どうせなら、もっとマシなものに依存して生きたい。他にいくらでもあるだろう。タバコよりマシなものが。なのになぜ、私は10年以上もタバコに依存しているのか……。いい加減、もう止めよう。タバコを。

──と以前に書いた私は、今まで自力で何度もタバコをやめようとしてきた。努力に努力を重ねてきた。ときには、その過程を記事にもしてきた。しかし……どうしてもやめられない。どう頑張っても吸ってしまう。そんな自分を変えるため、禁煙外来に行ってきたので報告したい。

・禁煙外来の診察とは?

私が訪れたのは、個人的に何度もお世話になっている「お茶の水循環器内科」。事前に予約をし、院長である五十嵐健祐先生の診察を受けたのは今から10日ほど前の10月31日。その日が初回で、あと4回通院する予定だ。

さて、「そもそも禁煙外来ではどのような診察が行われるの?」という点が気になる人が多いだろうから、まずはその点から説明しよう。受診する病院や医師によって多少異なる部分があるだろうが、大まかに言えば以下の3つになる。


1. 医師からの説明およびアドバイス
2. 喫煙状況の把握
3. 禁煙補助薬の処方


1. 医師からの説明およびアドバイスについて

まず1に関してだが、初回は禁煙治療に関する説明を受ける。約3カ月間で初回も含めて合計5回通院することや、費用、禁煙補助薬などについてだ。また、タバコの有害性や、禁煙が継続していくと健康面でどのようなメリットがあるか等についても説明してくれる。


2. 喫煙状況の把握について

そして2に当たるのが、これまた初回に記載する『喫煙状況・禁煙治療に関する問診票』と、『呼気一酸化炭素濃度検査』。『喫煙状況・禁煙治療に関する問診票』は、簡単に言えば喫煙アンケートだ。「1日に平均して何本のタバコを吸いますか?」などの質問に回答を記載し、先生に渡す。

なお、問診票の中に「タバコをやめることについてどの程度自信を持っていますか?」という質問があったのだが、私は「80%」と答えた。

それから重要なのが『呼気一酸化炭素濃度検査』だ。タバコには200種類以上の有害物質が含まれており、その中には有名なニコチンやタールの他に一酸化炭素もある。ということは、タバコを吸った直後の呼気には一酸化炭素が含まれており、機器に息を吹きかけると……!

そう。呼気の一酸化炭素濃度を測定することで、一酸化炭素の体内への取り込み状況が分かる、つまるところ病院に来る前にタバコを吸っていたら一発でバレてしまうのだ。この検査は、禁煙外来に行く度に受けるらしい。

ちなみに、タバコを吸っていない人は「おおよそ0〜7PPM」という数値が出るらしいが、私の検査結果は8PPMだった。禁煙外来へ行く日の朝、数本吸ってしまったことがバレバレだ……。


3. 禁煙補助薬の処方

そして、禁煙外来の代名詞的存在なのが禁煙補助薬である。私が処方してもらったのは『チャンピックス』という薬。

先生の説明によれば、チャンピックスを摂取していると……


「タバコを吸ったときにニコチンの作用をブロックし、『タバコが美味しい』という感覚を減らします。また、タバコを吸っていないときにはニコチン受容体に作用し、イライラや『タバコ吸いたい』というニコチン離脱症状を和らげます」


──とのこと。すごくざっくりと言うならば、「チャンピックス飲んどけばタバコはマズくなるし、イライラもマシになることが期待できる」ってところだろう。

このチャンピックスを、私は禁煙外来に通う3カ月間 飲み続けるのだが、いきなりフルスロットルで摂取するわけではない。まず1〜3日目はチャンピックス0.5mg錠を1日1回、4〜7日目はチャンピックス0.5mg錠を1日2回、8日目以降は、チャンピックス1mg錠を1日2回飲むことになる。

つまり、1〜3日目、4〜7日目、8日目以降という3段階で、チャンピックスの1日摂取量が倍増していくのだ。

ここで個人的に面白いと感じたのが、「チャンピックスの服用8日目までに禁煙してください」と言われたこと。え? すぐに禁煙しなくていいの? と思ったのだが、薬のパッケージにも「服用8日目から禁煙」と書かれている。

つまり、チャンピックスを飲み始めたら強制的に禁煙スタートというわけではないようだ。なお、先生からは「もちろん、即日タバコをやめられるに越したことはないんですよ」と言われたことは記載しておこう。


──以上。ざっとこんなところだろうか。

ここで「じゃあ禁煙外来の何が良かったの?」と思う人もいるだろうから、個人的主観で恐縮だが「私が禁煙外来(初回)に行ってみてここが良かった」と感じたところをいくつか紹介したい。


・良かったと感じた点その1:医師のアドバイスが受けられる

まずは何と言っても、先生から禁煙のアドバイスが受けられること。例えば、喫煙が人体に与える影響に関して、私が先生からハッキリ言われたのは……


「タバコが有害であることは多くの方々がご存知の通り。肺ガン、咽頭ガン、喉頭ガン、食道ガン、心筋梗塞、脳卒中、慢性気管支炎、美容への影響、妊娠や子育てへの影響など、煙草の健康への悪影響はキリがなく、文字通り、百害あって一利ありません」


──『タバコが人体に有害』ってことは誰でも知っているかと思うが、改めて先生の口から説明されると「タバコって本当クソだな。マジでやめよう」って気持ちになったから不思議だ。

これだけでも、喫煙者は禁煙外来に行く価値があるのではないかと、私は思う。


・良かったと感じた点その2:禁煙への気持ちがかたまる

これはメンタル面での影響だが、禁煙外来に行ったら「禁煙しよう」という気持ちがより強くなった。『禁煙宣言書』を書かされるからというのもあるのだろうが、今まで中火だった炎が、一気に強火に変わったような印象だ。


