私はどういうワケか「定期的にマキシマム ザ ホルモン好きの人と出会う宿命」を背負っていて、過去15年間で総勢5人のガチ・腹ペコ(ホルモンのファンのこと)たちと友情を築いた。その状況であれば私も腹ペコ化しそうなものなのだが、皮肉にも結果は逆だった。

私が出会った1人目の腹ペコは地元の同級生。名をミズキちゃんという。彼女はとにかくカラオケでマキシマム ザ ホルモン(以下ホルモン)の曲を歌いまくる女性だ。特に当時ヒットしていた楽曲『恋のメガラバ』を、私は彼女の声でのべ100回以上も聴かされるハメに。

その結果……私は本物の音源を聴くより前に『恋のメガラバ・アレルギー』を発症。本記事は私が “ホルモン食わず嫌い” を克服するため、思い切ってロンドンへ飛んだ全記録である。

・腹ペコたちプレゼン下手くそ問題

欧州5カ所を巡るマキシマム ザ ホルモンの海外ツアー『EUROPEAN TOUR 2022』は、6月17日のロンドン公演が最終ワンマンライブ。会場は有名ライブハウス『Electric Brixton』だ。私は人生初の生・ホルモンを拝むため、飛行機を乗り継いでここへ来た。

開演2時間前には長い行列が出現。客はほぼ現地人。この人たちは一体どんなキッカケでホルモンの存在を知ったのだろう? 考えても1ミリも分からないのでミズキちゃんの話に戻ろう。

本記事をご覧の方ならご存知かと思うが、ホルモンの楽曲はメロディも歌詞も非常に難解なものが多い。アレは “ホルモンの人が歌っているからイイ” のであって、カラオケで、しかもホルモンの「ホ」の字も知らない友人に歌い聞かせるべきものでは決してないと思う。

私が次に知り合ったのは「いかにホルモンのライブが楽しいか」を熱弁してくれるライブ男子だった。しかし「生ニンニクを食べてからでないと入場できないライブがあったんスよ! 超サイコーッスよぉ!!」などといった話を延々聞かされた私は「敷居高すぎだろ」とドン引き。


結果として彼らは、大好きなバンドのプレゼンに大失敗したのであった。


しかしながら、私は「こんなに皆がイイって言うんだから、多分ホルモンって、イイんだろうな」と思ってもいた。そして今回、私に突如ロンドン行きを決意させたのもまた、最近知り合った腹ペコに言われた一言だったのだ。

これは個人的に「100点のプレゼン」と感じたので、一語一句そのまま書き起こしておこう。


「ホルモンってさぁ〜ライブのチケットがマジで全っ然取れないワケ。10年間1度も買えない人だっているんだからね。でもさぁ、今回のヨーロッパツアーなら買える可能性が上がるワケよ。こんなチャンスは2度とないかもね? しかもさ……ついでにロンドン観光もできるんだよ!」


・秀逸すぎた

……いかがだろうか? チケットと海外ツアーの希少性を訴えることで購買意欲を刺激し、ダメ押しに観光という付加価値を加える周到さ。私のイギリス好きを計算しての巧みな言い回し、まさに営業のプロというほかないだろう。

つまり何が言いたいのかというと、オタクってのは往々にして視野が狭くなりがち。そもそも私はずっとホルモンに興味を持っていたわけだから、過去の腹ペコたちがプレゼンをミスりさえしなければ、もっと早く彼らに出会っていたかもしれないのだ。新規へのプレゼンは計画的に……そう切に願う次第なのである。

……さて、話をロンドンに戻そう。時刻は17時30分。このあと18時から、現地のファンを対象としたミートアンドグリート(交流会)が行われる予定だ。ミートアンドグリートとは、少々お高いチケットの購入者を対象に “アーティストと直接会える” 等の特典を付けるシステム。日本だとまだ珍しく感じるかもしれないが、海外では割と一般的なのだそうだ。

私は記者として特別に、後方から見学させていただける段取りになっている。モヒカン頭の海外腹ペコさんの後をついて……うわぁ、よく見たらこの人 “ばばあ” (ホルモンのCDジャケットでおなじみ)のジャケット着用してるゥ……! ばばあと目を合わさぬよう、薄暗いライブハウスの階段を登ると……


ウ、ウワァーーー!!!!! あまりに急すぎるご本人登場!!!!!!


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執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.