「トラックに描かれた飛脚の赤ふんどしに触ると幸せになれる」という都市伝説や、佐川男子ブームなど、もともと宅配ドライバーは人々から好ましく思われる職業だと思う。

だいたいの場合、外から荷物が届くのは嬉しいシチュエーションだという心理的効果もあるだろう。憧れの職業として、ごっこ遊びの対象になることもまったく不思議ではない。

ところが、歩合制の報酬体系や、当日中に運びきれないほどの荷物量、時間指定配達に追われるタイムスケジュールなど、厳しい労働環境がクローズアップされることがずいぶん増えた。物流が増えるうえに道路事情が悪くなる年末年始なんて地獄だというじゃないか。


・「ヤマト運輸コラボ クロネコだいしゃパズル」

話を戻すが、『幼稚園』2022年3月号(税込980円)付録は「ヤマト運輸コラボ クロネコだいしゃパズル」だ。よく似たパロディではなく完全にコラボ。

「キッザニア」をはじめ、子どもたちにいろいろな職業をリアルに体験してもらう、という試みはいいよね。「働くって楽しい!」と思って欲しい。

台車はペーパークラフトになっていて、ボックス状に組み立てる。ストローの車軸でタイヤを表現。

圧巻はダンボール箱。総数13個の荷物を組み立てる。


さすがにダンボールではないものの、クラフト紙のような色合いと質感で本物みたい! 中に好きなものを入れて「お届けごっこ」もできるそう。これは120サイズ。


小さなダンボール箱がコチャコチャッとたくさんあるだけで、なんだか可愛らしくてほっこりする。しかし人によっては身の毛のよだつ光景かもしれない。

台車もハンドル部分までしっかり再現されているし、なにより誰が見てもひと目でわかるクロネコマークがリアリティ抜群。

ちなみに今回の付録は正しくは「SCボックス」といい、ベースから営業所に荷物を届けるときに使う台車だそう。営業所から、さらに各ドライバーがトラックに積み替えて出発するとのこと。消費者の目には触れない道具といえるかな。

工作が終わったここからは遊びの部分で、「13個の荷物を台車にきっちり積み込めたらクリア!」「大きさが5種類あるので、簡単には全部入りません!」とパズルゲームになっている。天地を崩すのはダメ。

隙間なく詰めると、ほとんど余裕なく13個の荷物がぴったり収まる。「クロネコ袋」のような封筒タイプは最上部にのせるのだそう。入れ方を間違えると荷物が入りきれずに余る。


現実社会なら、コンテナがひとつ増えるだけで料金が倍になるわけだから切実だよね。「無駄を出しちゃいかん」という無言の圧力を感じるのは気のせいだろうか。


とはいえパズルは難しくない。幼児向けのパズルを大人が「簡単」などと評すること自体が的外れなのだが、そもそもダンボール箱が「1:2」とか「1:3」とか、めちゃめちゃ積み上げやすい比率になっているのだ。

たとえば80サイズを横に2つ並べると120サイズの長辺と同じとか!


60サイズを3つ並べると120サイズ2個とほぼ同じとか!!


これはもしや……


実際のヤマト運輸の通販サイト「クロネコマーケット」でも梱包用資材が多数販売されている。見慣れた四角いダンボール箱はもちろん、パソコン用、お酒などのボトル用、アート用、長尺の三角ケースなど、たくさんの種類があって眺めているだけで面白い。


調べてみたら、やはり「クロネコボックス(12)」が「クロネコボックス(8)」2個分の横幅だったり、「クロネコボックス(8)」を縦に2個積むと「クロネコボックス(10)」「クロネコボックス(12)」とほぼ同じ高さになるなど、全部の箱には当てはまらないものの、なにかしら戦略がありそう!


これらのサイズは自由に設計されているわけではなく、たとえば120サイズなら縦・横・高さの合計が120cmに収まっていなければならないのだが、その制限内でなるべく積みやすくなっているのでは。


もしお客さん全員がクロネコボックスを使ってくれたら、クロネコさんとしては涙が出るほど嬉しいんじゃないだろうか。


はっ! Amazonが手のひらサイズの小物を何倍ものサイズの箱に詰めてよこすのも同じ理由か!

箱の規格が整っていると、梱包資材のストックやトラックの無駄がなくなり、効率的な発送ができるらしい。機械化や自動化もしやすくなるだろう。その分、紙資源問題とかゴミ問題とかには優しくないわけだが。なんという効率追求社会!


無駄や余分を出さないこと。時間を守って計画通りに運用すること。全国どこでもサービスが均一であること。お客様の気分を害さないこと。統一されたマニュアルにのっとりミスがないこと。


どれもが便利で快適な社会に貢献しているのだけれど、実際に仕事を担う方は大変だよ。ひいいぃぃぃぃ。


・宅配ドライバーさん、ありがとう

昨今の報道はブラックな面ばかりが強調されすぎているのか、あるいは業界の深部があばかれてよいことなのか、筆者にはわからない。

しかしネットショッピングしすぎて同じ日に荷物が別々に2個届いたり、宅配ボックスが満杯で不在票が入っているのを見つけたりするたびに「ごめんなさいぃぃ!」と土下座したくなるのは筆者だけではあるまい。

宅配ドライバーさん、いつもありがとうございます。今日もどこかで荷物を届けてくれる人のおかげで世界が回り、私も仕事ができています。


参考リンク:小学館クロネコマーケット
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.