何の変哲もない日常の世界。だが、そう感じるのは日常フィルターがかかっているせいかもしれない。我々は普段、無意識のうちに自分に関わりのない情報をシャットアウトして生きている。本当は見えていたとしても認知できないのである。

そう感じたのはJR御徒町駅の高架下のアジア食材店にフラッと入った時だ。パッと見ただの狭めのスーパーなのだが、1歩中に踏み込むと外国人しかいない。ヒジャブとかニカーブの人が買い物をしていて中は完全に南アジアであった

散歩する範囲にこんな場所があったとは……! 高揚を抑えつつ店内を物色していると、色んな魚が雑多に入っている冷凍庫に「コイ」という記載を発見した。!?

・買ってみた

商品袋の裏側の詳細を見ても品名には確かに「THAI KOI」と書かれている。しかし、そもそもタイに鯉はいるのだろうか。そこでGoogleで「タイ 鯉」と検索したところ、タイで空前の錦鯉ブームが起きているというテレ朝newsの記事がヒットした。

鯉ブームだから食用にも流通してる的な感じなのかもしれない。日本も地域によっては普通に鯉を食べるところもあるしな。ありえる範囲である。ただ、食材として売っているのは日本では珍しいのでとりあえず買ってみた。税込980円と書かれていたが890円だった。

・鯉の味

「THAI KOI」は氷漬けの魚が丸々6匹くらい入っているようだ。袋から出してみるとサイズは15cmくらいだろうか。いまいち鯉に見えないのは、下処理で頭とかヒレが欠損しているせいかもしれない。言われてみたら鯉の胴体ってこんなんだった気もするしな

さて置き、調理は自分でする必要がある。そこで「鯉 食べ方」と検索すると、『鯉こく』というのが一般的らしい。これは簡単に言うと、鯉の味噌煮込みなのだが、鯉は身が泥臭いけど味噌を使うとその匂いが消えるのだそうな

・塩焼きにしてみた

ただ、食べたことがないため泥臭い魚の身の味というのがよく分からない。そこで鯉の身の本来の味を知るためにも、1匹塩焼きにしてみた。

とりあえず、目の前に置いた段階では臭さとかは感じない。どちらかと言うと、山の旅館でたまに出てくる鮎の塩焼き的な淡水魚っぽい香りが強い。ウマそうだ。ネット情報だと泥臭くて食べにくいらしいが、それってどんな味なのだろうか? 食べてみたところ……

思てたんと違う。臭み自体が感じられず、シンプルに淡水魚っぽい白身の味がする。かと言ってパサついているわけでもないため、その豊潤な身の味は塩とめちゃくちゃマッチしていた。山の恵みを感じる。しかも、皮がちょっと鶏皮みたいな味がして言うならば珍味だ。

・謎が謎を呼ぶ

いくら何でもネット情報と違いすぎだろ。ひょっとして、タイの鯉は味が違うのだろうか? 身が泥臭くなくなるような餌で養殖してるとか。この情報が氾濫した時代に、ネットにない情報を見つけたかもしれん。

興奮してインスタグラムに投稿してしまったところ、フォロワーの1人から「ティラピアの可能性もあるのでは?」とコメントが寄せられた。さすがに体型が違いすぎるためティラピアではないと思われるが、あらゆる意味で私が知ってる鯉っぽくないことは確か。

でも、店にも商品にも「コイ」って書いてるしな。翻訳が間違ってる可能性ってあったりするんだろうか。そこで注目したのが袋の正面に現地の言葉で書かれていた『কইমাছ』という文字だ。おそらく魚の名前かと思われるのだが、Google翻訳で鯉をタイ語に翻訳すると「ปลาคาร์พ」と表示される。そう、文字の形が違うのだ。

謎が謎を呼ぶ。だが、読み方が分からないため打ちこんで調べることができない。そこで袋正面の画像をGoogle画像翻訳で翻訳してみると、日本語でこう表示された。「魚はどこですか」と。こっちが聞きたいわ!

・ついにたどり着く

うーん、無理か。固有名詞も全部翻訳してしまっている感じがする。それではこれならどうだろうか? 検出する言語を「タイ語」に設定した上で、画像のテキストをコピーすることで単語を検索するのである。


試しにGoogleの検索窓にコピペしてEnterを押してみたところ、ついに同じ形の文字の魚の情報が出てきた


タイ語のwikipediaを日本語に翻訳してみると、そこに書かれていた魚の名前は……


「カイ」

wikipediaによるとアナバスの仲間で、バングラデシュと西ベンガルに生息しているらしい。ちなみに、「カイ」という言葉は「どこ」とか「何処に」とかいう意味があるらしく、画像翻訳が「魚はどこですか」という翻訳になったことも頷ける。

・タイのコイ

しかしながら、表記の間違いかと言うとそういうわけではない。Google翻訳で『কই』の発音を確認すると、タイ語では「カイ」と聞こえるが、ベンガル語だと「コイ」と聞こえる。

つまり、確かにこいつはコイなのだ。発音も日本語の鯉と同じ。しかし、全くの別モノ。タイのコイは塩焼きにしてもウマかった。現場からは以上です。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼結論、コイは塩焼きでもウマイ