私の出身地である鳥取県には新幹線が通っていない。そのため実家に帰省する際はまず新幹線で関西へ行き、そこから特急列車か高速バスに乗り換えることになる。結果的に北海道や沖縄へ行くより時間がかかる場合も多く、「なんだかなぁ」って思う。

……という話はおいといて、大阪から鳥取行きのバスに乗ると途中10分間の休憩がある。停車場所は毎回決まって兵庫県の『加西(かさい)SA(下り)』だ。大きすぎず小さすぎない、ちょうどええ塩梅のサービスエリア。

今年のお盆も1年ぶりに加西SA(下り)へ立ち寄ったところ……なんだか “ノリノリなムード” が漂っているのは気のせいだろうか?

・加西SA(下り)がノっている

テレビや雑誌でおなじみの巨大SAと比べると、加西SA(下り)は落ち着いた雰囲気がウリ……のはず。少なくとも私はそう感じていた。

ところが、このイケイケなのぼりは、一体どうしたことだろう? こんなの去年は無かった気がするぞ? 加西SA(下り)に何かあったのか??

そういえば私はのべ50回以上も加西SA(下り)を訪れているが、食堂を利用したことは一度もなかったかもしれない。なぜなら休憩時間が10分間しかないから。初めてじっくり見る加西SA(下り)の券売機。中でもひときわ大々的に売り出されているのが……


『シン 世界一忙しいラーメン』(920円)


え……どういう意味? 普通に。


・世界一悩んだ10分間

「何がどう忙しいのか」「本当に世界一なのか」「文法的にどうなんだ」などの疑問が次々と脳裏を巡るも、ともかくインパクトがやたら強めな商品であることだけは間違いない。私は混乱しつつ、瞬時に「どうにか記事できないか?」と思案した。

しかしながら先ほども申し上げたとおり、高速バスの休憩時間は10分しかない。ひょっとして「世界一忙しいラーメン」とは、 “世界一忙しく食べるラーメン” のことなのか? だとすれば注文と同時に秒速で提供される可能性も、なくはない。注文しちゃうべきか? 今?

が、仮にそういう意味じゃなかった場合、私は “注文して食べずに去った異常者” になってしまう。そうなったら最悪だ。とか考えてるうちに休憩時間は残り6分くらいになった。うん、無理だなこれ。普通に。


・素直に聞いてみた

結局この日、私は泣く泣く『シン 世界一忙しいラーメン』を見逃した。そして後日、思い切って加西SA(下り)に連絡を入れてみることに。

すると支配人の近藤さんという方が快くお話を聞かせてくださった(さすが俺たちの加西SA下り)ので、伝言ゲームの要領で皆様にお伝えしたいと思う。本記事はあまり前例のない “現地へ行ったのに食べてない食レポ” である。


それでは気になる『シン 世界一忙しいラーメン』の全貌が……こちら!



うむむ…………見た目は全然忙しそうじゃなくない!!?


・関西の超有名店

近藤さんのお話によると、『シン 世界一忙しいラーメン』は大阪の人気ラーメン店『人類みな麺類』(2020年に東京進出)の松村貴大さんプロデュースによるもの。ネーミングのセンスに通ずるものを感じるな……んで結局のところ、『シン 世界一忙しいラーメン』ってどういう意味なの?


近藤さん「そうですね……現場で調理しているスタッフは、ラーメン以外にもオールジャンルの調理を行っていて、つまり忙しいですよね。またお客様も、お仕事の移動中などの合間に高速道路にて食事される方々が多く、つまり忙しいですよね。

……以上のような意味合いから『世界一忙しいラーメン屋』となっております」

──え!!!!!!?

近藤さん「そうなんです、ハイ」

──それって……言っちゃナンだけど、割と普通のことですよね? 略して『シン 世界一忙しいラーメン』ですか? ギリギリだなァ!!

近藤さん「エヘヘ……(笑)。ちなみに『シン 世界一忙しいラーメン』のゆで時間は約2分半ですので、食べるのが早いお客様であれば、10分間で食べ終わることも可能かと思います。もちろん、混雑時であればお話は別ですが」



──おお!  “世界一忙しく食べるラーメン” とも言えなくないってことですね(笑)

近藤さん「そうですね(笑)。このラーメンは加西SA(下り)の目玉として今年5月にリニューアルしたばかりなのですが、繁忙期の8月には約6500杯を売り上げました。おかげさまで “忙しいラーメン屋” になりつつあります」

──どんな味なんですか?

近藤さん「スープは魚介ベースの醤油味です。低温でローストした『レアチャーシュー』はチャーシューというよりローストビーフのようなビジュアルで、ちょっと説明できないおいしさです」

──うお〜! 食べた〜い!! 加西SA(下り)でしか販売していないんですか?

近藤さん「山陽自動車道の三木SA(上り)でも食べられますが、内容が少し違います。ウチではトッピングとして名産の柚子が乗っているほか、地元・加西の食材にこだわって作っています。このバージョンが食べられるのは加西SA(下り)だけです」

──なるほど、ありがとうございました!


関西から九州方面に車で行く層にとっては朗報だが、それ以外の者は一生食べられないかもしれない『シン 世界一忙しいラーメン』。10分で完食することも無理ゲーとまでは言えないようなので、高速バス民も果敢にチャレンジしてみてほしい。次のお正月に必ず行くからね〜!


(※ 追記 人類みな麺類系列で『世界一暇なラーメン屋』というブランドもあり、『世界一忙しいラーメン屋』と対義になっているらしいぞ)

・今回ご紹介した施設の詳細データ

施設名 加西サービスエリア(下り線)
住所 兵庫県加西市畑町2276-2
時間 24時間
定休日 無休

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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