気が付けば、私(佐藤)は格安イヤホンを買い漁り始めていた。それというのも、ダイソーのハイレゾ対応イヤホンのせいである。税込550円という価格を疑いたくなるほど高音質で、同業他社(スリーコインズ・キャンドゥ・セリア)を寄せ付けないほどのクオリティなのである。
もしや今、格安イヤホンの市場は激アツなのでは? 実態を把握するために、買い漁っているのである。今回はオーディオメーカー「JVCケンウッド」の税込821円のイヤホンの音を聞いてみたいと思う。はたして、老舗オーディオブランドはダイソーに勝るのか?
・ダイソー vs JVCケンウッド
以前から繰り返しお伝えしている通りに、ダイソーのハイレゾ対応イヤホンは圧倒的だ。一言でいえば「価格破壊」、100円ショップで販売しているのがおかしいと思えるほど音が良い。
以前なら2000~3000円で売っていても不思議ではないクオリティのものを、1000円切る価格で提供している。従来品は軒並み値崩れするんじゃないか? と思えるほど、高いコストパフォーマンスを実現してしまっている。
比較するJVCケンウッドは、日本ビクター株式会社(JVC)と株式会社ケンウッドが合併したオーディオ機器メーカーで、それぞれの会社が培ってきたブランド(JVC・KENWOOD)は現在も引き継がれている。
今回購入したイヤホンはJVCブランドの「HA-FX6-T カナル型イヤホン」だ。正規価格990円のものをAmazonにて821円で購入した。
この製品は2021年の発売で、「オーディオビジュアルアワード」(VGP)のインナーイヤー型ヘッドホン(2500円未満)部門で受賞歴を持っている。受賞イヤホンとあれば、音質はかなり期待できる。ダイソーの牙城を崩せるのか!?
まずパッケージを見て、個人的にこのイラストが気に入った。側面にステレオミニプラグが描かれている。最近は接続端子がLightningだったり、USB Type-Cだったりしてややこしい。こうして箱に描いてあれば、手に取った時に迷わずに済む。
中身は、製品本体とイヤーチップが2種類(小・大)。それに説明書があるのみだ。
イヤーピースは厚紙に差し込んである。プラスチック製の容器を使っていないところに好感が持てる。低価格ゆえの工夫だと思うけど、余分なゴミがなくていいね。
イヤホンの形状はミニマルでとってもスリム。寝転がっても快適に使えるように、出っ張りのないデザインを採用している。寝ホンとしても使えるかも。
・聞き比べ
さて、音質を聞き比べてみよう。まずは基準の音として、iPhone純正の「イヤーポッズ」で音楽を聞く。今回は『スター・ウォーズのメインテーマ(帝国の逆襲バージョン)』を聞き比べる。作曲はジョン・ウィリアムズ、演奏はロンドン交響楽団だ。
イヤーポッズはすべてにおいて平均的。何か突出した特徴があるわけではない。可もなく不可もない、無難なド真ん中の音だ。
強いて例えれば、俳優全員棒読みで抑揚のないストーリーが淡々と続いていくといった感じ。間違いはないけど、面白みにかける。事務的に戦うルークとベイダーの姿が脳裏に浮かんでしまう。
次に現状の王者ダイソー「7301」。この製品はとにかく高音の音抜けがいい。立ち上がりもよく、曲を再生した瞬間の1発目からスカーン! と鼓膜に高音が到達する。
曲の冒頭のジャーン! からポテンシャル全開。トランペットのハイトーンが耳に突き刺さる。高音の迫力は十分すぎるくらいに出ているんだけど、低音に少々物足りないものがある。
物語でいえば、アクションシーンはすごいのに、それ以外の部分がどこか不自然で、作品への没入感を削ぐ感じ。戦う時だけ異常にテンションの上がるルーク・スカイウォーカーといったところだろうか。
そして今回のJVCイヤホン。オーディオメーカーの実力は100均を超えるのか?
音の立ち上がりと高音域の音抜けは、ダイソーに分(ぶ)があった。さすがハイレゾ対応だけあって、高音域には異常なくらい力を発揮していて、JVCよりも秀でている印象を受ける。
だが、中低音の豊かさはJVCの方が優れている。この曲はトランペットアンサンブルが象徴的ではあるけど、それを支えているのが他の低音金管楽器である。豊かな低音があってこそ高音が映えることを、このイヤホンは教えてくれる。非常にオーケストラルな響きだ
ダースベーダーの存在があればこそ、ルークの活躍が活きるというものである。
そんなわけで、今回の聞き比べはJVCケンウッドが音響メーカーの意地を示したといっても良いだろう。まだ検証した製品は数少ないが現状のトップ3を記載しておこう。
1.JVCケンウッド「HA-FX6-T カナル型イヤホン」 税込821円
2.ダイソー ハイレゾ対応イヤホン「7301」 税込550円
3.スリーコインズ「高音質イヤホン(低音域タイプ)」 税込550円
このランクは随時更新していきたいと思う。皆さんの音楽ライフの参考になれば幸いである。
参考リンク:JVC、Amazon
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24