埼玉県川越市には、長さ95cmにもわたる「元祖 日本一なが~い黒糖ふ菓子」という銘菓があると聞く。どうやって食べるのかはともかく、話題性のあるお土産として根強い人気らしい。

しかし、麩菓子(ふがし)はかつて駄菓子屋の主力商品だったほどポピュラーな伝統菓子。川越のみならず日本全国で作られている。

重要無形民俗文化財「なまはげ」で知られる秋田県にも、規格外にロングな麩菓子があった。その名も……


・「なまはげの○んこ」(参考購入価格:税込615円)

長さはおよそ85cm。元祖には負けるものの、持ち運びに困るくらいには十分大きい。ちょうど子ども用の木刀や竹刀を想像していただけるとよい。もし筆者が小学生だったらチャンバラをしたくなるサイズである。

直径はおよそ5cm。


黒々と光るボディ。


そしてこのネーミングである。「なまはげの○んこ」とは、いったいどういう意味だろう、さっぱりわからない。

ちなみに「なまはげ」というのは秋田県男鹿地域の伝統行事に登場する神様。「泣く子はいねがー!」と家々を訪問し、怠け者や悪童を懲らしめるとされる。

刃物をもち、怒鳴り声をあげて練り歩く姿から、「巨体」「力強い」「人並み外れた」というイメージがあるのかもしれない。そんな「なまはげの○んこ」なら規格外のサイズに違いない、という発想か。

このシュールさ、意味深ぶり、少年のようなネーミングセンス、どれをとっても川越を凌駕しているだろう。

ただし筆者のものは帰路の車に揺られたり、自宅で置き場所に困って壁に立てかけていたところをロボット掃除機に激突されたりし、何カ所か折れてしまった。無念。

なお、ほかにも秋田には「秋田犬の鼻くそ」「秋田犬のふん」「なまはげの鼻こび」といった、これまた下ネタセンスの光るお土産が存在する。


秋田県の名誉のために弁明しておくと、類似の土産物は「エゾ鹿のう〇ち/北海道」「おさるの鼻くそ/大分県」「鹿のふん/奈良県」など枚挙(まいきょ)にいとまがない。

いったい誰が買うんだ、と思うが、全国津々浦々にあるところを見ると人気なのだろう。「私の地元にはそんな下品な物ありませんのよ」という方も一度調べてみるとよい。


・食べてみた

もちろん食べてみた。自宅で旅を思い出しながら食べるところまで含めてお土産である。

表面は糖蜜でコーティングされ、シャリシャリのサックサク。黒糖のこっくりした甘さがクセになる。フレンチクルーラーのシャリッとした部分「グレーズ」にも似ている。

そして中心部は驚くほど繊細で軽やかな食感だ。これに比べたらラスクやクッキーなんて「なんてガサツな食べ物だ!」と思ってしまう。完全にネタ商品だと思っていたが、かなり美味しい。

しかし


食べる前からわかっていたことだが


10cmくらいで飽きる。


・麩菓子アレンジレシピ

知名度からいくとおそらく川越版だと思うが、「余った麩菓子どうしよう……」というのは人類共通の悩みらしく、インターネット上にはアレンジレシピが存在。

それらを参考にバターで焼いてみた。


これは美味い! バターの塩気と、黒糖のコクのある甘さが絶妙にマッチ!! 外はサクサク、中はしっとりフワフワと、まさにフレンチトーストのような食感だ。

しかし、全体的に温まったせいか糖度がより強く感じられ、脳天を突き抜けるような強烈な甘さだ。

バターがいけるなら醤油はどうか。日本ではすき焼きの割下(わりした)などで砂糖&醤油の組み合わせはお馴染み。食べ慣れた煮つけのような、おかず系の味になるのでは。

たしかに甘塩っぱくなった! しかし塩気が甘味を引き立て、これも脳天を突き抜けるような強烈な甘さだ。おまけに醤油は醤油、黒糖は黒糖とそれぞれが独立していて、まったく味がフュージョンしない。

意外な組み合わせ、パンのような感覚でエクストラバージン・オリーブオイルはどうか。


はっきりいって変な味だ。味がまったく溶け合わずバラバラである。オリーブのフレッシュな風味でさっぱりするかと思いきや、変わらず脳天を突き抜けるような強烈な甘さだ。

バニラアイスをトッピングすると美味いと聞いた。これは鉄板、間違いないだろう。


たしかに美味い! サクサクの焼き菓子にアイスをのせたカフェスイーツのよう。しかし甘い × 甘いの相乗効果で、脳天を突き抜けるような(以下略)


・お求めは秋田県内の土産物店で

人に贈るのはどうかと思うが、秋田を訪れることがあったら話のタネにひとつ買ってみるのも一興だ。麩としてはかなり美味しい。

ちなみに製造元の株式会社松尾は明治15年創業、青森県にある老舗の麩専門店である。

当サイトでも過去に佐藤記者が取り上げた、上野動物園銘菓「パンダのうんこ」のメーカーでもある。真面目に「うんこ」を連呼する商品ページは必見だ。


参考リンク:株式会社松尾「お麩の松尾」
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.