スローライフゲーム、ものづくり、採掘、家具集め、住民との恋愛……これらのキーワードにビビッときたあなた、『きみのまち ポルティア(My Time at Portia)』はプレイ済みだろうか。

開発は中国のスタジオ、販売もインディーズパブリッシャーと、決して「誰もが知る超大作」ではないのだが、購入者の93%がポジティブな評価(Steam / 2021年6月現在)をつけ、「非常に好評」に分類されている良作だ。

これまでのPC版・コンソール版に加え、ついにモバイル版がリリース! スマホで気軽にできるようになるから、この機会に初プレイはいかがだろうか?


・ビジュアルで未プレイなのはもったいない

農作物や加工品を生み出しながら、住民と交流を深め、家族を作る……というスローライフゲームの代名詞といえば、まずは日本の『牧場物語』だ。後発のインディーズゲームでは、開発者自ら「牧場物語にインスパイアされました」と公言するケースもあるほど。

牧場物語をはじめとする国産ゲームでは、少なくともメインキャラクターは誰もが感情移入できるよう、人好きのする顔立ちなのが一般的だと思う。

一方のポルティアはアニメよりも「カートゥーン」といいたくなるような、デフォルメされたちょっとクセの強いビジュアルだ。恋愛対象でさえ「漫画のような美男美女」には描かれていないので、好みがわかれるかもしれない。


しかし、そこでこのゲームを避けてしまうのはもったいない!


恋愛対象は、可憐な美少女からヒゲ面のオッサンまで、年齢も属性も多種多様。普通は「攻略キャラじゃないでしょ」という人まで対象なので、やり込みがいがある。

最初は「え、ちょっと……」と思ったキャラクターも、人柄を知るといつしか親しみを感じている自分に気づくはずだ。


・同性婚、離婚、浮気など作り込まれた恋愛システム

そんな濃~いキャラクターたちとの恋愛は本作の醍醐味。それどころかブタやネコやクマのような人間以外のキャラクターにも友好度(恋愛はできないが)があるぞ。

ほとんどリアクションをもらえない(人間の言葉を話せない)クマが気になり、遠目で見かけるたびにすっ飛んでいって好物を渡していたのは、ほかでもない筆者だ。

恋人関係になっても会話テキストが多少変わるだけ、というゲームもある中、本作ではデートをしたり「手を握る」などのスキンシップをしたり、浮気現場を見られて不仲になったりと、よく作り込まれている。

賛否両論だと思うが、ごく一部ライバルイベントもある。主人公から見たときの、恋愛対象キャラクター同士が仲良くなったり恋愛関係になったりする、というシステムだ。

キャラクター同士で人間関係が生まれると、物語が重層的になって深みが増すというメリットはある。

が、狙っていたキャラクターが、いつのまにか別のキャラクターとヨロシクやっていることに気づいた日には「ゲームでまで、こんな思いしたくないんですけどぉぉぉ!?」となるプレイヤーもいるかも。

かくいう筆者も、予備知識なく遊んでいたので気づいたときには声が出た。まぁ、リアルといえばリアルだが……。


・ものづくりの楽しさ

ついつい恋愛システムについて熱く語ってしまったが、真の特徴は「ものづくり」だ。

主人公はかつて父親が住んでいた土地に移住してくることになり、ボロ屋を修復しながら街の一員になっていく……というお決まりの展開なのだが、受け継ぐのは農場ではなく作業場。

ビルダーとして、ちょっとした家具から大規模な建築物まで、住民の役に立つモノを作っていく。

たとえば橋を作るためには「銅パイプ」が必要で、加工には「グラインダー」という機械が要る。グラインダーを作るためにはさらに「砥石」や「銅の延べ棒」が必要で、原材料の銅鉱石を採掘してこないといけない……と「やらなければならないこと」が加速度的に増えていく。

限りある資源や時間をどう割り振れば効率がよいか、マネジメントゲームの要素もある。

その結果、橋を作れば対岸に渡れるし、林業地を助ければ木材が手に入るし、実際にインフラとして機能していく。苦労の末に街が便利になっていくのは快感だ。

作業手順は決まっているので、『マインクラフト』のような自由度はない。けれど、設計図どおりに材料を集めてチマチマと作業を進めるのが好きな人は、きっとツボにはまる。


・採掘が楽しい

農業、釣り、料理、恋愛、自宅のデコレーションなど、一般的にスローライフゲームでできることはひととおりできるのが本作。しかし、多くのプレイヤーが熱中するのが採掘だと思う。

「廃遺跡」と呼ばれる鉱山のような場所は、上下左右に掘り進むことができる。豆腐のようにぬるぬると穴を掘っていける感触は独特で、それだけで楽しい。

鉱物を採取できるのは当然として、それ以外に「旧世界の遺物」と呼ばれるコレクターズアイテムが隠れている。ピースをいくつか集めることで本来の姿を復元でき、博物館に寄贈したり、自宅に飾ったりできる。

「あと1ピースなのに!」と地団駄を踏んだり、1週間越しで揃ってガッツポーズをしたり、ガチャのような面白さがある。ゲーム上すごく有利になるとか、物語が進展するといったことはないのだが、人は不完全なものを「集める」「揃える」ということだけで快感を覚える生き物なのだ。


・荒削りな部分もあるが……

PC版・コンソール版ともリリース当初はバグや調整不足、不完全な翻訳など、荒削りな部分も多かった。とくに日本語訳には不自然さも残る。

しかし積極的にアップデートに取り組む姿勢もまた、フットワークの軽いインディーズゲームという印象を受ける。モバイル版はさらにブラッシュアップされているのではないだろうか。

少なくとも筆者は一時期、夢中になってプレイしていた。おそらく開発者の「こんなゲームを遊びたい」という理想が詰まった良作である。

モバイル版は8月4日に正式リリース予定。iOS・Androidで事前登録を開始しており、iOS版なら25%の予約割引も! さらに続編『My Time at Sandrock』も開発中ということだから、スローライフゲーム好きとしては期待が高まる。


参考リンク:PR TIMES
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES、RocketNews24.

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