家庭用テレビの大型化、インターネットの普及といった理由により、映画館がかつての勢いや賑わいを失っているかと思いきや、どうやらそうでもないらしい。映画製作配給大手四社の団体「日本映画製作者連盟」によれば、1990年代前半を境にスクリーン数も入場者数も増加傾向で、映画館人気は健在のようだ。
にもかかわらず、県庁所在地に映画館がない地域がある……それはなんと奈良県奈良市だ!
・5年前まで奈良市にもあった
かつて日本最古の都があった奈良。現在も景観を損なわぬよう、建物を作る際には高さ制限があったりと、なにかと規約が厳しい。映画館がないのもそのためか……景観を守るとかそういう理由のためなのか!? と思いきや、実はそうではなく5年前、2010年まで奈良市にも映画館はあったのだ。
その映画館とは、奈良を代表する目抜き通り、三条通りで ひときわ存在感を放っていた『シネマデプト友楽』。近鉄奈良駅から歩いて約5分、記者が一生懸命走れば3分ほどで着くであろう好立地にあった、幻の映画館シネマデプト友楽! 「初カレとデートした思い出の場所なのに」「気軽に行きやすい場所にあったので残念」という声は未だに聞こえてくる。
郊外に増えた競合館の影響によって動員が伸び悩んだことや、さまざまな理由が重なって残念ながら閉館してしまい、現在 跡地にはマンションが建っている。
・ないない争いをしていた徳島市は3年前に完全復活
調べてみると、奈良と同じく県庁所在地に映画館がない地域が「かつて」あった。それは徳島県徳島市。現状を危惧し「このままじゃあいかん」と名乗りを上げたのは、アニメーションを主とした映像作品の企画制作などを行う『ユーフォーテーブル』だ。
3年前、2012年に同市東新町の商店街内に『ユーフォーテーブルシネマ』をオープンさせており、アニメを軸にした上映、関連グッズの販売や声優のトークショーなどで人気を博しているらしい。
・映画館がなくてもがんばる奈良市「なら国際映画祭」
映画館がない状況を、奈良市民は甘んじて受け入れているのか……? 否、奈良市民は負けない! がんばっている!! なにより奈良はカンヌ国際映画祭で受賞した「河瀨直美監督」の出身地であり、在住地。映画とは切っても切れない縁なのだ。
その証として河瀬直美さんが中心となり2010年には『なら国際映画祭』がスタート。2年に1回の開催に加え、関連ベントも多数行われている。今年のシルバーウィークには「星空上映会」と題し、屋外で映画を楽しむ企画も行われた。
そのほか、500円で手軽に映画を楽しめる移動型映画館『ならシネマテーク』が毎月開かれたり、映画館並みの設備がそろうプライベートシアタールーム『ならまちシアター青丹座』のオープンなど、奈良市内で「映画鑑賞の場づくり」は勢いを増している! そう「映画を見る文化」は、ほかの都市にも引けを取っていないのだ!! ……映画館はないけど。
【続報】
「【豆知識】県庁所在地に映画館がないのは奈良だけじゃない! 山口県山口市も映画館ゼロだった / 2012年に消滅していたと判明」
参照元:日本映画製作者連盟、なら国際映画祭
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.、なら国際映画祭