中国人ってめちゃくちゃゲームをする」というのが、私がここ半年の間に中国人と関わりまくって感じた驚きである。それもテトリスとかそういうカワイイやつではなく、パソコンのオンライン上で攻撃し合うガチなタイプだ。

ここ日本で「休日は基本的にゲームをやっている」などと聞くと、たとえそれが偏見だったとしても「友達いないのかな」「オタクなのかな」という印象を持つ人がいるのは事実だ。

しかし中国人は臆することなく「趣味はオンラインゲーム」と発言する人が多いし、そういう人に限って見た目はいかにもクラブで踊っていそうなイケメンだったり、エリートサラリーマンだったりすることが多い。

つまり、中国人にとってオンラインゲームをするのはとっても普通のことなのではないか。世界的にもゲームをスポーツと定義する動きがあるなか、もしかすると遅れているのは日本のほうなのかもしれない。

・絶叫する中国人たち

中国人とオンラインゲームの関係性を痛感したのは、昨年末に上海へ行ったときのこと。町歩きに疲れたところでネットカフェの看板を見つけ、休憩をしようとドアを開けたのだ。すると……


仕切り無っ!


隣と近っ!


パソコン立派っ!


「マンガが1冊も置いていない」「店員もゲームをしている」「店内で猫を飼育している」など他にもツッコミどころはたくさんあったが、何より衝撃的だったのは「ほぼ全ての客が画面に向かって絶叫していた」ことである。

中国人の声が大きくて怒っているように感じられるのは発音の関係だそうで、別に怒っているわけではないらしい。おそらく本人たちに絶叫しているつもりはないのだろう。

そう分かっていても、絶叫中国人大集合状態は日本人の自分にとってあまりにも脅威で、画像を1枚だけ撮って逃げるように退店してしまった。ライターの端くれとして一生の不覚である。

日本でネットカフェはどちらかというと休憩をしたりマンガを読んだり、ときに宿泊する場所であるが、中国のそれはただひたすらにオンラインゲームをするためにあるようだ。

絶叫中国人たちは、ゲーム上の仲間たちとスカイプなどで通話をしながらプレイしているらしい。そこまでは日本でもよくあること……ただし自宅の自室であれば。他人の前で気にせずにそれをやれるかというと、私には無理だ。ましてや絶叫は絶対にできない。文化の違いとしか言いようがないのである。

……という話を自宅近くのローソンの中国人バイト君にしたところ、「新大久保に中国人用のネットカフェがあるよ」と教えてくれたので、リベンジのつもりで行ってみることにした。


・コリアタウンがいつのまにか多国籍に

大久保は言わずと知れたコリアタウンである。しかしここ近年、新大久保駅から大久保駅までの区間は韓国というより多国籍なエリアになっていて、中でも中国の勢いが一番強い。大久保通り沿いには多くの中国料理店や中国人向け商店が並んでいる。

中国の食材やお菓子がだいたい手に入るし安い! 客も店員もほとんど中国人と思われる。

新大久保駅を境に大久保通りを東側へ行くと、途端に日本語が多く聞こえるようになる。韓国グッズを扱う店に群がる若い日本人女子たちで、平日だというのに歩道も歩けぬ混雑ぶりだ。やっぱり韓流人気って根強いんだなァ……。

中でもひときわ賑わっているのは伸びるチーズで大ブレイクした『ありらんホットドッグ』……

……のビルの3階にあるのが、目指すネットカフェ『良辰网咖』だ。中国語読みだと「リャンチェンワンカー」なのだが「よしたつネットカフェ」とか勝手に呼んでいいのかどうかは不明である。


・基本的には中国人専用

意を決してドアを開けると、中国語で叫ぶ声が無数に飛び交っていた。

めちゃくちゃ混んでる……!


受付へ行くと、当たり前のように中国語で何かを聞かれたので日本人だと伝える。すると店員の男性は困った顔をして「ここは中国人が来るところ」とカタコトの日本語で説明してくれた。おまけに「日本人はここへ行くといい」と、近くのネットカフェまでの道のりを地図に書いてくれる。いい人だ。

日本人はダメなんですかと聞いても「日本人は来ない」の一点張りで雲行きがあやしくなってきた。周りの客もこっちをジロジロと見ている。おそらく日本人が間違えて来ちゃったと思われている。ヤバイ、恥ずかしい、逃げたい。でもここで逃げたら弱い自分のままだぞ……。

友人にここを紹介されて来たのだ、友人は中国人だと食い下がると「ここで何をするの?」と聞かれた。しめた! 知ってるぞ! ここがゲームをするところだということは! 自信満々に「ゲームだ」と告げれば「何というゲーム?」と返されたのでこれは何かの試験なのだろうか。

