「あれ買って〜!」「お外が見たい〜!!」スーパーや電車のなかで大暴れする子供たち。今日も今日とて世界中の大人が、そんな子供たちを必死になだめようとしている。説得を試みたり、声を荒げて怒ったり、担ぎ上げて連れて行ったり……でも大人だって人間。落ち着く気配のない子供を前に、大泣きしたいときだってあるはずだ。

今回もアメリカの空港で、大暴れする子供にくたびれ果てた母親が、突然泣き崩れてしまったのだとか。だがその直後、素晴らしい出来事が起こったのだ……。Facebookで話題となっている、ある女性の体験談をご紹介したい。

・かんしゃくを起こす子供の横で、泣き始めた母親

ベス・ボーンスタイン・ダニングトンさんが、ロサンゼルス国際空港で遭遇したというこの出来事。搭乗ゲートで飛行機を待っていた彼女の目の前で、1歳半くらいの男の子が大暴れしていた。叫びながら走り回り、ついには床に横になって「飛行機に乗りたくない」とダダをこね始めたそうだ。

こうなった子供をなだめるのはとても大変。母親が抱き上げて静かにさせようとしても、かんしゃくを起こした子供は手がつけられない状態だったようだ。そして「まだ若く、ひとりで子供の世話をしていて、明らかに妊娠していた」という母親は、気持ちがいっぱいいっぱいになったのだろう。言うことを聞かない子供の横に座りこみ、両手に顔を埋めて泣き始めてしまったのだ。

・女性たちが起こした素敵なこと

こんな場面で、あなたはどうするだろうか? 見て見ぬ振りをする? スタッフに報告する? しかしここでは、そのどちらでもないことが起こった。ダニングトンさんはこう続けている。

「次の瞬間、とてもゴージャスなことが起こったの。その場に居合わせた6、7人の女性が、泣いている親子に近づいた。知り合いでもなんでもない、赤の他人同士である女性たちが、みんなで一緒に親子を取り囲むようにしてひざまずいた。そしてそれぞれに、親子を慰め始めたの」

「私は子供に子守唄を歌い、別の人は持っていたオレンジをむき始めた。ある人は鞄の中からオモチャを取り出して子供をあやし始めた。母親に水をあげる人もいたし、子供に飲み物を与えるのを手伝っていた人もいた」

・ダニングトンさん「この出来事を一生忘れない」

女性たちは事前に打ち合わせを行った訳でも、知り合いだった訳でもない。ある親子のピンチを目の当たりにして、“助けなければ” と体がとっさに動いたのだ。その後、親子は落ち着きを取り戻して飛行機に搭乗し、一方の女性たちは何事もなかったかのように、それぞれが座っていた席に戻っていたという。

ダニングトンさんはこの体験談を「使命を与えられた女性の輪は世界を救うことができる。私は、この出来事は一生忘れない」と締めくくっているのだった。

・「恥をかきたくないから……」という理由で見て見ぬ振り

Facebook上では体験談を読んだ人びとから、「読んでいて涙が出た」「やっぱり助け合わなきゃね」といった感想が多数寄せられていた。筆者も素敵だなと思ったが、同時に「私にはこんな行動がとれるのか?」と我が身を振り返ってしまった。

例えば、誰かが発作を起こしたりしていたら、反射的に助けようとするだろう。けれども今回のように、端から見てその人が助けを求めているかどうか分からない場合は、「迷惑かも」「放っておいてほしいかも」などと考えすぎて、どう行動するか迷ってしまう気がするのだ。いや、「余計なおせっかいだと思われて、恥をかきたくない」という自己保身で……と言った方がより正確かもしれない。

これまでも私は、そんな気持ちから困っている人を助ける機会を何度も逃してきた。だがダニングトンさんの「私は、この出来事を一生忘れない」という言葉を読んで、誰かを助けられる可能性があるなら恥をかいてもいいじゃないか、と思った。

なにより、助けを求めている訳ではないけれどちょっと困っているときに、誰かが親切に助けてくれようとしたら、ほとんどの人が嬉しくなるのではないだろうか。そうやってちょっとした親切を見せあえる世の中の方が、“より良い世界” と言えるのではないか……などと思った次第だ。

参照元:Facebook(英語)
執筆:小千谷サチ
Photo:RocketNews24.

▼こちらがダニングトンさんの体験談だ。