先日、セブンとのコラボでお馴染みの人気ラーメン店「中華蕎麦 とみ田」を初訪問した際のことを記事に書いたのだが、その後ロケットニュースのリクエストボックスに1通のメールが届いた。
連絡をくださった方は、「とみ田」のある千葉県・松戸市に約30年住んでいるのだという。その方いわく、松戸には「とみ田」と双璧をなす「兎に角(とにかく)」という “もう1つの名ラーメン店” が存在するらしく、同店の取材をしてほしいとのことだった。
「『とみ田』に行ったなら『兎に角』も取材しないと、松戸市民を敵に回すことになるやもしれません」とも書かれていた。怖い。いくらなんでも松戸市民総出で襲われたらひとたまりもない。それに何よりその名店が気になる。というわけで、さっそく現地に向かった。
・もう1つの名店、もう1つのアレ
「兎に角」は、松戸駅から徒歩3分ほどの場所に店を構えている。「とみ田」との距離はそこまで離れていない。
早足でお店に着くと、外壁にメニュー表が打ち付けられているのが見えた。
ラーメン、つけ麺、油そば、坦々まぜそば(全て790円)と、各種取り揃えてあって幅広い。情報によれば、「兎に角」は特に油そばで有名とのことだ。先日訪れた「とみ田」は評価に違わぬ美味しさだったが、それに匹敵するというのだから楽しみでしかない。
期待に胸を膨らませながらメニューを読み進めていたところ、膨らんでいた胸に突如針が刺さったような痛みが走った。
麺メニューを紹介するスペースの下、トッピングの欄にその文字は刻まれていた。
全部のせ。
それを目にした瞬間、脳内に記憶がフラッシュバックした。「とみ田」を訪れた時のことである。「初めての方におすすめ」という説明があったにもかかわらず、私はかの名店の「全部のせトッピング」を臆病にもスルーしてしまい、心底後悔する羽目になったのだ。
重大な過失すぎて、今なお引きずっているほどである。全国的に見ても「全部のせ」という単語にここまでトラウマを持っている人間は私くらいだろう。まさかその傷も全く癒えぬうちに、同じ松戸のラーメン店で同じ単語に出会うことになるとは。
一体これは何の因果か。神の気まぐれか。あるいは情報を提供してくれた方はこのことも織り込み済みだったのだろうか。ともあれ、逆にこれはチャンスでもある。失敗から学び、次に活かす。人間的成長の機会が今まさに巡ってきたというわけだ。
・またしても
今度こそ過失は犯さないという強い意志を秘め、「兎に角」の敷居をまたいだ。食券機で「油そば」の普通盛と「全部のせ(430円)」のボタンをしっかり目視して押す。食券を買う際に指差し確認した人間は私くらいだろう。
待つこと10分ほどで丼が到着し、到着するやいなや私は箸を手に取っていた。
何せ麺を覆い隠さんばかりの肉の量である。大ぶりのチャーシュー4枚にほぐしチャーシュー、燻製卵などがふんだんに盛られているのだから、心躍らないわけがない。これが「全部のせ」の世界かと実感する。
やや苦労しながら丼全体をしばらく混ぜ合わせれば、タレの色に染まった魅力的な麺がお目見えする。
食らいつくようにすすってみると、見た目通りに、いや見た目以上にタレが濃密に絡んでいる。口の中で醤油ベースの味わいと魚介のエッセンスがにぎやかに沸き立ったあと、キレ良くまとまって喉を通り過ぎていく。
油そばとはいえ、ギトギトの油っこさではない。マイルドだ。それでいて舌と鼻が喜ぶような風味豊かさが備わっており、1口食べたらもう止まらない。加えて自家製だという縮れ太麺のモチモチした食感も、丼に対するのめり込みに拍車をかける。これは確かに名店の味だ。
「とみ田」もそうだったが、松戸の名ラーメン店の作るものはどこか上品だと思う。チャーシューの方も、しっとりとした肉質と優しい旨味で麺に寄り添う仕上がりになっている。
食べやすいし、実に美味しい。お店側の丁寧な仕事ぶりと、来客を喜ばせようというもてなしの心を丼から感じるのは気のせいではあるまい。
この名店を教えてもらえたことに感謝しつつ、そしてトッピングまで満喫できたことに安堵を覚えつつ完食した。確かな満足感とともにお店を出て、ふと、何とはなしに外壁のメニュー表の方を振り返る。
「油そば 790円(割りスープ付き)」
(割りスープ付き)
割りスープ頼むの忘れた。
膝から崩れ落ちそうになる。何ということだ。何が満喫か。恐るべき詰めの甘さだ。あまりに夢中になっていたせいで、最後の重要な行程を失念してしまうだなんて。
逆に言えば、割りスープによる味変やさっぱり感がなくとも堪能できたほどに、上品で食べやすかったということだろう。しかし後悔はひたすらに募る。いやしかし過ぎてしまったことは仕方ない。だがしかし味わってみたかった。でもしかしもう遅い。ところがしかし……
心の中でこんなに逆接の接続詞を浮かべたのは初めてだった。ラーメン屋の前で「5分前にタイムリープしたい」と思ったのも初めてだった。「とみ田」の時に続いて、またしても失敗を犯してしまうというまさかの結末に打ちのめされながら、その場を後にしたのだった。
・後悔はないが、心配はある
己の愚かしさを悔いる結果にはなったが、お店を訪れたこと自体に後悔は全くない。名店であることに当然変わりはないのだ。油そばを食べたことのない方でも食べやすいだろうと思える一品だったので、読者の皆さんにも足を運ぶことをおすすめしたい。
それにしても、これほどのラーメン店が2つも存在する松戸に住む人々が羨ましい限りだ。この事実がより知れ渡ったら、むしろ松戸市民の方々こそ恨みを買う恐れがあるのではなかろうか。
・今回紹介した店舗の情報
店名 兎に角 松戸本店
住所 千葉県松戸市根本462
営業時間 11:00~23:00
定休日 無休
参照元:「兎に角」公式HP
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
▼「とみ田」に並ぶといわれる名店「兎に角」の油そば
▼油っこくなく、上品かつ風味豊かで美味しい
▼チャーシューもあっさりしっとりで食べやすい
▼次こそは割りスープをする。何が何でもする
西本大紀
















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