さん?

さてドキドキの楽屋訪問を終えて帰ろうとした私に、なんと亮君さん「サンジュンさんはお元気ですか」と話かけてくだすった。「サンジュンさんとポケモン友達なんでしょ?」ってマジかよ……3流ライターの生態まで把握してくだすっているだなんて、控えめに呼んで神。


だがしかし! 亮君、それは違いますよ。僕たち・私たちは……



『ホルモン友達』ですッ!!!!!!!!


長い人生で時として人は、苦手だったバンドのライブを見にロンドンへ行くことがある。そんな時はただ成り行きにまかせ、感じたままに進めばいい。さすれば新たな世界が開けようぞ……たぶん。とりあえず帰国したら夏フェス行きます! ありがとうホルモン! ありがとう腹ペコたち! 今日から全力で生きる!

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.