史上初めて中国を統一した「秦の始皇帝」が、不老不死を求めたことは有名な話だ。不老不死を求めるあまり水銀などを原料とした薬を飲み続け、かえって寿命を縮めたと言われるが、人類にとって不老不死が “永遠のロマン” であることは間違いない。
実は日本にも、西暦670年頃から密かに伝わる「不老長寿の果実」があることをご存じだろうか? 天智天皇が名付け、現在も皇室に献上されている由緒正しき果実、その名を『ムべ』という。そんな伝説の果実・ムベを求めて、滋賀県まで足を運んだのでご覧いただきたい。
・「むべなるかな」
先述したように、ムベの名付け親は天智天皇と言われている。天智天皇が狩りに出かけた際、8人の男子を持つ健康な老夫婦に出会い「汝(なんじ)ら如何(いか)にかく長寿ぞ?」と尋ねたところ、夫婦が差し出したのが、この地(現在の近江八幡市北津田町あたり)で取れるムベであった。
その果実を召し上がった天智天皇が、
「むべなるかな(いかにも もっともなことであるなぁ)」
と発せられたことから『ムベ』の名が付き、以来毎年秋には皇室にムベが献上されているのだ(1982年に一度中断し、現在は献上が再開されている)。
・シーズンは終わっていたが……
聞けばムベの収穫時期は、10月末から11月末にかけてという……。そんなものがあるならぜひ食べてみたい! ということで北津田町まで出かけると「今シーズンは終了」との情報が。どうやら今年の夏は猛暑だったため、例年より早く収穫が終わってしまったようだ。こ……ここまで来てマジっすかーーー!
が、ダメ元で、現在皇室に献上するムベを生産している、ムベ農家「前出のムベ」まで出かけてみると、ご主人が「いくつかなら残ってるかもしれん」と農園を案内してくれることに。そしてそこには……本当にいくつかだけムベが実っていた……!
・不老長寿の味
ご主人からムベの名前の由来や、献上を再開するまでの話などを伺いつつ、ムベを収穫させてもらう。ムベはアケビ科の一種だが、アケビのように実を食べるのではなく、種のところにあるゼリー状のニュルッとした部分を味わうのだ。食べてみるとほのかに甘く、「スイカの皮に少しだけ付いている実の部分」のような味わいである。
甘いものがいくらでもある現代だと「ウマい!」と感じるものではないかもしれないが、そのピュアな味わいは、天智天皇が「むべなるかな」と発せられたのもわかる、ありがたいものであった。むしろ甘すぎないのが体に良さそうで、きっと多くの人が「不老長寿ってこんな味なのか……」と納得するに違いない。
今年はシーズンが終わってしまったが、興味がある人は来年以降「ムベ狩り」に出かけてみるのもいいだろう。また、リキュールなどにもなっているから不老長寿のエキスを感じたい人にはそちらもオススメだ。
参考リンク:伝説の霊果「むべ」
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
▼今シーズンは終了してしまっていたが、ダメ元で「前出のムベ」へお邪魔した。
▼ご主人が「いくつかならあるかもしれん」ということで、農場を案内してくれることに。
▼すると……
▼ムベあったーーーーーーー!
▼これが不老長寿の果実、ムベ。アケビの一種である。
▼ゲッツ!
▼パネルを見せてもらいながら、ムベのことを学ぶ。これはムベの花。
▼断面。実ではなく、種のまわりのゼリー状のところを食べる。
▼ありがたい味や……。
▼これはムベの苗。今シーズンは終了してしまったが、来年以降「ムベ狩り」なども楽しいぞ!