日頃お世話になっているのに、1度もお目にかかったことがない──私にとって「中華蕎麦 とみ田」というラーメン屋はそういう存在だった。セブンイレブンとのコラボレーションでその名前を知っている方は多いだろう。私もセブンの「とみ田」監修のつけ麺をよく食べている。
しかし実際にお店に行ったことはない。そろそろ「とみ田」の真髄に触れてみるべきではないか。そして触れたことを知人や一族郎党に自慢して回るべきではないか。そんな思いに駆られた私は、速やかに出かける準備に取りかかり、現地を訪れたのだが……その際、とんでもない失敗を犯してしまった。
・幸福と後悔
決して「とみ田」に対して舐めてかかっていたとか、そういう話ではない。むしろ下調べの段階でその有名店ぶりにおののいていたくらいである。
というのも、あまりの人気ゆえか「とみ田」は予約制を採用しているのだ。平日朝8時、土日祝日は朝7時から始まる店頭受付を済ませたうえで、指定された時間(11時の開店以降)に再度来訪する必要がある。普通のラーメン屋と同じ調子で訪れると泡を食うだろう。
ただ、遠方からのお客さんや、私のように朝方の光を浴び続けると液状化する夜型人間のために電話予約制も用意されているので安心してほしい。こちらの受付は9時15分からだ。詳しくはお店のHPやTwitterを見るとわかりやすいかと思う。
とはいえ、その電話予約にも一定の気構えは必要である。私の場合、受付開始の9時15分から電話をかけ始めて、電話がつながったのは9時50分頃だった。「これって人気アーティストのライブチケット先着予約だっけ?」と途中で何度も思ったほどだ。
ともあれ、なんとか「とみ田」の席を勝ち取れたので、お店のある千葉県・松戸に直行。ちなみに電話予約の場合、案内は14時以降となるので注意だ。また、メニューの注文も予約時に行うことになっている。
お店に到着後、店員さんに点呼してもらったのち、予約時に伝えていたメニューの食券を改めて購入する。今回は手堅く「つけ麺【小】180g(1000円)」を選んでおいた。
入店からほどなくして、ようやく念願の “カップに入っていない「とみ田」” にありつけた。
波打つように盛られた麺がただただ美しい。店構えからして割烹のようだと思っていたが、出てきた料理からも気品がうかがえる。
ふんだんに魚粉の入ったつけ汁に麺をつけてすすってみると、もっちりとコシのある食感に濃厚な魚介の風味が緊密に合わさり、口の中から脳までを瞬時に幸福感で満たしてくれる。ここまでの苦労に見合って余りある美味しさだった。
やはりと言うべきか、コンビニの「とみ田」とは味わいが違う。本家本元を食べてみたことで、コンビニの商品もすさまじい再現度であることがわかったのだが、お店の器に入った麺や汁には、舌に迫るように躍動する旨味がある。
加えて言えば、どろりとしているほどのつけ汁なのに、むやみに塩辛いわけでもしつこいわけでもなく食べやすい。濃厚さと上品さが巧みに共存しているため、箸を持つ手がひたすらに動いてしまう。
そうして食べ進めていたところで、ふと気づく。麺とは別の柔らかな感触が箸先にあった。
チャーシューである。スープの中に隠れていたのだ。想像してみてほしいのだが、予期せぬチャーシューを発見した時の大儲け感は尋常ではない。海辺で綺麗な石を見つけた少年のような浮き立つ気持ちで口に含んだ瞬間、衝撃に襲われた。
信じられないくらい美味しい。厚みのある肉が脂とともにとろけていく。コンビニの「とみ田」にもチャーシューはあったが、比べ物にならない。人生で食べた中でもこんなに美味しいチャーシューがあっただろうか。正直この日1番の衝撃具合だった。
次第に腹の底の方から震えが湧いてきて、「とんでもない失敗を犯してしまった」という思いで一杯になった。
「とみ田」のメニューには「厳選焼豚トッピング(650円)」や、鶏肉などを含む「特選全部乗せトッピング(850円)」がきちんと用意されている。しかし私は慎重を気取ってそれらを避けてしまった。
これほど美味しいなら臆することなく頼めばよかった。しかも券売機には「初めてのお客様には特選全部乗せトッピングをオススメしています」という注意書きがあったにもかかわらず、緊張からかそれすらも見落としていたのだ。
何が大儲けか。これでは驚異の大損だ。うらぶれた箸遣いで残りを食べ進めながら、何とはなしに隣の席に座っていたおじいさんの方を見やると、彼のトレイには「特選全部乗せトッピング」がしっかり参列していた。そのうえ彼は帰り際に、
「友人に美味しいってお勧めされたから来てみたけど、本当に美味しかったよ。ご馳走様でした」
そう言い残して去っていったのだ。おそらくトッピングの美味しさについてもその「友人」に教えてもらっていたのではなかろうか。
私の脳内で「人脈」の2文字が爆(は)ぜた。「知人や一族郎党に自慢しようとする前に、情報通の友人の1人くらい作れ」と言われた気がした。消極的に生きてきた私が、人生の失敗までも教えられるまさかの結末となった。
・参考にして、堪能してほしい
そんなわけで、要約すると「とみ田」のつけ麺はやはりコンビニ以上に絶品だったが、その印象を上回るほどにチャーシューの美味しさは強烈だったし、お店を満喫するには入店方法を含めて情報が大事という話である。
予約の手間はあるが、読者の方々にもぜひ「とみ田」のつけ麺やチャーシューを味わってみてほしい。この記事が誰かにとっての「情報通の友人」になれたなら、私も報われると思う。
・今回紹介した店舗の情報
店名 中華蕎麦 とみ田
住所 千葉県松戸市松戸1339
営業時間 11:00〜15:00(店頭受付は平日8:00~ / 土・日・祝7:00~、電話予約は平日のみ9:15~)
定休日 水曜
参照元:中華蕎麦 とみ田、@tomitahonten
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
▼セブンとのコラボでお馴染みの「中華蕎麦 とみ田」の本物
▼コシのある麺は質が極まっている
▼魚粉たっぷりのつけ汁もたまらない
▼麺を食べ終わったあとのスープ割りもさっぱりして美味しい
西本大紀













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