うちの上司(編集長GO羽鳥)はちょっと変わった人だ。鈍感であるがゆえに多少のことには気づかないのはもちろんだが、男の部下にパンツを贈る癖(へき)がある。私(佐藤)も1枚もらった覚えがあるし、当編集部の原田には5~7枚も贈呈している。

そんな羽鳥は、過去の記事で男性にTバック着用を推奨していた。きっと私がTバックを履いていても、気づかないんじゃないのか? そう思い、Tバックを履いてみたところ、不本意ながら一瞬彼に殺意が芽生える結果となった。なぜだ……。

・ブリーフからもう1歩前へ

女性はもちろん、あまりパンツにこだわりを持たない男性は知らないかもしれないが、メンズTバックは存在する。当編集部の最寄りでは、伊勢丹新宿店のメンズ館地下1階で購入することが可能だ。


高級パンツを購入して以降、私の気持ちはボクサーパンツからブリーフに移っている。この先の人生はブリーフの道を歩んでも良いのではないか? くらいの心持ちでいるくらいだ。小学生の時以来、再びブリーフに回帰するタイミングに来ている。


そんな私が、Tバックに目が行くのは自然なことだった。ブリーフの先輩でTバックの先駆者でもある羽鳥が評価しているとなると、彼の意見は無視できない。1年遅れではあるが、私もこっそり “Tバック道” に足を踏み入れてみたくなったのだ。


・理由のない罪悪感

ということで、さっそく伊勢丹メンズ館のパンツ売り場で、税別2600円のTバックを1枚購入。


Tバックを買うのは、人生で初めての経験だ。繰り返すがメンズTバックである。パッケージには「Tバックブリーフ」とある。


いわゆる女性モノの下着を買う訳ではないのに、なぜにこれほどまでに緊張するのか? なぜか知らないけど、言われのない罪悪感のようなものを感じてしまった。男が男の下着を買うだけなのになぜなのか。きっと「Tバック」という言葉に、要らぬ妄想をかき立てられてしまうからだろう。


プラスチックの箱を開けると、そこには小さな布きれのようなものが入っていた。これが下着だとはにわかには信じがたい。私の知っているパンツよりもはるかに面積が小さいからだ。前を隠す最低限の面積しかない


背面に至ってはオケツ丸出し! ケツの頬っぺたが両方ともはみ出してしまうじゃないか。おい、パンツ! もっと隠せッ!! ブリーフでも、もう少し隠す “努力” をしとるぞ


と言っても仕方がない。それがTバックというものだ。「パンツのラインが出ないことが魅力じゃないか」、不安に感じた私は自分にそう言い聞かせた。


・いざ、履いてみると

さっそく履いてみよう。

脚を通す時、遠い昔の日本にパンツが持ち込まれた頃の情景に思いを巡らせた。きっとほとんどの人がフンドシだったのではなかろうか。いざパンツを履くとなった時、その頃の男たちは不安に駆られたはず。こんなフワフワしたものに、大事なところを守れるのか……と。


もしも当時の日本男児がそんな不安を抱えていたとしたら、今の私にはその気持ちがわかる……。こんな布きれで本当に大事なところを守れるというのか?



ワシャ、不安じゃ~……



これを履いてるだけで、何とも言えない気持ちになる。まして、下着姿を見られた訳でもないのに、職務質問受けそうじゃねえか。私がいかがわしい人間であることを差っ引いても、とてもじゃないが安心できない。

女性でTバックを着用している人もいると思うけど、よくこんな心もとない布きれに、ディフェンスを託すことができるなあと感心してしまう。もっと強い装備で日常を生活しなくて大丈夫なのか? 今の私の防御力は、ドラクエでいうところの「布の服」以下だぞ。


・怒り心頭!

仕方がない。羽鳥が気付くまで、Tバック検証をするしかない。できれば、気づいて欲しい。「お! 今日Tバック!!」くらいな感じで声をかけてもらえたら、そこで終了だ。だがしかし、相手は鈍感男である。さらにいえば、下着に気付く可能性は鬼のように低い。


私は不安であると同時に、ある身体的な変化に気付いていた。これは朝から晩まで今日1日、もたないかもなあ。せめて夕方くらいまでで、収まりをつけないと。羽鳥がTバックを勧めていたということは、この変化にも慣れるのか?


しかし慣れてくる気配はまったくない。2時間もたせて終わりにしようか。いや、2時間はムリ! 1時間が限界か? 羽鳥が勧めていたから……。パンツ上級者の羽鳥が勧めていたから。う~……。


だが、もはや限界だった。なぜ、ワシはTバックを履いているのか? その疑問が頭をもたげると共に、羽鳥の書いた記事のタイトルが頭をよぎった。


「【パンツコラム】もうすこし世の男性はTバックをはいたほうがいい」


この記事で彼はTバックを激賞するばかり。履きづらいという難点を指摘してはいるが、もっと重大な問題について触れられていないのである。私はもう1秒たりとも我慢ができない状態になっていた。ふと、羽鳥と目があったその瞬間


!!!!!!!! ゴラーーーッ !!!!!!!!



肛門ガーーーー!



オレノ肛門


食い込んで痛てえ……



どうやら、Tバックには向き不向きがあるようだ。少なくともワシには合わんかった……。まさかこんな形で、鈍感な上司を欺く企画が終了するとは夢にも思わんかったよ。とはいえ、即座にパンツを履き替えて、ワシは安心感を得ることができた。

それにしても、なぜ先に教えておいてくれなかったのか。肛門が死にそうになるほど食い込むというのに。一瞬怒りのあまりめまいがしたが、これもまた2人の絆を深くするきっかけになったと、ワシは理解している。


何より、みんな履きたいパンツを履いたらええんよ。みんな違ってみんないい。おしまい……。


Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24