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中高生のSNSアプリ「ゴルスタ」が、ネット上で注目を集めている。このSNSは、かなりユーザーに厳しい運営を行っているらしく、運営側を批判する投稿を行うと、アカウントを停止されるそうだ。復帰するには批判的な投稿を削除して、反省文を提出しないといけないのだとか。

ネット上では、運営批判をすると、威力業務妨害でアカウントを停止されるとの話も広まっている。そもそも威力業務妨害とは、どういった行為を指すのだろうか? 専門家に聞いてみた。

・運営批判でアカウント停止

Twitterの投稿をまとめるTogetterの「中高生専用SNS『ゴルスタ』運営批判は威力業務妨害でBAN、復帰には協力姿勢と反省文という驚異の体制を見て震える人々」を見てみると、ゴルスタのアカウントを停止された人物が、Twitterに投稿していた内容がまとめられている。

それによると、アカウントを停止された人物は、アカウントの復帰を願い、運営に謝罪する文章を送信している。どういった内容でゴルスタ運営を批判したのかは不明だ。

・運営妨害などで威力業務妨害?

一方、ゴルスタ公式のTwitterアカウントは、アカウント停止に関する方針について、元ユーザーを例に出して、次のように伝えている。

「ある元ユーザーがゴルスタの円滑な運営を妨害する行為を何度も行い、また限度を超す非常に悪質な手口であったため『威力業務妨害』で警察に通知します。加担した人間やツイート拡散に協力した人間の特定も行いました。一般のゴルスタユーザーは本件に絶対に関わらないように強くお願いします」(Twitterゴルスタ公式アカウントより引用)

運営を妨害する行為や、悪質とされる手口の内容は不明だ。先に挙げたTogetterの投稿タイトルのように、「運営批判」が威力業務妨害として扱われたのかもわからない。そもそも威力業務妨害とはどういった行為のことをいうのか。また仮に、運営批判をしたことが、威力業務妨害に当たるのかを、アディーレ法律事務所の岩沙好幸先生に尋ねた。

・質問「運営の方針がおかしい」とか「運営はクソ」など、運営方針を批判することが、威力業務妨害にあたるか?

回答「威力業務妨害罪は、『威力を用いて人の業務を妨害する』という犯罪です。“威力を用いる” とは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことをいいます。例えば、食堂にシマヘビ20匹をまき散らした場合(大判昭7・10・10)や、競馬場の馬場に釘を撒き散らした場合(大判昭12・2・27)に威力妨害罪が成立します。

今回のように、例えば『運営の方針がおかしい』とか『運営はクソ』とネットに書き込む程度では、人の意思を制圧するに足りる勢力とは言えないので、威力業務妨害罪は成立しないでしょう。

ネットの誹謗中傷が問題になるのは、業務妨害罪の中でも偽計業務妨害罪です。偽計業務妨害罪とは、虚偽の情報や噂などを流して他人の営業を妨害する行為です。過去の裁判例では、バスの乗客に対して『この運転手は癇癪(かんしゃく)を起すから用心しなさい』と告知した行為について偽計業務妨害罪が成立したものがあります(大判昭10・3・14)。

今回のように、『運営の方針がおかしい』とか『運営はクソ』とネットに書き込む行為もこれに近しいものとして同罪が成立する可能性はあるでしょう。また、公然と人(会社も含む)の社会的評価を害する書き込みをしているので、侮辱罪にあたる可能性もあります。

・偽計業務妨害のことだった?

なるほど。もしかしたら、ゴルスタ公式アカウントが言っているのは、「偽計業務妨害」のことだったかもしれない。「円滑な運営を妨害する行為」や、「限度を超す非常に悪質な手口」とはどういった行為のことを指しているのか? いずれにしても、穏やかではないことは確かだ。

参照元:Togetter「中高生専用SNS『ゴルスタ』運営批判は威力業務妨害でBAN、復帰には協力姿勢と反省文という驚異の体制を見て震える人々」、Twitter ‏@micoochan
取材協力:アディーレ法律事務所 岩沙好幸先生(東京弁護士会所属)
執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24