つい数年前まで、「そうめん」は他の麺類の格下的存在と認知されていた。実際に私(佐藤)はそうめん専門家・ソーメン二郎氏に意見を聞き、格下と見られる理由について執筆している。
それから月日を経て……来ている! 確実に波が来ている!! そうめんは、格下麺類の位置付を脱却しつつあるようだ。本物の味を知らない人は、今年の夏こそ真価を確かめるべきだ。その第一歩として、東京・東中野にあるそうめん専門店「阿波や壱兆」に行ってみるといいだろう。
・そうめん初心者にオススメの店
阿波や壱兆は、JR東中野駅を南口を出てすぐのところにある。こちらはなんと24時間営業。その気になれば、午前5時でも深夜0時でもそうめんを食すことが可能だ。ただし、定休日があるので要注意。
・日ごとの変わりそうめんがすごい
お店では、定番メニューのほかに日ごとの変わりそうめんが用意されている。『イワシの姿煮そうめん』や『スモークチキンの豆乳カレーそうめん』、『夏野菜のマリネそうめん』などなど。一般的に考えられるそうめんのあり方を、根底から覆す斬新なものばかり。
そうか! そうめんにはこんなに可能性があったのか!! そうめんは自由だ!!
そう、叫びたくなってしまう。しかし、初心者はまずこ『すだちそうめん(880円)』を味わってみて欲しい。器にはびっしりとすだちスライス。
そして青柚子の皮が散らしてある。見るからに涼し気。香りさわやかで暑い日にはもって来いだ。
・すだちそうめん
詩人の高村光太郎は『レモン哀歌』の中で、レモンの果汁がほとばしる様を「トパーズ色の香気」といった。このそうめんのすだちの香りは、さしずめ「エメラルド色の香気」である。器に顔を近づけて、麺をずるりとすする度に、目の前が明るく華やぐようだ。気温と湿気でうだるような暑さから、すだちの香気が解放してくれる。
お店で使用している麺は、四国・徳島の半田そうめん。もしかしたら、中には「そうめんにはコシがない」と考えている人もいるかもしれない。噛むとすぐに切れるものだと。しかし、半田そうめんは違う。歯ごたえがしっかりとしていてコシがある。
・暑ければ暑いほど
麺と出汁がよく絡み、一口すする度に出汁の旨味と共に、すだちの香りがフワリと広がる。これが、格下の麺類か? いや違う。食べ方によっては、他の麺類を凌ぐ味と品格がある。それでもなお、「だって、そうめんでしょ?」と思う人は、一度訪ねてみて欲しい、できれば暑い日に。暑ければ暑いほど、そうめんのうまさが身に染みるはずである。
・今回紹介した店舗の情報
店名 阿波や壱兆
住所 東京都中野区東中野1-58-11 セリタビル1F
営業時間 24時間
定休日 なし