4月1日、『全日本完コピ大賞』という番組が放送された。これは、あらゆるジャンルの名場面や名シーンを完コピ(=完全コピー)することを目的としたバラエティ番組。プレゼンターのテリー伊藤が、挑戦者となる芸能人のもとに突然押しかけて、勝手に「完コピ大賞」を受賞させてしまう。表彰された彼らは、それに見合った作品を作るためにロケを敢行することになるのだ。

この中で、最も印象的だったのは、「弾丸ジャッキーが『ゴルゴ13』の落下中狙撃を完コピする」という企画。ビルから飛び降りている最中に狙撃を成功させたデューク東郷のように、プールの高飛び込み台から落下中に風船で作られた標的を狙い撃たなくてはいけない。

弾丸ジャッキーの2人が撮影を始めると、そこに1人の芸人が現れた。黄色いブリーフ一丁で丸みのある肉体をさらけ出す、ダイノジの大地洋輔である。『ゴルゴ13』の作品中ではパンツ1枚姿で狙撃が敢行されていたということにちなんで、パンツ芸人である大地が助っ人として参上したのだ。そんな大地に対して2人の態度はそっけない。「冷やかしだったら帰ってもらっていいですか」「パンツのバーターですか?」と厳しい言葉を浴びせる。

一方の大地は、現場に着いてチャレンジ遂行の難しさを実感した様子。「あんなところから飛び降りて、銃を撃って、あの人形の頭に当てる? 正気の沙汰じゃねえぞ!」と驚きを隠さなかった。その後、通常の流れで行くと、大地は「がんばるぞ!」という趣旨のことを言って、ロケの冒頭部分を締めくくるべき場面を迎えた。だがそのとき、彼の口からは意外な言葉が漏れた。

「しょうがねえなあ……じゃあ、やめよう。……あ、やめようじゃねえわ!(笑)」

大地は、恐怖のあまり、バラエティの段取りを忘れて素の気持ちを口に出してしまったのだ。この飾らない天真爛漫な魅力が評価されて、大地とダイノジはさまざまな番組に顔を出すようになった。『めちゃイケ』新メンバーオーディションで最終選考まで進んだ底力は伊達ではない。たった一言でその場の空気を和ませてしまう、大地の癒やし系芸人としての本領が発揮されていた。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田

イラスト:マミヤ狂四郎