平昌オリンピックにて、見事銅メダルを獲得した女子カーリング日本代表。「そうだね」が訛ったと思われる方言「そだねー」は、競技中の選手たちがよく口にしていたことで大きな話題となった。もしかすると、今年の流行語大賞に選ばれるのでは? という勢いだ。

そこで最近、ふと思い出したことがある。元道民の私(あひるねこ)が、今まででもっとも驚いた北海道の方言についてだ。突然だが、あなたは普段、電話に出る時に何と言うだろうか? おそらく多くの人は「はい、〇〇です」と答えると思う。しかし、私が目撃した道民のおじさんは、なんと「〇〇〇〇」と言って電話に出るのだ! ナニ、それ!?

・北海道の方言

物心ついてから約20年を北海道で過ごした私が思うに、道民の訛りはそこまで強くない。イントネーションが少し独特な部分もあるが、例えば青森や秋田、沖縄のお年寄りのように、何を言っているのかまるで分からない、なんてことはほぼないはずだ。

とは言え、北海道は広い。同じ道内であっても、函館と網走では距離的にも完全に他県である。実際、私は「そだねー」と言っている人を見たことがないし、面積が広いぶん、地域によって使われる方言、使われない方言があると思う。

・過去最高に謎な北海道弁

そのことを分かった上で私がお伝えしたいのは、以前の勤務先で目撃した謎すぎる電話の出方だ。どうやら方言らしいのだが、これまで私が見聞きした北海道弁の中でもブッチギリに意味不明である。初めて聞いた時は、マジでふざけてんのかと思ったぞ。以下で当時の様子を振り返りたい。

・新入社員の頃の話

大学を卒業後、私は一般企業に入社。営業として正式に札幌勤務となった。まだ右も左も分からないド新人だ。とりあえず、かかってくる電話に片っ端から出るのが私の仕事だった。そんなある日のこと。同じ支店の先輩社員に電話を繋ぐと、その電話の出方があまりにも特殊すぎたため、思わずその先輩をガン見する事態に。

先輩社員は何と言って電話に出たのか? その話をする前に、まず北海道特有の変わった言い回しについてご説明しておきたい。

・毎度様です

ビジネスシーンにおける便利な挨拶といえば、「お世話になっております」だ。電話に出る時、メールをする時は「お世話になっております」「お世話になります」から始めるのが普通だろう。しかし、なぜか北海道ではあまりこの言葉を使わないのだ。その代わりに使うのが、「毎度様です」である。

年代や業界によって違いはあるかもしれないが、少なくとも私がいた支店では「毎度様です」が主流だった。営業先にも「毎度様でーす!」と言って入るし、電話での挨拶も「毎度様です」だ。ここまではいいだろうか? さて、それでは本題に戻るとしよう。

・先輩にかかってきた電話

同じ支店の先輩社員、イワモトさん(仮名)は、40代前半くらいの面白いおじさんだった。いつものように私が電話に出ると、「イワモトさんいる?」とお客さん。「少々お待ちください」と、私はその電話をイワモトさんのデスクに転送した。「イワモトさん、〇〇の△△さんからお電話です!」

「あいよー」

イワモトさんは小走りで自分のデスクに駆けつけ、椅子に腰を下ろすと勢いよく受話器を取った。その時、イワモトさんはこう言ったのだ。


「毎度様でしたー! イワモトでしたー!!」


え?


「でした」……? 「です」じゃないの……? ていうか、何で過去形やねん!!!

・「でした」って何だよ

普通に考えたら「毎度様です! イワモトです!!」が正しいだろう。しかし、イワモトさんはなぜか「でした」と過去形で答えだしたのだ。想像してみて欲しい。電話をかけた相手がいきなり「〇〇でした」と言ってきたらどうする? 「お、おう……。いや、話終わってんじゃん!」とならないだろうか?

「お相手は〇〇でした」的な、なにやらラジオDJチックな言い回し。そのあまりにも謎な電話の出方に、最初イワモトさんがふざけているんじゃないかと思ったくらいだ。が、それ以降も「でした」「でした」と言い続けるイワモトさん。さすがに40代の先輩に「何ワケの分からないこと言ってんすか?」とも言えず、謎は解決しないまま現在に至る……。

・この方言、使う?

ここ数日の「そだねー」ブームで、私は唐突にこのことを思い出した。調べてみると、どうやら「でした」も北海道の方言らしい。イワモトさん以外で使っている人を見たことがないので、そこまでメジャーではないのかもしれないが、インパクトでいうと、これまでに聞いた北海道弁の中ではトップである。

だが、もしかすると今も使っているおじさんがいるかもしれないぞ。北海道に転勤する可能性がある人は、驚かないように覚えておくといいだろう。

執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.