友人とローマ料理を食べられるお店に行った時のことだ。メニューに「狩人風煮込み」というものがあった。なんだろう、狩人風って……。詳しくはわからないが、敢えて店員さんに聞くことなく、注文してみることにした。

名前から想像するに、きっと豪快な料理だろう。そんな想像をして待っていると、えらくオシャレなものが登場し吃驚(きっきょう)。それはそれは美味しく、さすがローマは違うなと思ったものである。

しかし狩人風という名前からして、もっとこう野性味あふれるものであっても良さそうなものだ。そう感じた記者は、オリジナルの「狩人風煮込み」を考えてみることにした。


・カチャトーラのことだった

お店でいただいた「狩人風煮込み」は、骨付き羊に多分バルサミコ酢を用いたソースがかかっていた。ソースにたっぷりのトマトと干しブドウ、ハーブとスパイスなども入っていて酸味と甘みが羊にぴったり。

見た目も美しく、とてもシュッとしていた。もちろんそのお店ならではのこだわりが反映されているのだろうが、味もシュッとし洗練されたものだった。


なんでも猟師が仕留めたウサギなどをトマトやハーブなどで煮込んだ料理、がはじまりであるらしく日本ではカチャトーラ(カッチャトーラ)と書かれることが多いようだ。

カチャトーラならば聞いたことがあり、少し前にも松屋で出していた記憶があるし、なんならその松屋のカチャトーラを再現してみたこともあった。なるほど、あれも狩人風煮込みだったのか。

イタリアはローマで採れる食材を使うと、狩人風はそのような仕上がりになるのだろう。とにもかくにも、ローマにおいてポイントはトマトのようだ。



・猪と味噌を使って

さて。オリジナルの狩人風煮込みを作るのであれば、狩人のキャラ設定が必要であると考える。きっと彼もしくは彼女は、少し人里離れたところに住んでいて自給自足をしているだろう。

家の前の庭で野菜を育てているだろうし、日陰でキノコなんかも育てているかもしれない。たまにやって来る小動物は獲らずに良好な関係を築いてそう。

何時代だよ……というツッコミはさて置き、そういうものであるとする。おそらく味付けは身近にある調味料、味噌などを使って行うことになるだろうし、メインとなる肉は鹿や猪あたりだろうか。

鳥や豚でもいいのだが、たまたま猪肉が手に入ったので、今回はそちらを使ってみることにする。猪のほかに使う食材は、季節の野菜だ。



・作ってみる

猪肉を塩水で良く洗い、そのへんの野菜と椎茸を鍋に投入。味噌と砂糖を出汁で溶いて、具材の上から注ぎ蓋をして、火にかける。猪鍋の、汁が少ない版みたいなものである。


具材がクタっとなったところで完成の、なんともまあ簡単で雑な料理だが、このくらいザクっとしているほうが自分の中での「狩人風」像に当てはまる。


そこまで適当じゃないやい! と、その道のプロからはお叱りを受けそうではあるものの、あくまでイメージなのでお許しを。そんな独断と偏見に満ち溢れた、こちらの狩人風煮込みの気になる味はというと……


けっこう美味しい!


煮込み過ぎても固くならない、脂ののった猪肉が食べ応えがあって良い。味噌との相性も悪い訳がなく、野菜もたっぷりとれて体にもいい気がする。


量もそこそこできるので、狩人はこのひとメニューで何日か食いつなげそうだ。これはオリジナル狩人風煮込み、正解はないが良いセンいっているのではないだろうか。

しかしローマの狩人風煮込みから随分遠くに来てしまった感は否めず、かなり和風な仕上がりだ。料理には自分が住んでいたり育ってきた環境が色濃く反映されるものだなあと、気付きを得た次第である。

執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.