神奈川県の中で大都市にあたる川崎市。東京都のベッドタウンにもなっており都民にも知られている雑多な生活臭が魅力の街である。

観光に行くような街ではない。しかしながら、そんなJR川崎駅前のとある商業ビルの動画がYouTubeに無数にあることをご存知だろうか。外国人が投稿しているこれらの動画は中には746万回再生されているものもある。一体なぜ?

・行ってみた

その商業ビルの名前は川崎モアーズ。ストリートのような1階から地下1階に降りるとアパレルフロアになる。一見どの街にもありそうな普通の商業ビルだが、話題になっているものはこのビルの地下2階

そこで階段をさらに降りたところ、スーパーとなっていた。惣菜や食品が売られているちょっと良い感じのマーケットの中を進む。



・現場

すると、大きい自動ドアが見えてきた。川崎モアーズは川崎駅東口地下に広がる地下街アゼリアからも入れるようになっている。バズッているのはこの自動ドアの外

自動ドアを出ると、接続部のようなスペースがある。モアーズの地下2階の方が地下街より低くなるため、中階のように階段とエスカレーターで少し上がるようになっているそのスペース。数段上がってみるとエスカレーターが設置されているのだが……



短ッ

高さで言うと約4段分、長さで言うと約7段分のエスカレーターがふにふに動いているではないか。この短さでも動けるの偉い



・素朴な疑問

実はこれ、世界一短いエスカレーターなのだとか。川崎モアーズの公式サイトによるとギネスブック91年度版で認定されているという。なるほど、公式には段数5段なのか。どうやら「プチカレーター」という愛称もあるらしい。

愛称があるからには知っている人にとっては当たり前のスポットなのだろうが、少なくとも私は世界一短いエスカレーターが日本にあることを初めて知った。それにしても……

なぜ、このエスカレーターを作ったのか


川崎モアーズの説明によると、「アゼリアの地下通路がモアーズの地下1階と2階の間に位置してしまい、この解消策として」と書かれているが、そうなると逆に分からないのが、なぜエスカレーターに行く前に階段を作ったのかということである。



・なぜ

キャタピラ部を地下に埋め込んでいきなり始まった方がお年寄りとかにも優しい気がする。と思いきや、川崎市の公式サイトにその理由が書かれていた。その部分を以下に引用すると……


「当初は地下街と川崎モアーズを結ぶ下りだけのエスカレーターを設置しようとしたが、工事着工後に床下に1本の太いはりが通っていることが分かった。工事断念も考えられたが、お客様へのサービスのためにと、途中までの短いエスカレーターがつくられた」(川崎市川崎区ホームページより引用)


──なるほど。埋め込むのが無理だったと。でも、例え短くともサービスしたかったと。そう言われるとむしろおもてなしの心を感じる



・日常に紛れる世界一

ちなみに、このエスカレーターの通過時間は8秒。しかしその8秒は「短ッ!」と笑うだけでは終わらない。世界一短いエスカレーターは込められた想いも感じられるスポットであった。

普通どころか世界的なレアスポットがサラッと存在するとは恐るべし川崎。ひょっとしたら、我々が普段何気なく過ごしている日常も見る角度によっては珍しいものの積み重ねなのかもしれない。普通なんてないのかもなあ。そんなことを考えさせられた出会いだった。

参考リンク:川崎モアーズ川崎市ホームページ
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.


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▼海外ネットではこういうバズ動画が無数にある