関東を襲った大雪の影響で、首都圏の交通機関は一時マヒ状態に陥った。その一方で、4年ぶりの積雪にはしゃぐ大人たちの姿をあちこちで見かける。雪だるまを作るくらいなら良いのだが、絶対にやめた方が良い行為がある。

それは雪を食べること。雪にはゴミやチリなどが含まれているだけではなく、腹痛を起こす原因にもなりかねないからだ。では、北極や南極をはじめとする極地を冒険している時はどうするのだろうか? 冒険家に聞いてみたところ、やはり雪は食べないそうだ。「そんな非効率なことはしない」という。一体どういうこと?

・荻田氏に尋ねた

この素朴な疑問に答えてくれたのは、日本人初となる南極点無補給単独徒歩の冒険を成功させた、荻田泰永氏である。荻田氏によると、北極南極いずれの冒険でも、水分補給は雪で行うそうだ。

荻田「極地では、当然水分補給は雪で行います。沸かすのは、滅菌とか消毒のためではなく、温めないと飲めないからです。直接食べたりしません。そんな非効率なことはしませんよ」

非効率? そのまま食べた方が手間が省けると思うのだが、全然別の理由があった。

荻田「毎日野営する際に、雪を温めてお湯を沸かします。それを魔法瓶に入れて常備しているから、魔法瓶から水分補給した方が早いでしょ」

たしかに、もっともな答えである。手元に保温性の水筒があるのに、わざわざ雪に食らいつく必要はないだろう。

・極地の雪はキレイかもしれないけど……

ちなみに、東京のような大都会であれば雪も相当汚れていると思うが、空気がキレイな極地なら雪が汚れる要因は少ない……かもしれない。いずれにしても、雪が降ったからといって、はしゃいでかき氷のように食べるべきではないだろう。雪を食らわなくても、水分補給する術はいくらでもあるのだから。

協力:荻田泰永
Photo:荻田泰永, used with permission.
執筆:佐藤英典