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相手を痛めつけ、尊厳を踏みにじり、肉体的・精神的に苦しめる「拷問」。もちろん……もちろん、自分は関わりたくないものだし、この世から抹消すればいいとも思っている。それでも、なぜだろう? 正直言って、ほんの少しだけ気にもなる……きっとそういう人も多いだろう。

私(筆者)もそんな一人だが、10代で出会って以来、心に住み着いてしまった2つの拷問があるのだ。あれは……一体……なんだったんだろう? と今日も空を見上げては、ぼんやりと思い出しているのだ。

・中学生だったか、高校生だったか

あれは中学生時代か、高校生時代か。ともかく私は若く、まだ10代の “花盛り” と呼ばれる年齢だった。けれども、多くの少年少女がそうであるように、なんだか暗いものに惹かれることもあった。

当時学校でも、太田出版の『完全失踪マニュアル』や『完全自殺マニュアル』、ねこぢるさんや山田花子さんのマンガなんかが回し読みされていた様に思う。みんな若く、日常では目をそらしがちな事柄に興味を抱いていたのだ。

・立ち読みした「世界拷問辞典」

そんな流れで出会ったのが、一冊の拷問の本だ。私はその本をチラリと立ち読みしただけなので、正確なタイトルは忘れてしまったが、「世界拷問辞典」のような内容だったように記憶している。そこでは、古今東西の拷問手法がイラスト共に紹介されていた。

もちろん残酷極まりない拷問も登場するのだが、一方で「こんなのが拷問になり得るのか」とビックリするほどシンプルな手法も掲載されていた。そんな中、特に目を引いたのが『毛染め』と『毛抜き』といった拷問方法だ。以下で説明したい。

・髪の毛を2色に染める拷問

まずは『毛染め』。これは髪の毛の半分を、別の色に染めるだけの超シンプルな拷問。本の中のイラストでは、真ん中わけの長髪の片側を金色に、片側を黒色に染められてションボリする男性の姿が描かれていた。私の記憶が正しければ、 “人間の尊厳を奪うことが目的” や “美意識の冒涜(ぼうとく)” などと説明されていたように思われる。

確かに勝手に髪の毛を染められるのは嫌だが、串刺しや八つ裂きなんかに比べれば、こんなの痛くもカユクもない。

・鼻の下の産毛を抜く拷問

そして次が、鼻の下の毛を抜くだけの拷問『毛抜き』だ。本では “鼻の下のウブ毛を抜くことはとっても痛いので、拷問にもなりえた” などと説明されていたように覚えているが、これにもビックリ。なぜなら当時の私は、顔の産毛のお手入れの際に、鼻の下の毛も抜いたことがあったからだ。

「ああ確かに、鼻の下の毛を抜くのは痛かったよなあ」と妙に納得しながら、このようなチョットした方法でじわじわと相手を痛めつけて行くのも、一つの拷問のパターンなのかもしれないと腑に落ちた気がしたのである。

・私たちは日常的に拷問している?

そしてこんなに簡単なことが拷問になり得るのなら、もしかしたら私たちだって知らず知らずのうちに、日常ベースで拷問行為をしているのかもしれない……と当時の私は静かに思ったのだった。

というわけで、今でも髪の毛を複数の色に染めている人や、自分の顔の産毛のお手入れをしているときなど、ふいに頭の中で「拷問」という言葉が浮かぶ。

ちなみに上記の “拷問辞典” なるものを読んだのは、すでに15年以上昔のこと。記憶違いの部分もあるかと思われるので、拷問に詳しい方がいたら正しい情報を教えていただきたい。

執筆:小千谷サチ
Photo:RocketNews24.