
「冒険」という言葉を聞いて、どのように感じるだろうか? 記者(私)は生来の出不精で、アクティブなことが苦手。この言葉を聞いてもワクワクしない横着者である。しかし世の中には、「冒険」と聞いただけで胸躍り、見たことないもの、行ったことがない場所にトキメキを感じる人がいる。荻田泰永氏もその一人である。
・北極点無補給単独徒歩到達
彼は2014年に、世界でたった2人しか成し遂げたことのない、過酷な冒険にチャレンジしようとしている。それは「北極点無補給単独徒歩到達」だ。カナダの北端の陸地から、800キロを最大50日間かけて独りで歩き、北極点を目指す。その間、一度も物資の補給を受けない。あまりにもとてつもないチャレンジのため、想像することさえもできない。もしも達成したら、日本人初となる偉業だ。
・難易度は格段に高まっている
無補給で北極点に単独でたどりつくのは、至難のわざである。1994年にノルウェーの冒険家ボルゲ・オズランド、2003年に英国の冒険家ペン・ハドウがそれぞれ成功しているのだが、現在はその難易度が格段に高まってるという。なぜなら、北極海の海氷が年々減少しているからだ。
・行く手を阻む氷の亀裂と乱氷帯
言うまでもなく北極に陸地はない。北極海があるだけだ。したがって、氷が張っている間しか、徒歩で北極点にはたどり着けない。だが肝心の氷が薄くなって動きを増していることで、リードと呼ばれる氷の亀裂や、氷と氷がぶつかって生まれる乱氷帯と呼ばれる氷の山が生まれやすくなっているのだ。
リードや乱氷帯で進路は断絶され、迂回やリードを泳いでの横断を余儀なくされる。発生場所の予測は難しく、突然巨大なリードが発生することもある。実は2012年に荻田氏がチャレンジしたときには、退路さえも断たれる危険のある巨大なリードが発生したため、断念せざるを得なかった。
・100kgもの物資とともに歩く
ただ歩くだけではない。無補給であるため、北極点を目指す50日間の物資とともに歩くのである。その重さはスタート時に約100キロ。それも極寒のマイナス50度の気温のなか、ひたすらに歩くのである。
・20回、ホッキョクグマに遭遇
さらに過去12回の北極冒険の間に、ホッキョクグマに20回遭遇し、テントを襲われたことも2回あったそうだ。これはただ歩くだけではない。荻田氏は問題なく追い払えるようになったと話すが、常に死の危険と隣り合わせの極地冒険なのである。
・空腹による葛藤
1回のチャレンジで体重が10キロも落ちるほど、体力の消耗が激しい。毎日5000キロカロリーの食事を摂っても、常時空腹感を抱えて歩き続けるそうだ。携行している食料を食べれば良いのだが、過不足ないように計算して準備しているため、ひと時の空腹を満たすと、あとの食料がなくなってしまう。その葛藤を抱えて歩き続けることが辛いと、荻田氏は話す。
・半径500キロに誰もいない
50日間、誰にも会わず、会話を交わすこともほとんどなくなる。「孤独には耐えられるのか?」そう質問したところ、「鈍感なのか、孤独は感じない。苦にならない。現地(北極)に入ると、そちらが日常になって人に会いたいとは思わなくなる」と話す。孤独は彼にとって深い問題ではないようだ。しかし危険に遭遇したとき、助けてくれる人は誰もいない。2007年、テントで出火したとき、手に大やけどを負ったそうだ。だが、半径500キロには誰もいない。そんな状況でも一人で立ち向かったからこそ、今、彼はここにいる。
・偉業を成し遂げることができるか!?
荻田氏は2014年2月初め成田からカナダへと向かう。約1カ月の準備期間を経て、3月2日にチャーター機でカナダ最北端のディスカバリー岬に降り立ち、そこから北極点を目指す。順調に進めば4月20日に北極点に到達し、日本人初、世界で3人目の無補給徒歩単独到達となる。だが、困難は数えきれないほど待ち受けているだろう。とにかう万全な体制で、冒険に臨んで欲しい。
参考リンク:北極冒険家荻田泰永のページ、Facebookページ
Report:元ほぼ津田さん(佐藤)
Photo:RocketNews24
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]
▼2012年のチャレンジのダイジェスト映像
▼2012年のチャレンジについて語る荻田氏
▼テントに接近してきたホッキョクグマを追い払う
佐藤英典

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