
サーカスで空中ブランコを飛ぶことになった。
「なんで?」という読者にざっくり経緯をご説明すると、まず当編集部に砂子間さんという、元サーカス団員の人がいる。本記事は普通に書くと非常に長くなるため駆け足で進めさせていただきたい。
そんな砂子間さんに酒を飲ませ、「サーカスに出たい」という熱い想いを伝えた結果………私はガチでサーカスに出られることになったのだった。大事なのは熱意! 熱意があればサーカスに出られるッ!!!!!!!
(今回は木下サーカスさんより特別に舞台演目・空中ブランコの挑戦許可をいただきました)
・空中ブランコを飛ぶには
今回お世話になる木下サーカスはサーカス界の超超超有名どころ。知らない日本人はモグリと言っていいだろう。なお私は人生で一度もサーカスを観たことがない。なのに出たい理由はというと、とにかく目立ちたい。あと弱い自分を変えたかったから。
最近、私は自分に心底嫌気がさしていて、何か死ぬほど思い切ったことをしたかった。そうすれば何かが変わるかもしれないからである。でも死ぬのは嫌だ。死なないギリギリの思い切った行為として、空中ブランコほどふさわしいものもあまり無いと思った。
(※ 砂子間さんに頼んでもサーカスには普通出られません。街で砂子間さんを見かけても頼まないでください)
さて2024年2月12日までの約3カ月間、千葉・幕張で公演を行っていた木下サーカス。駅へ降りた瞬間、街全体がサーカス色に染まっている雰囲気をビシビシと感じた。
うおー!! あれがサーカスのテント(早朝)かァ〜!!!!
挨拶もそこそこに、さっそく空中ブランコの特訓が始まった。まず鉄製の持ち手(重い)を頭上に持ち上げ、そのままキープする。こう見えてけっこうキツい。
次は持ち手をキープしたまま台の上に乗り、そこから落ちる練習。ポイントはかかとだけで台に立ち、つま先を下に向けつつ、手はキープしたまま「ストン」と地面に落ちること。このとき、上に跳ねる動き(ジャンプ)をしてはいけない。
あくまで重力のままに落下することが非常に重要……らしいのだが、これ簡単そうでメッチャムズイ。「そうでもねえだろ」と思った人、やってみてほしい。
全然ダメダメな私であったが、いかんせん時間がないので次のステップに進む。練習用のブランコで実際に揺られてみる。このころから、指導してくれる団員さんたちの表情が明らかに険しくなってきた。見て見ぬふりをするしかねぇ。
体の動きで徐々に勢いをつける。腕にかかる負担がヤバい。失望されたくない一心でギリぶら下がっている状態。
「ここぞ」というタイミングで手を離し……
ドサッ! とマットに着地。ついに団員の方から「もしかして懸垂(けんすい)できない人?」と聞かれる。そう聞かれるってことは、あまりいい出来じゃないのだろう。はい、できません懸垂。
身体能力低すぎ問題が露呈したものの、幸い私はクビにならなかった。というのも、私が今回もぐりこんだ素人参加枠(芸能人やスポーツ選手、女子アナなど様々なジャンルの著名人が挑戦。年に数回程度実施)は、そもそも成功すること自体が稀らしいのだ。
ここでいう “成功” とは、空中で手を離し逆サイドから飛んでくる受け手にキャッチしてもらうこと。過去にはバーから手を離すことすらできなかった人もいるのだそうで、そんなワケで私の目標は「飛べたら上出来、成功したら奇跡」に決定した。よぉ〜し、がんばる!!!
・人生初サーカス
この日の公演は午前と午後の2部制で、私が飛ぶのは午後の部。イメトレがてら午前の部を鑑賞させていただいた。
サーカスの内側はおみやげ屋・スナックを売る店などがいくつもあって、ポップな異世界が広がって、ハッピーな家族連れがひしめいて、さながら小さな遊園地みたいである。楽しすぎてビックリしちゃった!
初めて見るサーカステントの内側。イメージ通りすぎて震える。あ、今のうちに本番の動線を確認しておこうっと。
わぁ…………マジか。
地上約13メートルの高さで行われる空中ブランコに、エレベーター的な設備は無い。団員さんたちと同様に、私もこのハシゴを自力で登らなければならないのである。長すぎてテッペン見えないけど大丈夫そう? 数時間後、本当に私はこのハシゴを登るのだろうか?
……などと心配してみたところで、今さら引き返すことはできない。一旦忘れてサーカスを楽しむことにした。個人的にサーカスというものに対して “子供向け” という印象を抱いていたのだが、けっこう激しい演出が多くて驚く。
とくに宙吊りの女性が首に巻かれた布1枚を軸にグルグルと高速回転する演出など、もう完全にヴィジュアル系の世界観であった。まんまディルアングレイのPVに使えそう。「大人も子供も楽しめる」をこれほど地で行く空間もそう多くないのではないか?
