大阪でローソンのバイトをやっていたことがある私(中澤)。客は大体は普通の人なのだが、それでも虫の居所の悪い客に怒鳴られることが月に1度や2度はあったし、犯罪で全国紙に載ったと噂の客もいた。世の中、色んな客がいるものである

もし、その時にオラオラ系のおっちゃんに「この店に○○さんっておる?」と聞かれようものなら、いるとかいない以前に腫物を触る感じの対応になったに違いない。それゆえに、先日見たある出来事が非常に心に残っている

・絡まれる兄ちゃん

その出来事とは久しぶりに大阪に里帰りした時のこと。あるたこ焼き屋で店内飲食の順番待ちをしていたところ、店頭でテイクアウト用を焼いている兄ちゃんに話しかけるおっちゃんが目に入った。

50歳くらいだが茶髪っぽい短髪でアロハ的なシャツ。フラフラと歩いてきて第一声が「この店に○○さんっておる?」だった。これは明らかに怪しい雰囲気。私が店員だったら一回聞こえなかったフリをするかもしれない

・ここからいく

だが、怪訝な態度は一切見せずに「誰さんですか?」と正確に聞き直して中にいる人に「○○さんっていますかー?」と聞く兄ちゃん。そして、おっちゃんに「すみません。助っ人ですので知らなくて」と笑いつつ、「○○さんいないそうです」と答える。

その流れるような対応にも感心したのだが、真骨頂を見たのはその後。「おかしいな~」と残念がりながら、まだ店の前にいるおっちゃんに「お知り合いスか?」と聞く兄ちゃん。え? ここから話広げるの?



・さらにいく

すると、せきを切ったように話し出すおっちゃん。九州で世話になった人で、道頓堀のたこ焼き屋で働いていると聞いたと。で、来たついでに応援に来たらしい。「あ、今日九州から来てはるんですか」とさらにいく兄ちゃん

ちなみに、おっちゃんはたこ焼きを買っていないのだが、トークがひと盛り上がりした後満足して帰っていくおっちゃんに「道頓堀楽しんでくださいね~」と言葉をかけていた。コミュ力やべえ

日常的な光景ではあるのだが、自分に置き換えると感動せざるを得なかった。客ですらない人にもちょっとした満足感を与えているだけでなく、流れる水のごときソツの無さだったのである。



・たこ焼きより大阪を感じた

そこで思い出したのが25年前の高校時代のこと。私は田舎っ子だったため、道頓堀とかほとんど行ったことがなかったのだが、市内のクラスメイトたちは道頓堀のたこ焼き屋をリスペクトしていた。なんならコミュ力お化けの同級生は修行のため弟子入りしたいとまで言っていた気がする。

上京して20年ほど。すっかり時代は変わってしまったが、道頓堀のたこ焼き屋には変わらない魂がある。そういう意味で、たこ焼き以上に大阪を味わえた出来事であった。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.