▼盗まれる前のようす(渋谷アップルストア前)
201212275

▼盗まれた後のようす(渋谷アップルストア前)
201212271

▼ホームレスさんの寝床
tashiroisudeneru

気持ちよさそうにリクライニング式のイスで寝ていたホームレス男性。私(記者)と彼の会話は以下のとおりである。録音データをもとに忠実に再現してみた。

・私と男性の会話

――お休み中すみません! ちょっとお伺いしたいことがあるのですが……。

男「はい?」

――今、渋谷のアップルストアっていうお店の前で、数日前から私の友人が行列で徹夜で並んでいるんですね……。

男「ふんふん」

――で、今朝方、朝起きたら、イスとカバンとクツなどが無くなっていたということで……とても困っているということで……いま私、このあたりをウロウロしながら探していたんですけども……。

男「はぁはぁ、うんうん」

――あそこにあるバッテリーとですね、そのカバンと、その中にチラリと見えるブーツと……。

男「うんうん」

――あの、このイスがですね……友人が持っているものと同じモノなんですね……。

男「ははーん」

――あの、友人、寝ていたんですね。で、横に置いていたみたいなので、捨ててあるものだと思われて誰かに拾われたのかなと……。

男「ははん、ははん」

――で、もしもですね、もし、もし、もし、もし友人が持っていたものがこれらだったとしたら、持って帰りたいのですが……。

(しばし沈黙)

tashirobatteri500

男「それのこと言ってんだべ?(と、バッテリーを指差す)」

――はい! そのバッテリーと……。

男「あのイスか。(少しボロいイスを指差す)」

――あ、いや、あれではなくて、いま座っていらっしゃるそのイス……。

男「(驚きながら)ああ、こっちかァ!」

――はい……。

男「これがほしいんか」

――!? え、あ、あとクツと、カバンと……。

(しばし沈黙)

tashirokabanisu500

男「……だいたい話は見えたよ」

――!?

男「……ツレじゃないかな」

――!? えっ……?

男「ツレのじゃないかな」

――ツ、ツレの……!?

男「わかんない? わかんないっか」

――……!?

男「(ここに)持ってきたやつ、知ってる」

――……!!

(しばし沈黙)

男「……あの、おまえ……いや、知らないからさ、あなたのこと……」

――はい

男「出すのは簡単だけどさ。めちゃ簡単だよ、出すのは。これを。今その話を信用しなきゃいけないからさ」

――あっ、誰かがここに持ってきたという話なんですね?

男「うん」

――けっ、今朝、今朝に……。

男「うん、それは事実だ。俺も認めるよ」

――はい。

男「うん。なんかの縁だべ。持ってけっ……持ってってくれよ」

――あっ、いいんですか!

男「うん、いいよ。(持ってきたやつに)あとで言っとくって。怒っとかなきゃいけねえべな、うん」

――はい! はい!

男「うん、わかったよ。これ、そうだろ?(と、カバンを持ちながら)」

――はい!

男「おー、そうだろ?」

――はい! あとクツ……。

男「これだべ! そうだべ?」

――はい! それです!

男「これ、そうなんだ。おかしいなって思ったんだよ。なんでこんなもん置いてくんだと思ったんだよ。ああ、そうか。そういうことだったのか。これだべ?」

(田代さんのカバンの中には、すでに他のモノがたくさん入っていたが、それらをジャラーっと地面にぶちまけながら)

男「他に何が入ってた?」

――あの、ブルーシートとか……。

男「これだべ?」

――そうだと思います!

男「(カバンに詰めて)あー、おめぇ、よかったなァ!」

――はい! すみませんなんか……。

男「おめェ、マジ、よかったよ!」

――はい! きっと、どこかに落ちているかと……。

男「落ちてたみたいだよ! ああ、そう! おまえ、それ、すっげーラッキーだよ!」

――はい! ほんとすみません!

男「ラッキーだよ! ああ、そう、ラッキーだよ!」

――よかったです……。

男「よかったよ! よかったよ! なんか(ここに持ってきたツレの行動が)おかしいなって思ったんだよ! そうか、そうか!」

――よかったです……。

男「ごめんな。怒っとくから。ちゃんと。おう。……ビックリしたべや?」

――はい! 友人が一番ビックリしたみたいで……。

男「だよなぁ! なんかおかしいと思ったんだよ」

――私も、なんかいきなり話しかけたりしてスミマセン!

男「いやいや。おかしいとおもったんだよ! なんか、おっかしーなぁと思ったんだよ」

――はい。

男「おっかしーなぁって思ったんだよ」

――すみません、ほんとに……。

男「いえいえ」

――すみません……。

男「俺らホームレスだよ。そんなもんだよ」

――すみませんすみません!

男「うん。(私の話を)信用はしてみるよ。たしかに今朝、(ツレの行動が)ちょっとおかしーなぁって思ったんだよ」

――はい!

男「あとで怒っておくから。ちゃんと。あと、(田代さんに)謝っておいて。ほんとに。申し訳ないなって」

――はい!

男「俺の朝の記憶があるから、うん。いいんじゃねえかって。うん。うん、まあいいや。がんばって」

――はい!

男「あなたの話、信じてみるよ。ウン」

――はい。では、どうも! ありがとうございました。さようなら!

男「うん、そいつ(田代さん)に謝っておいて。ほんとに」

――はい! 伝えておきます! さようなら!

……というような感じである。つまり、「ツレ」という何者かが就寝中の田代さんの横に置いてあった荷物一式を今朝方に持ち去り、代々木公園の男性のもとへ朝に置いてきた。男性は「なんかおかしいな」と思いつつ、そのままバッテリーでノートPCを充電しつつ、リクライニング式のイスで寝てしまった……ということだったらしいのである。

その後、私はすぐに田代さんに「見つかったよ!」とメールで一報を送り、そのまま彼の元へ荷物一式を届けた。田代さんは「えっ? えっ! ど、どこにあったんですかっ!? しかも見つかるの早すぎますよ!」とビックリしまくりながらも、愛用のブーツやカバンなどが戻ってきたことを喜んでいた。

ここは世界的にも安全とされる日本の東京である。しかしながら、たとえ日本でも、そこに何かが「置いてあったら」何者かに持ち去られる危険性があることは忘れてはならない。所持品の自己管理には十分に気をつけたいものだ。

(写真、文=GO羽鳥

▲田代くんに荷物を届けるGO記者。 ▲田代さんに荷物を届けるGO記者。(この写真は田代さんが撮影)

日本, 東京都渋谷区神南2丁目1 都道413号線