木下大サーカスの入場料は大人3500円から。決して忖度とかではなく、心から「安すぎる」と感じた。ちなみに私のイチオシはジャグリングのブライアンさん。彼らのプロフェッショナルな仕事ぶりを体感できて3500円はマジで激安。
・情緒、大変なことになる
それはそうと……衝撃的だったのは空中ブランコがショーの最終演目、つまり大トリであったこと。自分が大トリに出演するなど夢にも思っていなかった私は、ガクガクと震えながら着替えをした。
この日の衣装は自前。なんとなく「サーカスってこういう格好をしていそう」と思っていたのだが、メチャクチャ浮いていたので少し後悔した。
ところで、なんでサーカスの人って全員イケメンで親切なんだろう? 出番ギリギリまでひたすらイメトレ。緊張で吐き気がしてきた。
ついに命綱が装着される。「服が汚れる」とか「パンツ見えそう」とかどうでもいいんで、力の限り締めてください!
今さらコトの重大さに気づき頭を抱える私。
空中ブランコの皆さんに「くれぐれもよろしく」と頭を下げる。
この時の記憶はあまり無い。
しかし時間が来たのでステージに向かう私。
「今日の挑戦者はロケットニュースの亀沢さんです!」と紹介される。この瞬間、自分のやる気スイッチ的なものが突然オンになるのを、私は確かに感じた。
覚悟を決めるしか……ない。
・やるしか……ない
そしてゆっくりとハシゴを登る。ハシゴを登る練習はしていなかったが、今にして思えば、練習しなかったからこそ登れたんだと思う。
地上約13メートルのハシゴを登るコツは、とにかく自分の手元だけを見ること。あくまで予想だが、たぶん下を見ていたら気を失っていたんじゃないだろうか?
到達してみて驚いたのは、ハシゴのゴール(ブランコのスタート地点)たる足場の狭さ。しかも不安定で網目状。逆サイドからブランコが到着するたびガシャーン! と激しく揺れる。
私の出番はショーの終盤であるため、団員さんたちが華麗にブランコを飛んでいる間、足場の端っこで待機しておく必要があった。自分としてはかなり端っこにいるつもりだったが、途中で「もうちょい詰めて」って言われた。
こちらが空中ブランコが “成功” している画。一体誰が人類で最初に「空中ブランコを飛ぼう」と思ったのだろう? 気になる。
・時がきた
で……ついに私の出番がきた。
恐るべきことに、この不安定な足場の上で、さらに「足がギリ乗るかどうかの細長い箱みたいなハシゴ」に乗る必要があった。手に持つブランコの重さと引力は相当なもので、体を支えるのはかかとだけ。
この時ブランコを離したり転げ落ちたりせず、よく踏ん張れたものだと、我ながら今にして思う。ここを踏ん張れた時点で成功認定してほしいレベルのミッションであった。
ちなみに今さら信じてもらえないかもしれないが、実は私、極度の高所恐怖症。が、これだけ大勢の人の優しさに包まれて、観客に見守られて……その感謝を思えば、13メートルなんて全然大したことじゃない。つまり高所恐怖症なんて幻想。己を変えたければ甘えを捨てよ!! とか考えてるうちにカウントダウンスタート!
うおおぉぉぉぉいっけぇぇぇぇえええ!!!!!!!
・これは失敗ではない
……ってことで、私の空中ブランコ・チャレンジは “成功” とはならなかった。
が! だから失敗というわけでも、断じてなかった。
「どこが失敗じゃないのか?」と訊かれれば、これはもう「会場にいた人にしか分からない」としか答えようがない。とにかくあの会場の一体感と感動は、どうしても文字でお伝えすることができないのだ。
語彙力がなくてスマンが、詳しくは当日会場へ行った人に聞いてほしい。なおサーカスの方々には「よく頑張った」「落ち方が見事だった」等、ねぎらいのお声がけをいただいたぞ。もはや成功だったと言っても過言ではないと思う!
カーテンコールにも参加させていただいた。会場のお客さんたち、きっと私のこと有名人だと思っただろうなぁ。
そんなこんなで私の空中ブランコ・チャレンジは無事終了。ホンマありがとうございました!!!!!!
・サーカスを推すべき理由
ちなみに! 私が地上13メートルの足場で震えていたときのこと。1人の団員さんが気さくに話しかけてくださり、おかげで私のメンタルが若干安定するという一幕があった。その結果……私は一瞬でお兄さんの大ファンになっちゃったのである。これぞ正真正銘の吊り橋効果!
これまで様々な界隈で推し活をしてきた身の上として断言できるのは、サーカスが「史上最強レベルに見返りの多い界隈」であること。まずチケット代が安い。そして1カ所で長期間、1日複数回の公演を行うため、遠征の効率が非常にいい。
また売店の売り子や会場スタッフなどを、なんと団員の方々が交代で務められている。よって現場へ行けば、推し団員と接触できることがほぼ確約されているのだ。界隈選びに悩んでいる推し活迷子のみんな、絶対にサーカスがオススメだよ!!!!
こうして私の長〜い1日は無事終了。この先の人生で日和ったとき、怖気づいたとき、私は必ず今日のことを思い出すだろう。何度も言うけどホンマありがとうございました!!!!!!!!
参考リンク:木下サーカス
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼私の恩人にして推し団員の大宮路さん。韓流アイドルみたいなルックスでメッチャ素敵! 好き!
亀沢郁奈
































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