それでも平静を装って『リーグオブレジェンド(通称LOL)』の名を挙げてみた。プレイしたことはないけれど、このゲームが「プレイ人口世界一」であることは知っている。さすがにこの店員も知っているだろうと思ったのだ。すると……

あっ、きみLOLやってんだ!? それならOK!」と男性店員は急に笑顔でシステムを説明し始めた。基準がサッパリ分からないが、入店資格は国籍でなくゲームを愛する心なのかもしれない。


・日本要素が皆無

1000円を支払って会員になると、1時間200円という安さだ。非会員は1時間400円。深夜だと1時間100円のお得なパックプランもある。

ただしフリードリンクなどはなく、持ち込むか購入する必要がある。受付で売られているスナックやジュース類は全て中国の製品だ。食べ物のメニューを掲げて何かつぶやきながら店内を練り歩くおじさんがいて、聞けばお弁当屋さんだという……。驚きの連続である。

喫煙エリアには「タンを吐かないで!」という張り紙があり、道でタンを吐く男性が多めな中国をリアルに再現……というか、ここはもう中国な気がしてきた。


・中国人が優しすぎた

広い店内は100席以上あるだろうか。見渡す限り日本人も女性もいない模様。案内された席は中国人男性と中国人男性の間で、もちろん2人とも音声チャットをしながらゲームに熱中している様子。「場ちがい」という表現がこれほどしっくりくる場面もあまりない。

パソコンの文字は全部中国語表記だが、Googleなどが普通に見られるので、回線は日本のものであるようだ。ちなみに中国本土でGoogleは基本的に閲覧できない。閲覧できないのに中国語というのも不思議な感じがする。

先ほどの男性店員がゲームのログイン画面を開いてくれた。いい人だ。ここからは地道に翻訳アプリを使いつつ、今日のところはゲーム起動までいければ御の字だろう。


……


……


男性店員が横から離れねぇ!!


どうやら中国語の読めない私を案じて、ゲーム起動まで見守ってくれるつもりのようなのだ。メチャクチャいい人だ。澄んだ目をして「さあ、ここにアカウントを打ち込んで」と私を見つめている……これは大変なことになった。

アカウントなんて持っていないことがバレれば、店から叩き出されるかもしれない……万事休すか……!?


しかし次の瞬間、「アカウントを作成しましょうか?」という声がした。右隣でゲームに熱中していた青年である。私の状況を察して助け舟を出してくれたのだ。

するとどうだろう。左隣の男性も「このゲーム初めて?」と話しかけてきたではないか。もちろん日本語で。中国人といえど日本語の話せる人が多いのは、考えてみれば当たり前のことである。やっぱりここは「限りなく中国に近い日本」なのだ。

しまいには周りにいた中国人も集まってきて、アカウント作成から技の出し方まで教えてくれた。世間話で盛り上がって時間を延長してしまったほど、中国人たちはフレンドリーだったのだ。逆の立場だったとき、果たして自分に同じことができるだろうかと考えさせられる。

なお、私が実は全然ゲームができないとバレた瞬間、男性店員の彼は「そうだったのぉ〜!?」と笑っただけだった。最初から正直に言っておけばよかったよ!


・日本で頑張る中国人のサロン

仲良くなった中国人たちの話によると、この店に来るのは留学生が多いとのこと。ひとりっ子政策の影響などにより、富裕層でなくとも「子供に苦労させたくない」と考える親が多く、アルバイトする学生が減っているのだそうだ。そうして暇を持て余した留学生が昼間からここへ来て、ゲームしたり仲間と話したりしているらしい。

「日本語を勉強しに来ているのに中国人同士でつるむのは、あまりよくないんだけど……」と苦笑いする若者たちは、ただゲームに興じているのとは少し違う気がした。ここは遠い異国で過ごす寂しさを埋めるサロンの役割も果たしているのかもしれない。

動機をごまかして入店した自分が言うのもなんだが、あまりにも興味本位で日本人がここを訪れるのも、中国人たちの憩いの場を荒らすようでなんだか申し訳ない気がする。しかし日本人お断りというわけではないので、ゲームが好きな人や中国人とおしゃべりしたい人は一度訪れてみると面白いのではないだろうか。ちなみに私は友達ができたので堂々とまた行くもんね!


ところで、帰り道にとんでもないビルを発見した。

なんと日本式、韓国式、中国式のネットカフェが同じビルに混在しているのである! 恐るべき新大久保! 調べると看板にある『PC방』というのは韓国語でネットカフェを意味するものらしいので間違いない。韓国スタイルのネットカフェとは一体……? 追って潜入を試みたいと思う。

・今回ご紹介したお店の詳細データ

店名 良辰网咖
住所 東京都新宿区百人町2-1-2 K-PLAZA 2号館 3F
時間 24時間営業

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.