日本は、名字の種類がもっとも多い国の1つと言われている。なので、文具店で見かけるハンコタワーに「自分の名字が無い」という人も意外と多い。かくいう筆者も「砂子間(すなこま)」の印鑑が必要になったら、面倒だが毎回ハンコ屋さんに行って作ってもらっている。珍しい名字の宿命だ。

そこで今回は、品揃え日本一のハンコ屋さんに行ってみることにした。なんでも日本の人口99%のハンコを取り揃えているらしく、その数なんと10万本以上だという……って、ウソだろ! と思っていたのだが、マジで想像以上のハンコ屋敷だった。

・はんのひでしま

やって来たのは福岡県福岡市の東区。日本三大八幡宮である筥崎宮から歩いて5分ほどの場所に、全国から問い合わせが来る日本最強のハンコ屋『はんのひでしま』があるらしい。ナビの案内通りに進んで行くと、目印である「はん」と書かれた看板を見つけた。さっそく店内に突撃してみると……

なんかスゲーことになっている。壁がハチの巣みたいなんですけど……どうやら1本540円の認印が、あいうえお順でビシーーーッと壁面に収容されているようだ。もし地震が起きたら、ハンコの洪水に飲み込まれてしまうだろう。余計な心配までしてしまうビジュアルである。

・店内にある10万本で約99%を網羅

「はんのひでしま」は創業昭和6年。現店主は二代目の秀島徹さんだ。名字の研究家でもある秀島さん曰く「印鑑は5000種類あれば、日本人口の80%をカバーできる」らしい。ちなみに文具店にある一般的なハンコタワーには、ザッと5000本収まるそうだ。

さらに「タワー10基分の5万種類で日本人口の約98.5%、残り1.5%に10万種類の名字がある」とのこと。店内にある10万本で約99%を網羅しているという……むしろ、まだ足りてないってマジかよ。

・珍名ズラリ

さて、店内にある約10万種の名字コレクションの中から、極めて珍しい名字をいくつか紹介しよう。まず、字画が一番多い名字は「躑躅森(つつじもり)」さんで、文字数が多いのが「十一月二十九日(つめづめ)」さん。読み方がクイズで出題されるレベルの難易度である。

名字の由来もさまざまで「イ(かながしら)」さんは、平仮名いろは順の先頭だから。「薬袋(みない)」さんは一説によると、武田信玄が薬袋を落とした際、拾って届けた者に「(自分の弱みである薬袋の)中身を見たか?」と聞いて、拾った者が「見ていない」と答えたことから、薬袋姓を与えたそうだ。

由来が分かればスッキリするが「辺銀(ぺんぎん)」さんや「一物(いちもつ)」さんなど、珍名字の誕生ラッシュは明治以降だという。

なんでも全国民の名字使用を義務付ける「平民苗字必称義務令」が公布された際、多くの日本人がどんな姓を名乗ってよいか分からず、とっさに思いついたものを次々に名字にしたそうだ。即座に浮かんだワードが「いちもつ」とは……かなり立派だったに違いない。

・新発見の名字はコレクションに追加される

さて、そろそろ筆者の名字「砂子間」を探してもらおう。店主に「砂」で始まる名字のエリアを確認してもらうと「砂米、砂子、砂子田、砂子沢、砂子澤、砂子坂……うーん無いね」ってマジかよ。さっそく作って、コレクションに加えてもらうことにした。

ちなみに筆者の同級生「北寒寺(ほっかんじ)」くんも無かったので、同じく作ってもらうことに。なかには在庫を発見すると、不機嫌になる珍名字の方もいるそうだ。なんというか、気持ちは分からなくもない……北寒寺くんにも「あるのかよ!」という気持ちを味わっていただこう。

秀島さんの「どんな名字のお客さんも待たせたくない」という思いからスタートしたコレクションの数々は、確かに圧倒的であった。残り1%は果てしないかもしれないが「はんのひでしま」には、いつの日か日本人の名字を全制覇していただきたい。

・今回ご紹介した店舗の詳細データ

店名 はんのひでしま
住所 福岡市東区箱崎1−36−38
時間 9:00〜18:00
休日 土曜日・日曜日

参考リンク:はんのひでしま
Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.

▼カタカナ名字の「ミトワ」さん


▼どれも「たにかべ」もしくは「やつや」と読むらしい

▼「いもあらい」「ひとくち」「いっこう」などと読む

▼常にハンコを補充するため、来店した人の名前を書いておくらしい

▼「砂子間」がなかったので作ってもらった


▼確認作業も大変である

▼ハンコ屋敷だった