鮭児(けいじ)。幻の魚である。なんでも鮭1万匹に対して1匹程度しか獲れないらしい。それだけに味はめちゃくちゃ美味く、超高級魚として取り引きされている……とロケットニュース24に書いてあった。

記事を執筆した中澤星児は、北海道の小樽で鮭児を食べたのだとか。羨ましい。私も食べたい。だけど、小樽まで行くのは厳しいな……と思っていたら、東京駅の寿司屋で鮭児と巡り会った。ビビった。

・サーモン系いろいろ

その寿司屋は「札幌魚河岸 五十七番寿し」以前の記事でも紹介したように、2023年8月4日に東京駅に出来たばかりのお店だ。


ちなみに、私が訪れたときは鮭児の他に「時しらず」や「本ます」なんかもあった。サーモン系の寿司といったら炙るとかアボカドと合わせるくらいしか知らなかった身としては、このバリエーションだけで軽く感動してしまう。


今回は贅沢にもサーモン系を食べ比べて味の違いを探ってみよう。というわけで、普通のサーモン(1貫400円)、時しらず(1貫600円)、そして鮭児(1貫3500円)を注文。出てきたのがこちらである。


もっとも色が濃いのが普通のサーモンで、鮭児と時しらずはちょっと薄め。普通のサーモンがマグロの赤身だとしたら、鮭児と時しらずはトロと言ったところだろうか。

色の違いから察するに、おそらく鮭児と時しらずはトロトロ系。対して普通のサーモンは身の旨味がしっかりと感じられる系。そう予想して、まずは時しらずから食べてみることに。


最初に感じたのは、思ったよりあっさりしているなぁってこと。適度なコリコリ感もあって、マグロのトロとは食感がかなり違う。脂の乗ったタイという感じ。ビジュアル的に完全なるトロトロ系かと思っていたので、意表を突かれてしまった。



では続けて、普通のサーモンいってみよう。いただきます!


え?


フワッフワッ!


あまりに柔らかい食感にやや混乱した。もっとギュッとしていると思ったからだ。同時に、「普通のサーモンでこれだけ美味かったら、鮭児はどうなってるんだ?」という期待と、「味の違いを感じ取れなかったらどうしよう」という不安が生まれた。

恐らく、本記事を読んでくれている読者のほとんどは「鮭児はマジで別格。普通のサーモンとは全然違う」的な結論を予想しているし、期待しているはず。

かく言う私もそうだ。食べ比べる前から「鮭児と普通のサーモンの間には “唯一無二のトロトロ感” という名の壁がそびえ立っていた」的な結論になるんだろうなぁ……と思っていたのが正直なところ。

なのに、このサーモンはどうだ? 十分に柔らかいじゃないか。もはやエアリー。羽毛布団と言ってもいい。これを超えるフワフワ感となると、綿あめくらいしか思いつかない。

ってことは、鮭児は綿あめクラスなのか? だからこそ幻の魚なのか? だからこそ1貫3500円なのか? と思いながら、鮭児を頬張る。すると……


めちゃくちゃ柔らかかったのだが、それだけではない。フワフワ感の中に適度なコリコリ感もある。というか、フワフワ感だけなら、普通のサーモンの方が上なのでは?

また、めちゃくちゃ脂が乗りまくっているわけでもない。それこそ過去に記事で紹介した「アブラボウズ」と比べたら、鮭児の脂の乗りは随分と行儀がいい(アブラボウズのヤバさを考えたら当たり前だが)。

もちろん鮭児は適度に脂が乗っているし、普通のサーモンとは系統が違う。ただ、私はてっきり「鮭児=フワフワ感とトロトロ感にステータスを全振りした食べ物」と思っていたから、鮭児のバランスの良さは予想外だった。



これは困った。どうやって結論づけようか。どっちが美味いかと聞かれたら「好みによるのでは?」と思ったのが率直な印象で、上で述べたような違いしか分からない。

うーん、仕方がない。お金はかかるが、こうなったら鮭児をもう1貫食べるしかなさそうだ。そう思って注文用のタッチパネルを開いたら……


売り切れ!


どうやら、私の頼んだ鮭児がラス1だったもよう。幻の魚だけに、恐らく入荷量も多くないと思われる。1貫だけでも食べられたことがラッキーだったのかもしれない。


・結論

というわけで、この状況でまとめるしかなさそうだ。結論としては……


「鮭児と普通のサーモンの間にあるものを探ろうと思っても、普通のサーモンがレベル高い場合はなんだかよく分からなくなる


──としたい。

まぁ、「お前の味覚がクソだからそうなったんだろ!」と言われたら返す言葉もないが、これもまた1つの検証結果。ある意味で、幻の魚らしい結論……と言えなくもないかな?


・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 札幌魚河岸 五十七番寿し
住所 東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅八重洲北口改札外 グランスタ八重北 黒塀横丁B1F
時間 11:00~23:00

参考リンク:グランスタ「札幌魚河岸 五十七番寿し
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.


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