・良かったと感じた点その3:チャンピックスの心強さ

そしてやはり、禁煙補助薬『チャンピックス』の心強さを外すわけにはいくまい。これがあれば100%の確率で禁煙が成功するわけではないが、イライラなどを和らげてくれるというのだから期待せずにはいられない。

チャンピックスを手にしたときには、ドラクエで天空の剣をゲットしたときのような気分になった。タバコを吸わせようとする悪魔(誘惑)を、この剣でぶった斬ってやるぜ。

ほかにも、私の場合は保険適応だったので、費用が思ったよりも安かったと判明したこと(5回の通院で2万円前後)などなど。ありがたかった点は他にもあるのだが、キリがないのでこのへんにしたい。


さて! じゃあ初めて禁煙外来に行った後にどうなったのかというと……そこから約1週間の記録を「喫煙日記」という形でお届けしよう。なお、飾り立てたことや嘘を書いても仕方がないから、感じたこと・起こったことを忠実に記載している。ありのままの内容が、「タバコをやめたい」と思っている人にとって参考になれば幸いだ。


〜ありのままの禁煙日記〜


・10月31日(水)

禁煙外来に行ってきた。先生の説明を受けて、タバコの有害性を改めて確認。そしてチャンピックスという存在、実に心強い。

禁煙外来に行ったのが夕方で、その朝に2本だけ吸ってしまったが、病院から帰ってきたらタバコに手を伸ばそうという気持ちが一切無くなっていた。禁煙に迷いはない。早くクリーンな体になりたい。【吸った本数:2本


・11月1日(木)

本来なら今日からチャンピックスを飲み始めなくてはならないが、チャンピックスを飲んだらタバコを吸ったときに気持ち悪くなるのでは? という気持ちから、チャンピックスの摂取開始日を翌日に延期

禁煙外来に行ったからといって、「翌日から絶対に禁煙」というわけじゃない点がありがたい。実によく考えられている制度な気がする。すぐにでも禁煙しろと言われると「無理」と思ってしまうが、8日間の猶予があることで「自分のペースで出来る」という気持ちになるから。【吸った本数:23本


・11月2日(金)

うちの編集部は基本的に金曜日が一番忙しい。そんな日にチャンピックスを飲み始めるのは愚策だと考え、摂取開始を翌日に延期。週末から摂取することを決意。【吸った本数:18本


・11月3日(土)

私にとって休日の楽しみの1つは、喫茶店でコーヒーを飲みながらタバコを吸ってボーっとすること。そんな私がタバコをやめるというのは、休日の楽しみが1つ無くなることに他ならない。今週も1週間頑張ってきたのに、なぜ休日の楽しみを奪われなくてはならないのか?

禁煙は絶対にするが、タイミングが大事。【吸った本数:12本


・11月4日(日)

朝、妻に「いつから薬を飲むのか?」と言われる。それがきっかけでチャンピックスの内服開始。夜にアルコールを飲んだが、タバコには触れず。順調なスタート。【吸った本数:0本


・11月5日(月)

チャンピックス内服2日目。薬を飲んでいるためか、以前の禁煙ほど辛くない気がする。あくまでも自覚している範囲内だが、眠気やイライラはほとんど感じない。

1番つらいのは、仕事中に喫煙所へ行けなくなったこと。言い換えれば、タバコを理由に席を立てなくなったこと。ずっと座りっぱなしなのが1番きつい。なので、途中からフリスクやらお菓子を持って喫煙所に行く。仕事が終わったとき、フリスク1缶(50粒)を空にしていた。【吸った本数:0本


・11月6日(火)

チャンピックス内服3日目。今日もフリスクやお菓子を持って喫煙所に行く。副流煙は吸ったが、自分からタバコは吸わず。夜に「禁煙が72時間続いた」と思ったら、大きな峠を越えた気がした。【吸った本数:0本】。


・11月7日(水)

チャンピックス内服4日目。今日から摂取量が朝と夕方の2回、つまり今までの2倍になる。そしてこのまま順調に進むと、4日後にはさらに2倍になる。ということは、数日後にはチャンピックスがバリバリ効いている状態になるわけだから、タバコを吸えなくなるかもしれない。というか、吸ったらダメだ。

そう考えると、タバコを吸えるチャンスがあるのはあと数日という不安が生まれる。その不安に耐えきれず、試しに1本吸う。思ったよりも気持ち悪くない。いつもよりケムいと感じるものの、吸えないほどではない。「マズいか?」と聞かれれば確実にマズイが、タバコなんて元々マズい。私の場合、習慣で吸っているだけだから。

とはいえ、口元にタバコがあることと、正当な(?)理由で喫煙所に行けることに安心感を覚え、この日は10本近く吸う。【吸った本数:9本


・11月8日(木)

チャンピックス内服5日目。朝に薬を飲んだが、直後に一服。相変わらず、ケムくてマズい。しかし吸っていると安心する。3日後には、摂取量が2倍……すなわちチャンピックスがバリバリ効いている状態になることを考えると、「猶予期間を存分に活用しよう」なんて思ったりもする。ダメだ。もっと気合を入れなければ! 【吸った本数:8本


——という感じで始まった私の禁煙チャレンジ第二弾。これからいよいよ、ガチでタバコをやめなくてはいけない「チャンピックス内服8日目」に突入する。どうなったのかは追ってお伝えしよう。

協力:医療法人社団 お茶会お茶の水循環器内科
参考リンク:ファイザー「禁煙外来
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

▼ちなみに、初日に渡された書類がこちら。問診票や宣言書など計5枚

▼これが呼気一酸化炭素濃度検査の機器

▼機器が準備OKになったら……

▼息を吐く

▼数値でバレるのこえええええ!