いつの頃からか始まった空前の「タコスブーム」。気づけば都内でも専門店が増え、メキシコ料理とは全然関係ない業態でも、タコスもしくはタコテイストのアレンジメニューを用意していたりする。たとえばスパゲッティのパンチョは「タコスパ」なんてメニューを販売しちゃったりして。

とにかくタコスはここ数年で急激に市民権を獲得している。ということは、タコスを提供するお店の人気も高まっているはず。さらにいえば、以前からあるファストフード「タコベル」も人気が爆発していても不思議ではないよね?

ところが、久々にお店に行ってみたら、何かこう上手く時代とハマっていない印象を受けた。その理由について、私なりに考察してみた。

・空前のタコスブームなのに

いつ頃からタコスをメインに提供するお店が増え始めたのか、正確にはわからないのだが、私が思うに、コロナ禍前は都内でも専門店は限られていた気がする。コロナ明け頃から少しずつそれらのお店が増え始め、今ではSNSでも画像や動画を頻繁に目にするようになった。

昨年は編集部のイナバが「タコス通信」という連載を執筆し、東京・神奈川を中心に約10店舗を紹介するに至っている。今年に入っても新店舗の情報を目にするので、タコスブームはいまだ衰えていないと言っていいだろう。

その先駆者としてシーンをけん引してきたタコベルは、現在どうなのか? その状況を把握するために、私は東京・渋谷宮下パークのお店を訪ねてみた。


タコベルは、1962年にアメリカ・カリフォルニアで誕生した世界最大規模のメキシコフードチェーンである。アメリカを中心に世界で数千店舗を展開しており、手軽にメキシカンを楽しめるお店として親しまれている。

日本では1980年代に出店していたそうなのだが、その後撤退し、2015年に再上陸している。その1号店が渋谷・道玄坂に出店する際に、私は開店当日にお店に行っている。

この日は300人近くが行列になった。その最初の100人にオリジナルTシャツが配布され、私も1枚ゲットした。



あれから11年の歳月を経て、どれだけお店が増えたかというと、公式サイトで確認できるのは10店舗だ(2026年7月17日時点)。最初に申し上げた通りに、空前のタコスブームが襲来している状況を考えたら、物足りない気がする。

なぜ店舗数は大きく増えないのか? 今一度タコベルのタコスを味わいつつ、考えてみたいと思う。


メニューを見ると、今さらながら種類が少ないことに気づいた。タコスは大まかに1種類しかない。シェルをクランチ(油で揚げたトウモロコシのトルティーヤ)かソフト(柔らかいトルティーヤ)の2種類から選べるものの、中身はビーフの1種類しかなかった。


あとはシェアメニューとサイドメニュー、それにデザート。「タコベル」という割にタコ(ス)が少なかったんだな。ブリトーは3種類もあるというのに、


ちなみにこのお店にはなかったが、渋谷道玄坂店には平日昼限定の「ランチベル」というセットがある。宮下パークのお店にも導入すればいいのになあ。


私は「ビーフタコス2ピース」(税込1200円)を「ポテト・ドリンクバーセット」(プラス税込60円)で注文。ドリンクバーでドクターペッパーを注いで提供を待った。


呼び出しベルがなって商品を受け取った。久しぶりに見るタコベルのセット。こんなんだったっけな? 商品の性質上、ボリューミーではないことはわかっていたはずなのだが、久々に見ると、ちょっと寂しい気がしないでもない。


2ピースのタコスは、ソフトとクランチをそれぞれ1つずつ選んだ。包装紙から出すと、ますます寂しい印象が強くなった。でも元からこうだもんなあ。最近の平置きのタコスに見慣れてしまって、横倒しだと画的に寂しくなってしまう


ポテトは細切りのサクサクタイプ。チリパウダーやガーリックなどのスパイスを効かせており、ほのかに辛さがある。テイストはこれ1種類だから、選択の余地はなかった。


ソフトシェルを開くと、中にはレタスとチーズ、それからミンチが入っている。


実際に食べると、飾り気のないシンプルな味。何もトッピングしなかったので、味を際立たせるものがなく、よく言えば素朴。悪く言えば少々退屈である。


クランチの方がトウモロコシのトルティーヤで、パリパリとした食感が魅力。それがある分、先ほどのソフトよりも食い甲斐はあるものの、劇的に美味しくなるほどでもない。基本素朴であることに変わりはない。


・なぜブームに乗り切れないのか?

さて、久しぶりにタコベルを堪能して思ったのは、日本再上陸時とはずいぶん勝手が変わったということだ。当時は、タコスの専門店が少なかった。それゆえに「これが世界的チェーンのタコスなのか」と納得していた部分はあった。

しかし現在は専門店が増え、人気店まであらわれだして、強力な比較対象が出てきてしまっている。たとえば、私が訪ねた国内初の本格的なトルティーヤ専門店「トルティーヤクラブ トルティレリア」は、毎日トウモロコシを製粉して「コマル」と呼ばれる陶版で焼くこだわりぶり。

見た目に華やかでなおかつ味もいい。しかもタコス2ピースで税込1100円(取材時)だったので、タコベルとそれほど価格設定は大きく変わらない。そうすると、タコベルが優位に立てる点は立地しかなくなってしまう


競合店が増えることで、タコベルが不利になるポイントはほかにもある。それは写真映えしないことだ。他店はトルティーヤを平置きにして、具材をモリモリにすることで写真映えするように提供しているのに、タコベルは具材を挟んだ状態で提供しているので、見映えしないのである。

近年はSNSでの投稿がもっとも有効な宣伝手段のひとつなのに、写真映えしない形で提供していることがひとつのビハインドになっている。

実は本場アメリカでは、格安であることで支持を得ているそうなのだが、日本では他のファストフードと変わらない。そのため割高な印象を与えている可能性すらある。


これらがタコベルがブームに乗り切れない理由ではないだろうか。値段を見直すか提供方法を見直すか。とにかく何か手を打たないと、静かにブームが通りすぎるのを見送るだけになる気がするのだが。

日本でタコスの認知を高めた功績は大きい。できれば、何かの形で時代に乗ってほしいと思うのだが。また撤退なんてことにならないように、がんばってほしい。


・今回訪問した店舗の情報

店名 タコベル MIYASHITA PARK店
住所 東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK SOUTH3F
時間 11:00~22:30、土日祝10:30~22:30

参考リンク:タコベル
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24