身近すぎて、どうやって作られているのか知らないものって割とある。

筆者にとっては、絵の具もそのうちの一つだ。小さい頃から当たり前のように使ってきたけれど、あの鮮やかな色がついたペーストを自分で作ったことはない。

気になって調べてみたところ、どうやら色の素である「顔料」と接着剤のような役割を果たす「膠(にかわ)」があれば手作りすることが可能なようだ。

素材から作る絵か……面白いじゃん。ということで、実際に挑戦してみることにした。


・痛みを伴った

今回、絵の具作りのために用意したものはこちら。ステンレスと陶器でできた2種類の乳鉢、膠液、ターコイズのさざれ石だ。

ステンレスの乳鉢は生まれて初めて触ったのだが、想像以上に重くて頑丈だ。

例えるなら、セロハンテープの台座と同じくらいか同じくらいの重さ。これなら確かに石も粉砕できそう。


まずは顔料を作っていく。ターコイズのさざれ石をステンレスの乳鉢に入れ……


ゴリゴリすりつぶして粉にしていく。石をすりつぶしているだけあって、工事でもしているのかと思うほど でっかい音が響く。


しばらく乳棒を回したあと、蓋を取って中身を見てみると……おおお、ちゃんと粉になってる! 

石の硬さにステンレスで対抗できるのか心配だったんだけど、ちゃんと戦えているようだ。順調に進みそうでよかった。




その後もひたすら乳棒を回し続け、作業開始から2時間が経過した頃……


シンプルに手を痛めた。


石をすりつぶすほどの硬い乳棒を力を入れて握っている上、振動がダイレクトに伝わってくるんだもんな……作業を始める前に気づいておくべきだった。


多分これ以上作業を続けたら、数日右手が使い物にならなくなる。ということで、投入した全てのさざれ石をすりつぶせてはいなかったけれど ここで打ち止めとした。

2時間ゴリゴリし続けただけあってある程度の量の粉はできているし、大丈夫でしょう……!


続いて、作った粉を陶器の乳鉢に移してさらにきめ細かくしていく。

痛む右手でまだ頑張れるか不安だったけれど、既にある程度粒が細かくなっていたのでこちらは比較的楽に作業を終えることができた。


これで色の素である顔料が完成! 顔料をパレットにとったら……


いよいよ膠の登場だ。パレットに出した膠は、さらさらしていて一見普通の水みたい。


あとはこれを顔料と混ぜ合わせれば……


手作り絵の具、完成!


すごいすごい、ちゃんとそれっぽくなってる! 原石どおりの鮮やかな色ではなくなっているけれど、これはこれで素敵な色じゃないだろうか。



さっそく絵を描いてみよう。わくわくしながら紙に筆を走らせると……



……うっっっっっっす!!!!!!!


え? こんなに下描きみたいな仕上がりになることある???


しかもイメージしていた色と全然違うな……?

てっきり原石の色のまま絵の具になるのかと思っていたけれど、原石ともパレットに乗っていた時とも違うくすんだ緑色がそこにはあった。ターコイズ要素どこ行ったん……



・市販品って素晴らしい

ちなみに市販の絵の具を使うとこう。


わぁ……鮮やか……しかもチューブから中身を押し出すだけで使えるという。手を痛めなくても絵が描けるって素晴らしいな。

一応それらしきものを作ることはできたけど、やっぱり素人の知識と腕では市販の絵の具のように質の高いものにはならなかった。

とはいえ、絵の具の材料や作り方を知ることができていい勉強になったのは間違いない。これからはメーカーさんの技術に感謝しながら絵の具を使っていこうと思う。

執筆:うどん粉
Photo:RocketNews24.