「スクープだっ!!」思わず心の中でガッツポーズを決めたことは、ここだけの秘密である。ナンチャッテ新聞記者をやっていた時分でさえ、とんとスクープとは無縁だった私(K.Masami)。しかし、ようやくツキが回ってきたようだ。

動物の飛び出し注意を呼び掛ける標識については、みなさんもご存じだろう。道路の脇に立っている、黄色いアレだ。警戒標識だなんて呼ばれたりもするが、高速道路なんかで目にする。あの標識に、鹿が描かれていることはママあるが……なんと、角の向きが逆ではないか! 

公的な看板でありながら、これほど思い切り間違っているのはいかがなものか。何か意図があってのことかもしれないが、万が一に、誰も気が付いていない恐れもある。さっそく教えて進ぜなければと、国土交通省に連絡したところ驚きの事実が発覚。まさかそんな理由があったなんて……。

・国交省に聞いてみた

ある時、車で山道を走っていた時のことだ。同乗者が「あの鹿の標識変じゃない?」と言ってきた。これまで鹿マークの警戒標識に違和感を覚えたことはなかったが、確かに角の向きが不自然だ。奈良公園で見る鹿たちの角と、向きが逆。進行方向に、にゅいーんと伸びているのである。

こんな前向きな角を持つ鹿が仮にいるとすれば、さぞかし餌が食べにくいことだろう。これはオカシイ。がしかし、記者と同乗者の見間違いかもしれない。そう思い、国土交通省の道路標識に関する公式サイトに目を通したところ、やはり逆だ。何故なんだ……! 

いても立ってもいられず、記者は国交省に電話。すると、予想外の返事が返ってきた。


道路標識については、国連で定められています。


まさかの、ワールドワイド!! 急いで海外の動物飛び出しに関する標識をググってみたところ、確かに角の向きが逆なモノが散見された。ということは、記者が知らないだけで、世界には角の向きが奈良公園の鹿とは違うヤツが存在するのかもしれない……? 

念のため電話対応をしてくださった方に、標識のモデルとなった鹿の種類について尋ねてみたが「そこまではわからない」とのことだった。まあ仕方がない。よくわからんが、国際的にそう決められているのであればこれ以上は何も言うまい。

・柔軟性のある動物の警戒標識

ただしこの動物の飛び出しに関する警戒標識、かなり柔軟性があるようだ。基本的には鹿マークであるとするが、その場に飛び出す動物や状況に従ってマークの変更が可能とのこと。確かにタヌキやクマの標識なんかも見かけるな。なるほど。

先に、これまで鹿の警戒標識に違和感を覚えたことがなかったという話をした。確かに記者は、日々ボヤっとして生きている。ほとんどの物ごとを大体の枠組みで捉えている。しかし、これまで鹿の警戒標識を疑問に思わなかったのには理由があったのだ。

・奈良の警戒標識に注目

その理由とは……記者が暮らす、奈良市に立つ鹿の警戒標識の角の向きは正しいからだ! なんということだろう。奈良公園を中心として、角が進行方向に延びるいわゆる公式マークではなく、ほとんどが後ろ向きの標識なのだ。

どうりで、今まで何ひとつ不思議でなかったわけだ。奈良県庁に問い合わせてみたところ、公式マークの鹿の角の向きについては把握しているという。しかし、わざわざそのデザインを変更して、奈良にいる鹿たちと同じ角の向きになおしていると言うではないか。

鹿に対するプロ意識がハンパないな!! 柔軟性がある、動物飛び出しに関する警戒標識だからこそできる技であるが、鹿に対する愛情が感じられるエピソードだ。

いやはやしかし、道路標識も奥が深い。まさか国際レベルにまで話が広がっていこうとは、考えもしていなかった次第。スクープだと喜んだのもつかの間、自分の無知さを思い知るだけの結果となってしまった。世の中そんなに甘くないな。まあ、奈良の鹿に対する愛情を再認識できただけでも良しとするシカない。

参照元:国土交通省公式サイト
Report:K.Masami
Photo:Rocketnews24.

▼国連で定められている、動物の飛び出しに関する警戒標識。鹿の角が前向き

▼公式マークを真似たであろう、奈良市の路面のカラー舗装

▼後ろ向きバージョンもあり

▼というか、奈良公園内の標識の角は大体後ろ向き

▼奈良の鹿に対する愛情が感じられるね~